こんばんは。図書室の先生です。


夏休みになりました。


図書担当の先生が変わると、青少年読書感想文全国コンクールの課題図書と、地方新聞社主催の読書感想文コンクールの課題図書を何冊購入したら良いかの方針が変わることがあります。


同じ本を数冊購入し、図書室に置くことを「複本(ふくほん)」と言います。


私の二人目の元同僚は、複本で一杯だった図書室を受け持つことになって、


「複本なんてお金がもったいないだけです。そもそも課題図書なんて、おもしろくもなんともない本をたくさん買うなんて!」


と、大変ご立腹でした。


前の勤務先では1校専任で、10年近く勤務されていたベテランの学校司書でした。


私が好きでそうしていたわけではなく、私が採用された時にはすでに複本だらで、整備の手始めに複数校を巡回しながら少しずつ除籍を進めていた頃のことです。


「おもしろくもなんともない本」というところに、少々の引っかかりを感じましたが、


その一方で、新しく購入する課題図書は、1校に一冊になるように複数の勤務校に働きかけ、複本を減らすように努めました。


結局、この二人目の同僚も1年で退職してしまったのですが、


そうすると、


「やはり複本がないと、読書感想文の指導がしづらいから元に戻してほしい」


「課題図書は各教室に一冊ずつ置いて読ませたい」



という要望がふたたびでてきました。


元同僚が話していたとおり、複本を減らして種類を増やすのが理想の学校図書館の姿なのかもしれませんがその一方で、


「今・ここ」の利用者である先生方の使い勝手を悪くしてしまっているのだとしたら、それもまた違うような気がしました。


そこで、それまで一学級に同じ本を2冊設置していた学校は一冊にしてもらって、


可能であれば学年で一冊まで減らし、色々な本を買えるよう提案したところ、概ね先生方に納得していただくことができました。


今でも、元同僚から言われた「複本なんでお金がもったいないだけです」という言葉はずっと気になっているのですが、


最近、「複本も悪いことばかりではないかもしれないな」と感じた出来事がありました。


私は巡回勤務のため、毎日同じ学校にいるわけではありません。


勤務先の自治体では、司書教諭が図書室の時間割を作ってくれている学校でも、割振どおりに図書室に来る学級は稀です。


こうした状況の中、本の紹介や読み聞かせなどを対面で行う機会が少なく、図書室に特集コーナーを作るのが精一杯。


割振の時間どおりに来室するクラスも最後の10分くらいで来室して慌ただしく貸出していくことが多いため、同じシリーズなど自分の知っている本を繰り返し借りる子どもが多いことが悩みの種です。


そんなある日。


低学年の、クラス単位で貸出に来た子どもたちをみていたら、


仲良しのお友達どうしで同じ本を借りていく姿を見かけました。


自分が借りる本を決められない子、というのがどこのクラスにもいて、



本が好きなお友達と仲が良かったりすると、お友達と同じ本を借りたりしているようです。



どの本を借りたら良いのか決めかねている子どもは、


「◯◯ちゃんと一緒の本」

「◯◯ちゃんが面白いと教えてくれた本」


ならば、「読んでみようかな」という気持ちになるのかもしれない。


たとえ「おもしろくもなんともない本」であったとしても、です。


複本は、あまりにも多いと置くスペースも予算も限られているので困ってしまいますが、


2冊程度の複本ならば、時には良い効果もあるものだなぁ、と感じました。


確かに私のやり方は、学校図書館のあるべき姿からは程遠いのかもしれません。


しかし、複数校勤務と1校専任での勤務では、どうしてもできることに差ができてしまいます。


そこを踏まえながら理想に近づけるためには時間がかかりますが、それを無駄な時間にしないよう、細やかな気づきを大切にして、今・ここでできる最善を探して試行錯誤を繰り返しています。