【自作小説】優奈ちゃん(3)
リビングに入ると、優奈ちゃんがつかまり立ちをして出迎えてくれた。既に20キロを越える優奈ちゃんは、比例して身長も他の1歳児と比較するまでもないほどに高い。先日、寝かせたままメジャーで計ったら1メートルを少し越えていた。
名前を呼ぶと、ちゃんと反応する。「あうう」としか言わないが喜怒哀楽も感じることができる。熊のぬいぐるみを目の前にかざすと、目に見えて笑顔になった。
優奈はその場で寝転がると、俺の方に顔を向け、忙しく両手を差し出しながら、再び「あう、あう」と先ほどよりもわずかに強い口調でうなった。ぬいぐるみをくれ、とでも主張しているのかも知れない。俺はそっとぬいぐるみを優奈ちゃんに手渡した。優奈ちゃんは満面の笑みで「きゃっきゃ」と叫んだ。
遊び疲れたのか待ちくたびれたのか、俺が麦茶で渇いたのどを潤し、ベランダでタバコを楽しんでから戻ると、ぬいぐるみを手に抱いたまま優奈は寝息を立てていた。あまりにしっかりと抱きしめているように見えたのがおかしくて、思わず俺は笑ってしまった。誰も取ったりなんかしないのに。
リビングを暗くして、俺は妻を誘って台所に行った。流しの下にしまっておいたスナック菓子をつまみに、缶ビールで乾杯した。妻はめっきり優奈の成長速度に慣れてきているようだった。「よその子より少し早く成長しているだけだもんね」などと言ってにこりとすることが増えた。
冷静に考えると、優奈ちゃんの成長速度はまったく衰えを見せず、今なお猛烈な速度と言えたが、幸せそうな妻に水をさすのも気が引けたし、何より俺もめいっぱい今の生活に満足していたからあえて口にすることはしなかった
光陰矢の如しとはよく言ったものだ。月日はあっという間に流れ、優奈ちゃんは小学校に入学した。妻はパートを始め、俺は係長から課長代理に昇格するなど生活もいろいろと変化した。
しかし、やはり優奈ちゃんの成長の勢いのすさまじさを語らないわけにはいかない。入学式での優奈ちゃんの存在感は、まさに圧巻だった。学校の取り決めた式次第のあらゆる場面で、優奈ちゃんは完全に浮いていた。
身長差がありすぎるために、後方にいる俺たち夫婦からは、常に優奈ちゃんしか視界に入らず、結果として優奈ちゃんがひとりで立ったり座ったりしているようにしか見えないのだ。さすがに他の親御さんは自分の子にくぎ付けだろうと思い、それとなく観察したところ、何とかなりの父兄の顔が優奈ちゃんのいる方向を向いているように見受けられ、さすがに少しバツの悪い気持ちになった。
ともあれ、式の最後を飾った生徒と父兄の記念撮影のことは一生忘れられないだろう。撮影時は前列が生徒で着座、後列が父兄で直立というふうに並ぶのだが、優奈ちゃんの後にいた母親が背の小さい人で、あごのあたりが座ったままの優奈の頭の陰に隠れてしまっていたのだ。
それをさし置いても桁違いの大きさを誇る優奈ちゃんの扱いに、カメラマン役の教師は、どう優奈ちゃんを配置したら構図がまとまるかにさぞかし腐心したに違いない。およそ5分間、優奈ちゃんは数名の教師によって、右へ左へと移動させられた。
しかし、生徒というくくりで捉える限り、どこに置いても優奈ちゃんは抜群に目立つのだった。最終的に優奈ちゃんは、俺たち夫婦の隣に並ばされた。複雑な心境を抱いたが、先生たちはもちろん、まわりの父兄たちが心なしか安堵の表情を浮かべたように見えたので、ほっとした気持ちのほうが大きかった。
名前を呼ぶと、ちゃんと反応する。「あうう」としか言わないが喜怒哀楽も感じることができる。熊のぬいぐるみを目の前にかざすと、目に見えて笑顔になった。
優奈はその場で寝転がると、俺の方に顔を向け、忙しく両手を差し出しながら、再び「あう、あう」と先ほどよりもわずかに強い口調でうなった。ぬいぐるみをくれ、とでも主張しているのかも知れない。俺はそっとぬいぐるみを優奈ちゃんに手渡した。優奈ちゃんは満面の笑みで「きゃっきゃ」と叫んだ。
