#52「LOVE ME,LOVE YOU 絶技繚乱」(本誌ネタばれあり) | 塗櫛のブログ

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そしてYJ連載中の「テラフォーマーズ」に夢中。
テラフォーマーズ感想についてはほぼ初見の勢いで書いてますので、
文章が荒ぶっています点をご了承の上お読みください。

W杯が終わってしまったけれど何故か決勝が終わった時間に窓の外からガラスをひっかく音がして、恐る恐る(色々な準備を万端にした後)確認したら羽を怪我して飛べないカラスがベランダでごそごそしていた時の衝撃。
なお恩返しの気配は微塵もございません。

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
※以下本誌ネタばれですのでご注意願います。
 
 
 
 
 
 
 
 
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意図して受け継いだわけではないだろう。
その特性を持つが故に彼の人生が平坦なものではなかったことを思えば、それは彼にとって幸いと言えるものではなかったのかもしれない。
『四匹の蟲の、驚異の力をその一身に…!』
ただ、この時までは。
誰かの人生を動かすことが出来る程の力を持っている事は、今この時に限ってはきっと幸いなのだろう。
『全員の、
愛が、勇気が、
つながっている』
2599年。
それはバグズ2号が火星に飛び立つ前。
2621年。
それは、アネックスが飛び立った後、在ったかもしれない未来。
燈がその胃の中に仕込んでいたのは一警護が開発した強化プラスチック製の銃。
誰かを傷付ける為のものではなく、アレクサンドルとも渡り合える知識を持ち、だからこそかつてバグズ2号の計画を裏切った本多博士による新たな技術。
日本が開発した天異変態という、今までとは全く異なる進化の可能性。
初めて出会った時、燈の激情を知っていた小吉はそれをあえて受けた。
だからこそ、燈は小吉にその人生を、存在を救われた。
例えその時点で小吉自身が諦めたまま生きていたとしても。
そんな小吉であっても、少なくとも燈の人生を、彼だけでなく多くの人たちの人生に関わり、そして引っ張ってきた。
彼にそんなつもりはなくとも、救われた人間が、その人生を取り戻すことが出来た人間が多くいたのだ。
ドナテロ・K・デイヴスも。
シルヴェスター・アシモフも。
張明明も。
アドルフ・ラインハルトも。
劉翊武も。
燈の後ろに見えるその姿は、思い出させるが為によく似た技をあえて使ったからこそ。
けれど、それを思い出させた以上後は燈自身が背負っている力で戦う事を決意する。
10秒間。
それは彼らの人生を賭けた10秒間。
燈自身が背負う草間紫暮、草間朝太郎という2人を経た膝丸神眼流の後継ぎとして。
『誠実さが招いた呪縛――
燈よ、拳で小吉を救え!』
そして、秋田奈々緒の子として。

・大蓑蛾、蜘蛛糸蚕蛾、蘭花蟷螂、大雀蜂
個人的に全て漢字で書かれている辺りがわざとやっている厨二病的な感じがして好きです。
昔書いたような気がするけれど、本来オオミノガの糸というのはそう長く出せるものではない。
それなのに燈の糸が無限とも言える程の長さを出せるのは、母親から受け継いだ蚕の特性を持っているからに他ならない。
そしてハナカマキリが真後ろにすら視界を確保しているとは知らなかった。
見た目は、というより第二幼齢ぐらいまでは白くて本当に美しい生物だけれど、成虫になると割とカマキリの中でも凶悪な顔つきになる。
というかカマキリ自体がわかりやすい肉食昆虫の顔をしている事も確かだけれど、ハナカマキリの場合幼齢が本当に白とピンクで花に似た可愛らしさというか美しさを持っている分ギャップが怖い。
『東洋の蜂殺し』という説明を付けた後に小吉のオオスズメバチを持ってくる辺りが。
まあ燈が手術で得たもの、そして母親2人から受け継いだもの、そして今回小吉から得たものという順番に過ぎないといえばそうなのだけれど。

・己の毒針で
毒針という限定が無ければ、人間を最も多く殺している昆虫は蚊という事になるらしい。
あくまで病気を媒介しているという点においてではあるけれど、深刻な問題ではある。

