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高校生時代。夏。プール。
水泳部に所属していた私。
泊りこみの合宿中、毎日練習を見に来てくれるOBが2人。現役大学生。
OBのアドバイスは的を得ているし、説得力もある。
確かにこの2人、現役当時速かった。競泳の世界では速い事がすべて。
それ以外の評価の方法は無い。彼らいまでも十分に速い。
フォームや練習方法、多岐にわたるアドバイスはありがたい。
OBにしてみれば一度通過した道、次は右か左かなんてアドバイスするのは容易な事。
それに現役を離れて、初めてはっきりと見えてくる事もあるのだろう。
しかし2人、毎日来る。昨日も来た。一昨日も来た。今日も明日もきっと来る。
なぜ毎日来るのだろう。私たちのやり方があまりにウマくないからなのか?
先輩が居ることによる緊張感。合宿の疲れと重なって重荷になってくる。
部長は悩んだ。どうしたら来ないでくれるのか? でも当然、結論は出ない。
キャプテンはなにも感じない。もともとそういう人だから。
プールサイドを取り囲む壁の向こうから、オートバイの音が聞こえてきた。
そう、今日も彼らがやってきた・・・
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今になって思へば、彼らは大学時代の長い夏休みをもてあましていたんだろううなと想像できます。
ただの暇つぶし。でもそうならなおの事、自分たちで頑張る現役を見て歯がゆいのは解る、
でも口を出しすぎるのはいかがなものかと。
当然この一件に苦労した私たちの学年は、引退した後にプールを訪れることは一切ありませんでした。
しかし、私たちの下の学年は先輩のアドバイスを受けられずに良い成績を残すことができず、
引退後、後輩の指導に毎日プールを訪れるようになったとかならなかったとか。(笑)
(いや現実には彼ら後輩は私たちよりはるかに優れた成績を残していましたよ。)