遊び疲れたのか待ちくたびれたのか、俺が麦茶で渇いたのどを潤し、ベランダでタバコを楽しんでから戻ると、ぬいぐるみを手に抱いたまま優奈は寝息を立てていた。あまりにしっかりと抱きしめているように見えたのがおかしくて、思わず俺は笑ってしまった。誰も取ったりなんかしないのに。
リビングを暗くして、俺は妻を誘って台所に行った。流しの下にしまっておいたスナック菓子をつまみに、缶ビールで乾杯した。妻はめっきり優奈の成長速度に慣れてきているようだった。「よその子より少し早く成長しているだけだもんね」などと言ってにこりとすることが増えた。
冷静に考えると、優奈ちゃんの成長速度はまったく衰えを見せず、今なお猛烈な速度と言えたが、幸せそうな妻に水をさすのも気が引けたし、何より俺もめいっぱい今の生活に満足していたからあえて口にすることはしなかった
光陰矢の如しとはよく言ったものだ。月日はあっという間に流れ、優奈ちゃんは小学校に入学した。妻はパートを始め、俺は係長から課長代理に昇格するなど生活もいろいろと変化した。
しかし、やはり優奈ちゃんの成長の勢いのすさまじさを語らないわけにはいかない。入学式での優奈ちゃんの存在感は、まさに圧巻だった。学校の取り決めた式次第のあらゆる場面で、優奈ちゃんは完全に浮いていた。
身長差がありすぎるために、後方にいる俺たち夫婦からは、常に優奈ちゃんしか視界に入らず、結果として優奈ちゃんがひとりで立ったり座ったりしているようにしか見えないのだ。さすがに他の親御さんは自分の子にくぎ付けだろうと思い、それとなく観察したところ、何とかなりの父兄の顔が優奈ちゃんのいる方向を向いているように見受けられ、さすがに少しバツの悪い気持ちになった。
ともあれ、式の最後を飾った生徒と父兄の記念撮影のことは一生忘れられないだろう。撮影時は前列が生徒で着座、後列が父兄で直立というふうに並ぶのだが、優奈ちゃんの後にいた母親が背の小さい人で、あごのあたりが座ったままの優奈の頭の陰に隠れてしまっていたのだ。
それをさし置いても桁違いの大きさを誇る優奈ちゃんの扱いに、カメラマン役の教師は、どう優奈ちゃんを配置したら構図がまとまるかにさぞかし腐心したに違いない。およそ5分間、優奈ちゃんは数名の教師によって、右へ左へと移動させられた。
しかし、生徒というくくりで捉える限り、どこに置いても優奈ちゃんは抜群に目立つのだった。最終的に優奈ちゃんは、俺たち夫婦の隣に並ばされた。複雑な心境を抱いたが、先生たちはもちろん、まわりの父兄たちが心なしか安堵の表情を浮かべたように見えたので、ほっとした気持ちのほうが大きかった。
【自作小説】優奈ちゃん(2)
「気にしないようにしよう」
これが俺の打ち立てた唯一の対策だった。冗談ではい。大まじめに俺はそう決めたのだ。
理由はふたつあった。ひとつは、優奈ちゃんの過度な成長について、遺伝的疾患、その他の原因が何も見つからなかったことだ。
当然俺たち夫婦も指をくわえて優奈ちゃんの過度な成長を黙殺していたわけではない。いくつもの病院に赴き、何度も診察を受け、何種類もの検査をした。その結果が異常なしと言われたのだから、もう異常はないのだろうと思うしかなかった。
ふたつは、過度な成長が、実はさほど困るようなことではないのではないか、と思えてきたことだ。まさか恐竜でもあるまいし、この先ずっと今の速度で成長し続けることはさすがにあるまい。
うちの優奈ちゃんは、きっと他の子より成長のタイミングが凝縮されているのだ、小さいころにぐっと成長し、小学生か中学生になるころにはぴたりと成長も止まるはずだ、と俺は考えた。
根拠はもちろん何もない。勘だ。いや、勘ですらなく、ただの淡い期待だということを、実は自分で気づいていた。しかし俺はその説にすがった。妻は俺の説に同意した。妻もすがりつきたかったに違いない。