・見開き
読者をメンタル的に殺す気ですか。
というか電子版の更新と共に死屍累々の状態でしたが。
個人的に気になっているのが書かれている年で、バグズの方は2599年。
バグズが2600年に火星へと向かったことを考えると、これは彼らが行く前に写真を撮ったシチュエーションという背景があるのかなと。
ただそうなると、アネックスの2621年というのが。
アネックスが火星へ行ったのは2620年の3月であり、地球へ戻ってきたのが2620年の4月。
けれど書かれているのは2621年。
もし彼らが生きていたら、という背景の元描かれたものなのか、単なる誤字なのか。
前者であったら辛すぎる。
バグズのキャラの表情や仕草が今の橘先生の絵で見ることが出来るというのはご褒美というか、まさかこういう形で見ることが出来るとは思わなかったありがとうございます。
きっと彼らの物語がもう少し長ければもっと魅力的なキャラクターとして描かれたのだろうなと思う。
アネックスの方で筋肉自慢しているアシモフ親子とそれを冷ややかな目で見ているエレナさんとか、嫌がるアドルフさんを引き込むイザベラさんとかセンター取ろうとして張り合うアレックスとマルコスとそれを止めようとするシーラとか、一応最前線を陣取っていながら真顔で映っているミッシェルさんとか一番後ろでイカにも慶次くんらしい映り方をしている慶次くん(免許更新の時多分こんな感じで映ってるに違いない)とひょっこり横に入ってくるジャレッドさんとかも非常に個性が出ていて魅力的なキャラが本当に沢山いるし、居たのだなと。
過去形にせざるを得ないのが寂しいけれど。
個人的には劉さんが紅ちゃんを抱っこしている姿が反則的に可愛いというかほのぼのしているというか色々ずるい。
劉さんの最期を語る時、紅ちゃんの事を父親のように優しい目で見ていたことを思い出して色々ずるいし辛い。
あと小吉の素顔というか、40歳の小吉が笑っている顔を見るのはいつぶりだろうと思うとやはり辛くなる。
結局辛くなるしメンタル的に死ぬ。

・一警護謹製
謹製という事は米軍からの依頼によって(本多博士の力を借りて)作り上げたものだろうけれど、『特殊部隊試験採用装備』ということはSPECIALsでもこれを使用する、日本独自の技術として秘匿するつもりはないという事か。
それでもあくまでも安全条約を結んでいる日米間のみの技術とするのだろう。
強化プラスチック製だからここに来る際の身体検査に引っ掛かる事は無かっただろうけれど、だからと言ってこれをいかにして飲み込んだのかというか胃の中に入れたのかという疑問については改善していません。
やはり物理的に埋め込んでからのプラナリア……。
生体組織と癒着しそうな危険性もあるような気がするけれど。

・国と一族
というかヤンチャオがこの技術を知らなかったという事は、あの人工島での戦いにおいて天異変態という技術が彼に伝わっていなかったという事になる。
ニュートン一族と組んでいる雷博士たちと恐らく国の上層部直属である凱将軍は全くの別系統で動いていて、互いに協力関係にあるわけではないという辺りだろう。
というよりもお互い嫌っていそうな気がする。
個人的にはもういっそヤンチャオが仲間外れという事で。
というか密室という絶好のシチュエーションで何故胞子を燈に植え付けようとしないのか不思議でたまらない。
操ってる間は他のことが出来ない子なの?

・思い出させる
ここで初めて燈と小吉が初めて出会った時と同じ技を繰り出すという、この対峙を見た時からいつか来るだろうと思っていた構図が来てくれて嬉しいけれど、思ったよりも早かったなという感じもする。
あえてあの時と同じ技を繰り出し、同じ構図にすることで小吉に過去を、燈を救ったその時を思い出させようとしている。
自分の技をあえて受けてくれたというその行為が燈にとってどれほどの救いになったか。
例えその時点で小吉の人生は奪われていて、その抜け殻のようなままに生きていたのだとしても、それでも小吉の存在自体が燈を救い、更には多くの人間の指針となった。
自分の導き手を失った小吉が誰かを導いている。
引っ張ってきている。
今まで出会ってきた彼らの存在を、思い出させなければならない。
アネックスの彼らも、バグズの彼らも。
燈自身は実際に火星で彼らと共に戦っていたわけではないし(ミッシェルさんはともかく)、互いに背中を預けていたわけでもない。
けれど合同訓練等で目にして、それを武術家として覚えていたのだろう。
思い出させるために、自分の流派の中からよく似た技を選んだ。
燈自身が意識してその技を使ったという事もあるだろうし、その技を見たからこそ、その動きに、その後ろに各々の姿を見たのだろう。
燈が背負ってるというより燈に小吉が今まで出会い、関わって来た人達を(ある種勝手に)見出しているように見える。
その動きに今まで出会ってきた、小吉が仕方なく生きて来たと思っていながら、それでも彼が影響を与えてきた存在を見出しているのかもしれない。
自分の人生がただ諦めの中、失意の中過ごしていただけではなかったと。
誰よりもそう願っていたのは小吉自身だったのかもしれない。
というか蛇足にはなるけれど、前回書き忘れていたというか書こうと思っていたのに何故か入れ忘れていたことなのだけれど。
なんとなく彼らの決着を付けるのは小吉の特性であるオオスズメバチの能力が消えてから、サバクトビバッタの特性が現れてハイキックで結末(2巻と全く同じ構図)という展開を期待していたなどと。
貴家先生そういうの好きだろうなと思っているので。
まあそういう意味ではもう一度同じ構図が今度はティンさんの特性を持った状態で出てくれるかもしれないとかすかに期待。
小吉の首が物理的に飛ぶ可能性もあるけれど。

