こんにちは。図書室の先生です。


今回は、多読賞について書いてみようと思います。


私の勤務している中学校での出来事です。


数年前より図書システムが導入され、図書室の利用状況を数字て示しやすくなりました。


そこで、


個人貸出冊数を集計して、学期ごとの多読賞を10位まで掲示し、多読賞として、ちょっといい栞をプレゼントする、ということを始めてみました。


多読賞の表彰は、小学校では図書システムが導入される前から個人が記入する「読書の記録」をベースに行われていました。


図書システムが導入された今でも、担任の先生が、図書室で貸出した本以外にもお休みの日におうちにある本や、公共図書館で借りて読んだ本など記録してある「読書の記録」を手作業で集計して学期ごとに表彰しています。


中学校では今まで「読書の記録」のようなものがなかったため、図書システムを使って多読賞を集計してみたらどうかと思ったのです。


一学期は、生徒に多読賞の予告をせず一学期の貸出が終わった日に貸出の集計を掲示し、全校ベスト10にランクインした生徒に、ちょっといい栞をプレゼントしました。


二学期は、一学期の多読賞を受けてか、図書室に足を運ぶ人が増えました。


一学期の多読賞になった生徒の中に、絵本のような薄い本を貸出手続し、「図書室にいるうちに読み終わりました」と言って返却し、他の絵本を借り、そして返し、のように、1日に3冊ほどの「カウント稼ぎ」をする生徒が現れましたが、その学校の図書室は、生徒の教室から離れたところにあるので、「足を運んでくれるだけでも進歩かな」ということを図書室担当の先生と話し合って、片目を瞑ることにしました。


三学期。


一学期、二学期とランクインしなかった生徒が、突然、ベスト10にランクインしてきました。


一学期、二学期に多読賞にランクインした生徒というのは、普段から図書室でよく顔を見かける生徒がほとんどだったのですが、私は三学期にランクインしてきた生徒をあまり見かけたことがなく、時々見かけても、同じ本を手にしていることが多かったので、違和感を覚えました。


そこで図書担当の先生と相談して、図書システムを使って多読賞にランクインしてきた生徒全員の読書記録を見てみることにしました。


公共図書館と違って、学校図書館のシステムには読書指導のために「読書記録」を照会できる項目があるのです。


すると⋯


該当の生徒は、同じ本を1日ごとに返却し、貸出し、ということをしていたことがわかりました。


私の巡回日にも返却しにきて、同じ本を借りなおしていたことが何度もあり、


「好きな本があるのは良いけれど、他の本も読んでみたら?」


と声を掛けた記憶があります。


いくら図書室に足を運んでいるからといって、これは目に余る⋯


図書担当の先生もこの記録を見て、


「これは無しだなぁ⋯」


という感想で、


「三学期の多読賞は無しにして、来年度、もう少しやり方を考えましょう」


ということになりました。


この話には後日譚があります。


一学期、二学期と多読賞にランクインしていた生徒は、三学期の多読賞を取りやめても、特になにも言って来なかったのですが、


この「突然三学期にランクインしてきた生徒」は、図書担当の先生のところに、



「自分は多読賞のはずなので、栞をください。」


と言いに来たそうです。


おそらくこの生徒は、本の内容や感想を聞かれると困るので、自分が既に読んだことのある本を繰り返し貸出、返却して回数を稼いで、栞を貰う作戦を決行したのだと思いますが、


それにしてもたった一冊。


その「栞」への執着心に、薄ら寒いものを感じました。



こういうことがあるから小学校の先生方は、図書システム導入後も手書きで「読書の記録」を書かせて、手作業で集計することをやめないのかもしれません。


多読賞も、そのご褒美の栞も、


たくさん本を読んでほしくて行っているものなのですが、


本を読むことなく、浅知恵で誤魔化して栞を貰おうとする奴が出てくるとは。


来年度は栞と併せて、図書システムから出せる「読書記録」もプレゼントしようか、などと考え中です。