「あぁ、。!懐かしきかなぁ、。カメのテ」
一度、食した事がある。・・・
そのキッカケは、周りのテーブルに座ったむかつき男どもが、白ワインを口に運びながら、その間にバケツの中から、“何か”を取り出し、丸太の輪切りのまな板に載せ、それを木槌で叩き割って、白いゴムのような物をつまみ上げ、口に中に落とし込んでいる。
目を細め、旨そうにモグモグと食す姿をみたら堪らない。・・・
店の親父に同じものを指差して注文、もちろん白ワインも忘れちゃいない。・・・バケツの中に山盛りと入った、“それ”が運ばれてきた。木槌と輪切りのまな板も付いてくる。、。男どもと同じ様に、それを摘み上げ、まな板の上に載せ、木槌を思い切り、振り下ろす。
「ぴしゃっ!!」・・・体液らしいものがほとばしる。硬い上の表面が割れ、中から白い身が見える。それを取り出し、口の中に落とし込む。「・・・ショッパイ!!」噛み続けると、。旨味が塩辛さの隙間から次から次に湧き出てくる・・・!「旨い!!」「旨い!!」
本当に美味しかった、。ポルトガルの首都“リスボア”の港に面した小さな飲み屋で食した、亀の手に似た貝が頭の中にずっ-と、忘れられずに残っていた。
今回、宿泊した屋久島のホテル、シーサイドホテルの夕食のオプションメニューに“亀の手”の味噌汁があった。
一見、グロテスクな姿だが、美味しい。
懐かしさと共に、あの旨みが蘇えってきた。
久しぶりに食べたそれは、あの時と同じ味がした。人は味覚の記憶でも、過去に戻る事が出来るのだ。
ダイビングに来た屋久島で30年前のポルトガルが蘇えってきた。・・・
あの時は、あの時で幸せだったのだ。「カメのテの貝」が今と昔を繋いでくれた。