・肘打ち
この傷のつけ方が。
小吉の傷というか視力が心配なのは確かだけれど、バグズ2号の、ミンミン副艦長の特性とその技でティンさんと同じ傷をつけるというのが。
こういうのがいかにも貴家先生らしいなと思う。
というかやはりミンミンさんもそれなりにというかむしろかなりの強さを持っていたのだなと。
実際バグズ編では人為変態した後にテラフォーマーを倒しているのも確かだし、彼女の出自を考えればそれは当然なのかもしれない。
そういう意味では本当、バグズのキャラを別角度で見る機会があれば。
それでもミンミンさんは劉さんの過去においてかなり描かれた方ではあるけれど、そう考えるとやはりバグズ編の外伝を……。

・膝丸神眼流
あくまでも燈が背負っているのは膝丸神眼流であり、アネックスの彼らを背負っているわけではない。
というかここに朝太郎が居るという事は、やはり彼は。

・今の艦長
あくまでもヤンチャオが操っているという前提であるならば、正確には操っているというよりもある程度の反射を司っているだけかもしれないが少なくとも誰かの手が入っているような状態で燈を生け捕る事など出来るわけがない。
小吉の実力を全て発揮することが出来て、例えそれが異形の蟲であったとしても、人ではない何かとなったとしても小吉自身の力でなければ燈を捕らえる事など出来はしない。
だからこそ、思い出させる為の戦い方ではなく、膝丸神眼流を背負った膝丸燈という存在としての戦い方で応える必要がある。
まだ、小吉から彼は『一本』を取っていないのだから。
彼の眼を覚まさせることが、彼の人生を再び動かすことが勝負の決着になるのだから。

・10秒
小吉にすればそれは自分を軽んじられていると思う永さ。
燈にすれば永遠とも思えるだろう永さ。
その誠実さ故に立ち止まり、進む事の出来なかった人生を再び動かすために必要な10秒。
誰にも知られることのない、運命の転機。
人生を取り戻すために必要なものとして、10秒という時間は永いのか短いのか。

・背負う者
燈が自分自身の戦いをすると告げたその後ろにアキちゃんの姿が見えているのは、燈自身が背負っているものなのかそれとも小吉が見出したものなのか。
もちろん燈がアキちゃんの子供であることを考えれば、彼女の存在を意識せずとも背負っていても決しておかしくはない。
けれど個人的には小吉が心の奥底で彼女の存在を感じたいと、取り戻したいと思っているだろう事を想うと、これは小吉の願望でもあるような気がする。
誰よりも愛して欲しくて、誰よりも愛したい人なのだから。
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今週のタイトル好きだなあ。
ロマンチックとも言える英文と、燈の繰り出す技が入り乱れるという日本文。
割と英文部分はいつも貴家先生が大好きな聖飢魔Ⅱから取られている事も多いけれど(ちなみに今回のタイトルをググってみたら「Mrs. GREEN APPLE」というバンドの曲が出てきました)、今回のタイトルは割とストレートだなと。
小吉が誰よりも愛して欲しくて、アキちゃんを誰よりも愛してると思うと胸に詰まる。

というか今回本当に胸に詰まるというか、もっとこう、感じたことを書きたい思いはあるのだけれどそれを表現する言葉というか文章力が余りにも乏しいもどかしさを痛切しました……。
もっとあるはずなんだけど。
一応各キャラに関してはあえて削ったというか、燈の後ろに見える彼らが小吉の眼に見えるものだとしたらそれに対して言葉を使うというのは何かが違うなと思ったところもあったので。

DVD予約のカラーページにて各キャラが少しお披露目されていたけれど、ファティマが随分と美人でありがとうございます!
あと新しいマルコスのアラクネバスターというか、あの動きを再現してくれるのだろうかと思うと期待が止まらない。
やはり動く以上は動いて欲しいという願望がですね。













最近ヤンチャオがもういっそ癒しキャラに思えてきた。
でもアイツ決着付きそうなとき絶対口も手もだしてくるだろうから早く殴らないと。