地球近傍小惑星ベンヌが2182年9月24日に地球へ衝突すると騒がれています。地球近傍小惑星のベンヌやリュウグウやイトカワが何故地球に近付いて来たかは2005年に日本の「はやぶさ」がイトカワの微粒子を採取して調査した結果で分かっています。

地球近傍小惑星ベンヌやリュウグウやイトカワの母体は地球と同じ46億年前(ウラン鉛年代分析)に火星と木星の間にある小惑星帯で誕生しました。14~15億年前(リン酸塩鉱物からケイ酸塩鉱物への衝撃変性)にその母体に別の小惑星が衝突して分裂しました。40万年前にイトカワの頭部と腹部が合体して現在の軌道に移動しました。

ベンヌの大きさの小惑星が衝突しても恐竜の様に人類は滅亡しませんが、ベンヌの大きさの100倍の直径50kmの範囲は被害を受けます。(恐竜が全滅した小惑星の大きさは直径10km)

 

年代分析の方法は「ウラン-鉛年代分析」と呼ばれるもので、鉱物の中に含まれているウランが放射線を出して次第に鉛に変わっていく現象を利用して絶対年代を求める。この方法を使うと、鉱物が固体の結晶として誕生した年代だけでなく、その後に天体衝突などの激しい作用を受けて鉛の成分が揮発した場合、その年代も知ることができる。

イトカワの微粒子4粒の年代分析の結果、微粒子に含まれているリン酸塩鉱物(phosphate)が、イトカワの前身となった母天体の中で約46億年前に結晶となり、その後約15億年前に他の天体の衝突を受けてケイ酸塩鉱物(olivine、pyroxene、plagioclase)の様な別の組成に変化する「衝撃変成」を受けていたことが明らかになった。軌道がよくわかっている地球近傍小惑星の絶対年代を決めることができたのはこれが世界初だ。

SIMS分析した7つのイトカワ試料の酸素同位体比データはいずれも普通コンドライトの領域にプロットされました。すなわちイトカワ試料は小惑星物質であり、普通コンドライトと(イトカワを含む)S型小惑星は親子関係にあると言えます。以上のことは、先行研究と整合的です。一方、4種の鉱物間での同位体分別から推定される熱変成温度は、Ca輝石-斜長石間で約800℃、橄欖石-Mg-Fe輝石間でおおよそ1400℃となり、大きく異なります。1400℃は斜長石の融点を超えるため、現実的な数字ではありません。Ca輝石を含む4種の鉱物間での酸素同位体比は平衡状態でないと言えます。これは橄欖石中の酸素の拡散速度が遅いため、酸素同位体比が平衡に達する前に熱変成が終了したためと考えられます。つまり、これらの物質は800℃程度かそれ以上の温度にはなったが比較的短い期間であったことを物語っています。どの程度の時間であるかを明らかにすることは困難ですが、同じような結果が同様の隕石の分析結果から得られており、イトカワだけが経験した特殊な歴史ではなく、これらの隕石が普遍的に経験した可能性を示唆しています。

 

SIMS分析の原理

酸素やセシウムなどのイオン(一次イオン)を試料表面に照射すると試料表面近傍の原子は攪拌され、一部が真空中に飛び出してきます(スパッタリング)。

飛び出してきた粒子のうちイオン(二次イオン)を質量分析することで、試料中に含まれる成分の定性・定量を行います。