FOXチャンネルで『POSE』(全8話)を見ました。
ライアン・マーフィー製作総指揮のドラマ作品で、舞台は1980年代後半のNYです。
まだゲイに対する偏見・差別も多い中で、LGBTQの男の子たちは親元を追い出されたり、自分で家を飛び出して行き場を失っていました。
その男の子たちの面倒を見たのが「マザー」と呼ばれる人たちで、「ハウス」と呼ばれる場所(マザーが家賃を払っているアパートなど)で一緒に暮らし、そして毎週ダンスホールで行われる「ボール」(お題に沿ったファッションやダンスを競うコンテスト)にチームとして参加していました。
デイモン(ライアン・ジャマール・スウェイン)は17歳の男の子で、自宅に隠し持っていた雑誌を見た両親が息子がゲイであることを知り、勘当されて家を追い出され、ダンサーを夢見るデイモンは行く当てもなくNYの街をさ迷っていました。
そんなときに「マザー」であるブランカ(MJ・ロドリゲス)と出会い、彼女のチーム「ハウス・オブ・エヴァンジェリスタ」に入ります。
そのチームには娼婦として働くエンジェル(インディア・ムーア)やブランカに隠れて麻薬を売ってお金を稼いでいたリル・パピが一緒に暮らしています。(後にデイモンの彼リッキーも家族の一員になります)
エンジェルは仕事で出会ったトランプタワーで働くエリートサラリーマンのスタン(エヴァン・ピーターズ)からアプローチされます。
始めのうちはお金のために付き合っていたエンジェルも次第にスタンに惹かれていきます。でも彼には奥さんも子供もいました…。
「ボール」では毎週激しいバトルが繰り広げられ、司会のプレイ・テル(ビリー・ポーター)が会場を盛り上げます。(プレイはブランカたちのドレスを作ってくれていました)
その中で「ハウス・オブ・アバンダンス」のマザーでボール界で女王的な存在のエレクトラ(ドミニク・ジャクソン)とブランカは因縁があります。(昔ブランカを救ってくれてチームに入れてくれたのが「マザー」のエレクトラでした。でも、彼女の自分本位な考えに嫌気が刺して独立したのです)
そのエレクトラにはものすごくお金持ちの彼氏(クリストファー・メローニ)がいて、彼のお金でリッチな生活をしていました。
でも、完璧な女になりたいエレクトラは自分の男性器を切除することを望んでいましたが、彼氏に止められていました。(彼氏はそこがお気に入りらしいのです…)
ある日デイモンのダンスの才能を知ったブランカはダンススクールの学部長のヘレナ(シャーレイン・ウッダード)に交渉し、オーディションを受けさせ、奨学生としてそのスクールに入学できるように尽力しました。
学校でのダンスのレッスンと「ボール」と日々忙しいデイモンでしたが、ある日学校を遅刻してしまって、ブランカはそのことで呼び出され、ヘレナに釘を刺されます。(全力で取り組まなければ、奨学金をとりやめる、と。)
彼氏に内緒で性別適合手術を受けることにしたエレクトラはハウスの子供たちを巻き込んで、お金を用立てようとします。
エレクトラのハウスの子供であるキャンディは自分の体形を、「ボール」でボディを競うカテゴリーに出場したときにバカにされたことで、エンジェルを誘って怪しげなところに行って、シリコン注射を受けるのです…。(グラマラスな体型にするために)
一方、デイモンが高熱を出して寝込むとブランカはもしかしたら「HIV陽性」では?と疑い、プレイに相談します。
するとプレイは子供たちを引き連れて病院に検査に行くのです。
不安を隠せない子供たち、でも子供たちは皆陰性でホッとしたものの、プレイは陽性反応が出てしまいます。(その時には、誰にもそのことが言えずに子供たちには「陰性だった」と嘘をつきました)
ブランカの実母が亡くなり、家族から良く思われていないから…としり込みをするブランカをプレイたちが励まし、皆でお葬式に向かいます。
ブランカの恰好とみんなが参列したことで兄と姉は冷たい反応をして、ブランカは悲しい思いをしますが、後で姉が一人でブランカの元に訪ねて優しい一言をかけます。
スタンが借りたアパートで恋人同士として幸せな日々を過ごすエンジェルでしたが、最後には家族の元に帰るスタンに寂しさを感じていました。
