定まらない心・・・19歳の僕と今の僕 | 「バックパッカーがH・Ⅰ・Sの役員になった奇跡」小さな会社の未来の創り方

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出来ない事はやらないことだとHIS創業者「澤田秀雄」氏から学んだ。ベンチャー魂と自ら経験した多くの失敗が成長の奇跡を創る。伝える事よりも伝わること!直ぐに実践したくなる、熱き魂に触れてください。

「定まらない心・・・19歳の僕と今の僕」

 

 19歳の秋、僕は海外に一人旅に出た。学校と仕事に上手くいかず、挫折を感じ、エスケープしたのだ。 

 パリに一週間滞在し、その後、列車でマドリッドに向かった。フランスとスペインの国境駅、ヘンダヤで列車はフランス側の広軌から狭軌に変わる。台車毎、そのまま交換したのではないだろうか? パリを夕方に出た列車は国境駅に夜中に到着、僕ら2等車の客は薄暗いホームに出され交換の間、ボッーと待つことになる。 終了すると乗客たちはそそくさと何事もなかった様に元の車両に乗り込むのだ。列車はそのままマドリッドに向けてひたすらと走った。

マドリッドの安ホテルにて(19歳の僕)
 安ホテルを探す。バックパックと不安の重さに耐えながら、好奇心だけで足を進める。見るもの全てが珍しく、言葉が通じない不便さよりも、分からない事に理解出来た事の喜びに嬉しくなっていた。現地の日常の生活も僕にとっては非日常で毎日が感動であった。

 
  スペイン(トレド)にて



 30年後の今、僕にその感性は残っているのだろうか。経済的な自立の為に我武者羅に頑張って来た組織人としての時代、未来を模索しながら苦しんだ時代もポジションが上がり収入が増えていく事で、失って来たものが有るのではないだろうか?

 経済的な裕福とは精神的な貧しさなのではないだろうか? 何も持たなかったとき、僕には満ち溢れる好奇心があった。不安の裏腹に面白さが隠れていた。緊張と緩和の中で小さな驚きを紡ぎ、大きな喜びに変える事が出来た。

           マドリッドのマヨール広場でフラメンコを踊る学生達
 今はお金をだせば、何度でも海外に行くことが出来る。昔はそのお金を稼ぐ為に日夜、食う事も制限してお金を溜める事に精を出さなければならなかった。・・・

 

 四畳半一間の共同アパートの生活、知恵と工夫で溢れていた。粗大ゴミの日はワクワクした。自分のオリジナル家具の素材探しが楽しかった。

 二日に一回の銭湯通いも楽しかった。先にコインランドリーに寄り、洗濯機に洗濯物を入れ、銭湯に入る。帰りには乾燥機に入れ替え、ちゃちなパイプ椅子に座り、誰かが置き忘れた雑誌を読みながら終わるのを待つ。その間、風呂上りの女子大生やOL達が僕と同じ様にコインランドリーに寄り、洗濯物を洗濯機から乾燥機に入れ替える、暫らくは同じ場所で同じ時間を共有する。石鹸の香り、無防備な姿態は若い僕には刺激的でちょっと照れくさくもあった。

大学での僕の講義の学生達(面白い顔でパチリ)
 来年で50歳。あっという間、本当に早いもんだ。年を重ねるのはしょうがない。  体力的に衰えるのもしょうがない。忘れっぽくなるのも致し方ない。 

 でも、あの時の感性は失いたくない。もっとシンプルに生きたい。・・・

 粗大ゴミの中に自分だけの宝物を見つけた。知らない街に自分だけの感動があった。僕が失いたくないものは好奇心。 もっともっと知らない事を知りたい。

 国境駅ヘンダヤで変換された広軌から狭軌の台車の様に変わりたくはないのだ!

これからも知的好奇心を満たす旅を続けたい!!