マルクスの動機
これが分からないと、マルクスの思いが理解しづらいからです。
実は、共産主義のアイデアはマルクスが初めて思いついたものではありません。
古くは古代ギリシャの哲学者であるプラトン (BC四二七ーBC四七)の著作、「国家」の中にその原型というべきものが登場します。
また、マルクスが生まれた当時のヨーロッパでは、多くの人が共産主義について議論していました。
それでマルクスが考えた共産主義のこと他の共産主義と区別して、特に「マルクス主義」と呼んだりします。
共産主義の「共」は「共有」の「共」です。「産」は「生産手段」の「産」です。
から共産主義とは何かを一言で説明すると、「生産手段を共有する社会」 となります。
ちなみに生産手段とは、経済学上の言葉で、生産に必要なすべてのものを指します。
例えば、会社や工場、機械や道具、あるいは原材料などです。
資本主義社会では、資本家がモノを売って利益を得ます。
モノが売れなければ損をしま
す。 儲かるかどうかは、その資本家次第です。
このように、資本主義社会では手元にあるお金 (=資本)をどう使うかはその人の自由です。
派手に使ってもよいし、貯金をしてもよい。
資本金を元手に、さらに借金をして大きな事業を始めてもよい。
この制度のことを私有財産制と言います。
そして資本主義社会では、当然に貧富の差が現れます。
資本がある人は、さらにそれを
増やすチャンスがありますが、資本がない人が増やすのは容易ではありません。
最近では、貧困家庭の子供がさらに貧困になりやすいという「貧困の連鎖」が問題になっています。
資本主義社会では、貧富の差は必然的に生じてしまうものです。
特にマルクスの時代のヨーロッパは貧富の差がかなり激しいものでした。
当時は社会全体が、農業から工業へと移り変わっていった時代です。
田舎の農民が都市へやってきて、工場の労働者として働きました。
その労働環境は極めて劣悪でした。
暗く、汚く、危険な工場で、
女性も子供も長時間働きました。
そしてわずかな賃金しか受け取ることができませんでした。
現在の日本では、労働者の立場がある程度保護されていまが、当時はそんな仕組みはなかったのです。
むしろ当時の権力者たちは、こぞって大金持ちと手を組みました。
ですから労働者たちの境遇は、今からは想像できないほど悲惨なものでした。
そんな中で注目されるようになったのが共産主義です。