「モクレン」
暖かい一日だった。
初夏を感じさせる22度の気温は薄手のコートも必要のない日だった。
しかし、
天候は暖かさとは裏腹に荒れていた。
街路樹が腰を曲げるように風に揺れていた。
午後から友人のお兄様の告別式に行って来た。
二日前に突然倒れ亡くなられたのだ。
55歳の若さであった。
ご家族の心情を察すれば深い悲しみで言葉にならない。
お見送りの時に激しく雨が落ちてきた。・・・涙雨だと思う。
自宅に戻ると、門の傍に植えた紫モクレンが花を咲かせていた。
3か月の間風雪に耐えた蕾が、今日の暖かさに目覚め花を開いたのだ。
涙雨を降らせた灰色の空に薄紅色のモクレンが風にそよいでいた。
「心より謹んでご冥福を申し上げます。」・・・きっと天国で残されたご家族を暖かく見守ってくれる筈です。