藤原定家の日記「明月記」に出て来る「蟹星雲」を紹介します。蟹星雲は牡牛座にある超新星爆発した残骸です。1054年に爆発したことが鎌倉時代の歌人が書いた日記に出て来ます。

蟹星雲は超新星爆発して原子核の陽子と電子が飛び散り、中性子だけが残った中性子星で、100GeV(ギガ電子ボルト)という非常に大きなエネルギーを持つガンマ線をパルス状に放出しています。

藤原定家は小倉百人一首を選んだ鎌倉時代の歌人で、56年間にわたる日記を明月記として書いています。1054年は200年近く前の事ですが、安部泰俊という陰陽師に書かせた様です。

後冷泉院・天喜三年四月中旬以後の丑の時、客星觜(し)・参(しん)の度に出づ。東方に見(あら)わる。天関星に孛(はい)す。大きさ歳星の如し。

後冷泉天皇(ごれいぜいてんのう)の西暦1054年5月20~29日以後の午前3時ごろ、新星がオリオン座λ(ラムダ)星・ζ(ゼータ)星と同じ赤経に出た。東の空に現れた。牡牛座のζ(ゼータ)星で輝いた。大きさは木星のようだった。

尚、午前3時に東の空に牡牛座が見えるのは6月30日以降なので、四月中旬ではなく五月中旬の間違いだと思われます。

 

又、明月記には西暦1006年に超新星爆発したSN1006も書いてあります。

「一條院 寛弘三年四月二日 癸酉 夜以降 騎官中 有大客星 如螢惑 光明動耀連夜正見南方 或云 騎陣將軍星變本體増光歟」とあります。「一条天皇の西暦1006年5月1日みずのととり(日の干支)、夜以降、騎官(0時頃に南の地平線に見える狼座付近)の方向に明るい新星が現れ、螢惑(火星)のようだった。ある人が言うには 狼座κ(カッパ)星が明るくなったのか。」という意味です。

 

太陽を始めとした恒星が輝いているエネルギー源は核融合です。水素原子と水素原子が核融合するとヘリウム原子になります。ヘリウム原子とヘリウム原子が核融合すると炭素原子や酸素原子になります。炭素原子や酸素原子が核融合するとネオン原子やマグネシウム原子になります。ネオン原子やマグネシウム原子が核融合すると鉄原子になります。

①太陽の0.5倍以下

ヘリウム燃焼が発生しないので、水素を燃やし尽くしたらヘリウム形白色矮星になります。

②太陽の0.5~8倍

ヘリウム燃焼が始まり、炭素、酸素まで進むがそれ以上の核融合が進まないので、赤色巨星を経て白色矮星になります。

③太陽の8~10倍

酸素から更に核融合が進み、ネオン、マグネシウムになり電子の縮退圧が重力と拮抗し、陽子が中性子に変わります。収縮が始まり、中性子の縮退圧が重力と拮抗すると、衝撃波が発生し、超新星爆発を起こします。中性子だけの核が残り、中性子星になります。

④太陽の10倍以上

核融合が鉄まで進み、鉄は原子核の結合エネルギーが最も高いのでそれ以上の核融合は進みません。核融合が止まると重力破壊が起きて超新星爆発を起こします。芯だけが残って中性子星になります。重力破壊で圧縮されると角運動量保存の法則で自転速度が高速になり、自転軸と磁極がずれていると電磁波がパルス状に放出されるパルサーになります。

⑤太陽の30倍以上

残った中性子星が高密度で質量が大きいと重力からの脱出速度が光の速度を超えてしまい、ブラックホールになります。