- ふくわらい/朝日新聞出版
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≪e-honより≫
紀行作家の父から、マルキ・ド・サドをもじって名づけられた鳴木戸定。書籍編集者の定は、身なりに無関心、感情を表さずに人付き合いも機械的にこなす。一方で、彼女は、旅先でワニに食べられて死んだ父親の死肉を食べた女として、世間に名を知られていた。ふくわらいが唯一の趣味である彼女は、猪木になりきれなかったロートルプロレスラーのエッセイを担当することになってから、人との距離を少しずつ縮めていく。「作品を書かせたかったら、今すぐ雨を降らせろ!(またはやませろ!)」という作家の無茶な要望に応え、街でナンパされた盲目のイタリア人(と日本人のハーフ)の男性に処女を捧げる定の、何物にも汚されない真っ直ぐな姿を描くエンタメ小説の傑作。
特異な育ち方をしたがゆえであろうか、「普通こう来たらこう答えるだろ」的な感覚を持たない定が、ある意味うらやましくなる瞬間がある。カッコよくすら思えてくる。
途中まで定には体温すらないのではないだろうかと思ってしまうのだが、年下の美人同僚と親しくなり、彼女に「友達」と言われたあたりから定の人間的な暖かい感情が表現されてくる。
この美人同僚、自分の容姿を美人と認識しているが、顔で判断されるのが嫌だというなかなかに骨のある女。
こういう「女」に媚びない人、好きです。
その他、魅力的な登場人物といえば、定を猛烈に口説き落とそうとする目の不自由なイタリア男。
この男は目が不自由ゆえに定を外見でなく、手に触れた感触、会話した感触、とにかく自分が感じた定の内面的なものを100%信じきってアピールしてくる。
こういう男もなかなかいないが、ステキだと思う。なんか人間として信用できる気がする。
ラストもこれまた特異ではあるが、すがすがしい終わり方でした。
ただ、好き嫌いが分かれる作品だと思われるので本屋大賞はとれないと思うよ。
評価:☆☆☆☆





