相談している中で、よく自分だけこんな不幸な目に遭っているとか、世の中は不公平で自分だけが幸福から見放されてるとか、等々話される方は多い。客観的に見れば、それ程でもなくても、当人としては不運のなかにあっては、そういう考えに陥ってしまうのでしょう。そんなとき、いつも下記のような話を思い出します。

 

 或る有名な方が講演会で、「皆さん目をつぶって下さい」と呼びかけました。そして全員、目をつぶると「皆さんいいですか。皆さんの中で、私だけどうしてこんなに不幸で苦労するんだろう。と思っている人だけそのまま、静かに手を挙げて下さい」と云いました。

 

 しばらく間を置いたうえで、講演者さんは、「皆さんそのまま聞いて下さい。人間は長い人生いろいろあります。辛く苦しいことも多くあります。また楽しいこともあります。しかし私達は、ほとんどの人が、なぜ自分だけ、こんなに不幸で苦労するんだろうと思っているんですよ」と諭しました。

 

 そのうえで、「いいですか、そのまま目を開けて下さい」と促したところ、誰しも自分と数人くらいしか手を挙げていないだろうと思っていた風でしたが、目を開けて周囲を見回してみると、講演者さんの云ったとおり、ほぼ参加者全員が挙手していました。

 

 断言できるほどのエビデンスはないですが、不幸で苦労している、という感覚は意外と多くの人が共通して持っているのかも知れません。数息観など瞑想をして心を落ち着かせて、自身の状況を冷静にみてみることも重要ではないでしょうか。そんな余裕もない場合もあるでしょうが、敢えて一旦立ち止まってみるといいかも。再拝