数ヶ月が経った。この日、俺は会社を早上がりした。今日は記念すべき優奈ちゃんの1歳の誕生日だった。いつもは売上に追われて眉間にシワを刻んでばかりいる上司も、この時ばかりは眉を八の字にして気持ち良く送り出してくれたのだった。
帰宅時、俺は途中下車しておもちゃ屋に立ち寄った。プレゼントのぬいぐるみを買うためだ。まだつかまり立ちが出来るようになったばかりで、言葉などまるで解さないものの、優奈ちゃんがぬいぐるみに関心があるのは明白だった。そのため既にわが家には、両手で数えきれないほどのぬいぐるみがあった。店で一番大きな熊のぬいぐるみを買って、再び俺は家路についた。
自宅についた。解錠してドアノブを回したとき、中から大きな物音がした。優奈ちゃんが俺の帰宅を喜んでくれているのだ。耳が良い優奈ちゃんは、いつも俺の帰りを妻よりも早く察してくれた。
優奈ちゃんの気持ちに答えるべく、玄関で靴を脱ぎながら元気いっぱいに「ただいま」と俺は声を張り上げた。優奈ちゃんの「きゃっきゃ」という歓声が、玄関とリビングを隔てる扉越しに漏れ聞こえてきた。幸せを感じる瞬間だった。
これが俺の打ち立てた唯一の対策だった。冗談ではい。大まじめに俺はそう決めたのだ。
理由はふたつあった。ひとつは、優奈ちゃんの過度な成長について、遺伝的疾患、その他の原因が何も見つからなかったことだ。
当然俺たち夫婦も指をくわえて優奈ちゃんの過度な成長を黙殺していたわけではない。いくつもの病院に赴き、何度も診察を受け、何種類もの検査をした。その結果が異常なしと言われたのだから、もう異常はないのだろうと思うしかなかった。
ふたつは、過度な成長が、実はさほど困るようなことではないのではないか、と思えてきたことだ。まさか恐竜でもあるまいし、この先ずっと今の速度で成長し続けることはさすがにあるまい。
うちの優奈ちゃんは、きっと他の子より成長のタイミングが凝縮されているのだ、小さいころにぐっと成長し、小学生か中学生になるころにはぴたりと成長も止まるはずだ、と俺は考えた。
根拠はもちろん何もない。勘だ。いや、勘ですらなく、ただの淡い期待だということを、実は自分で気づいていた。しかし俺はその説にすがった。妻は俺の説に同意した。妻もすがりつきたかったに違いない。
数ヶ月が経った。この日、俺は会社を早上がりした。今日は記念すべき優奈ちゃんの1歳の誕生日だった。いつもは売上に追われて眉間にシワを刻んでばかりいる上司も、この時ばかりは眉を八の字にして気持ち良く送り出してくれたのだった。
帰宅時、俺は途中下車しておもちゃ屋に立ち寄った。プレゼントのぬいぐるみを買うためだ。まだつかまり立ちが出来るようになったばかりで、言葉などまるで解さないものの、優奈ちゃんがぬいぐるみに関心があるのは明白だった。そのため既にわが家には、両手で数えきれないほどのぬいぐるみがあった。店で一番大きな熊のぬいぐるみを買って、再び俺は家路についた。
自宅についた。解錠してドアノブを回したとき、中から大きな物音がした。優奈ちゃんが俺の帰宅を喜んでくれているのだ。耳が良い優奈ちゃんは、いつも俺の帰りを妻よりも早く察してくれた。
優奈ちゃんの気持ちに答えるべく、玄関で靴を脱ぎながら元気いっぱいに「ただいま」と俺は声を張り上げた。優奈ちゃんの「きゃっきゃ」という歓声が、玄関とリビングを隔てる扉越しに漏れ聞こえてきた。幸せを感じる瞬間だった。
IE8からIE9BETAへ、そしてIE8へリターン(笑)
ブログネタ:パソコンのブラウザ、何使ってる?
参加中私はInternet Explorer 派!
FIREFOXも使った時期がありますが、やはり基本的にはIEですね。
先々週くらいに、IE9のBETA版がインストール開始になったので、早いもの好きの僕、早速試してみましたが、結局、BETA版の不具合に耐えられずにIE8に逆戻りです。
遅いし、ブログサイトへの対応が不完全で、投稿機能の一部が制限されてしまったりと、まあ散々な目に。。。
まあ、だからこそのBETA版なのでしょうが。