その頃スタンの上司のマット(ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク)のお節介(マットはあわよくばパティと…というのが見え見えの最低の男)でスタンの妻のパティ(ケイト・マーラ)は自分の夫の浮気を知り、エンジェルの元へ確かめに行きます。
プレイ・テルの恋人はエイズを発症していて、病院で一人病気と闘っていました。
そんな彼を足繁く病院に通って励ましていたプレイでしたが、状態がかなり悪化した彼を見たプレイは悲しみと不安で自暴自棄になります。
そんなプレイを励まそうとブランカは食事に誘いますが、かえってプレイの逆鱗に触れてしまいます。
プレイのことで落ち込むブランカは男性からの久しぶりのお誘いに心ときめいていたのですが、その男性は色んなハウスの人たちと寝たプレイボーイと知り、一気に気持ちが冷めます。
エレクトラは性別適合手術後に初めて自分の彼氏のマンションへ行き、ベッドで「完璧な女になった」と報告しますが、彼は手術のことを知ると一気に冷めて服を着て、出て行ってしまいます。
必死に自分の気持ちを話して理解してもらおうとしますが、彼氏にとってエレクトラは性的興奮を与えてくれる女性という存在でしかなかったことを知ります。(彼氏の高級マンションに後日行くと、ドアマンから追い出されてしまいました…)
家賃を払えず、子供たちの生活を支えきれなくなったエレクトラは、子供たちに見放されてしまい、一人ぼっちで行くところもない彼女は昔いた覗き部屋で生計を立てる羽目に…。
そんな姿を知ったブランカはかつての自分のマザーだったエレクトラに救いの手を差し伸べます…。
プレイは自分の彼や、他の患者たちを励まそうと病院内でコンサートを開きます。
その日は予定があって一度はプレイの誘いを断るブランカでしたが、後で病院に駆けつけ、プレイと共に歌声を披露します。(とても素晴らしい、迫力ある歌声でした)
そしてその後、自宅で寝ているときに病院から連絡があり、彼が亡くなったことを知るプレイ…。
ブランカたちがプレイを支えます。
リッキーとデイモンは二人で受けたダンスのオーディションに合格し、一緒にツアーに参加する、とブランカたちに告げますが、デイモンは次の学年での奨学金を認められたことから、ブランカはダンススクールに専念するようにデイモンを説得します。
リル・パピは麻薬の売人をしていることをブランカにバレてしまい、家を追い出されて行く宛がないところをエレクトラの子供だったルルとキャンディが新しく立ち上げたハウスに入ることに…。
スタンと別れたエンジェルは自暴自棄になっていましたが、ブランカに「このハウスを任せたい」と言われ、ブランカ自身がHIV陽性だったことを知らされます。(そのことは、エンジェルとプレイ以外は知りません)
ボールでは「最優秀マザー賞」の発表があって、審査員の全員一致でブランカが受賞します。
子どもたちの将来を考え、尽力し、周りの人たちに思いやりを示した姿が評価されました。
スタンと暮らしていたエンジェルも戻ってきて、かつてのマザーだったエレクトラを迎え入れ、自分を裏切ったリル・パピを許してまた子供にしたブランカ。
キャンディたちと一緒にいた子供たちもブランカのところに来て、「ハウス・オブ・エヴァンジェリスタ」は賑やかな家族になっていくのでした…。
ライアン・マーフィーの作品は、過激な内容のものも多いですが、どのドラマの中にも社会の不寛容や無理解、自分の価値観に固執する人たちの差別意識など、あまり触れてほしくない人間の持つ本質が描かれていると思います。
そして、色々な立場や境遇にありながら、パートナーとして、家族として愛情を注ぐ人たちも描いています。
今回の作品はトランスアクターの方々が役を演じていたのも意義深いと思います。
S2が楽しみです。
「ハウス・オブ・エヴァンジェリスタ」の“マザー”、ブランカ。(左隣がデイモン)
「ハウス・オブ・アバンダンス」の“マザー”、エレクトラ。
「ボール」の司会・進行をするプレイ。
久しぶりの男性からのお誘いに喜んでいたブランカでしたが…。
スタンの妻パティと対面するエンジェル。