HBc抗体を測定する時』はB型肝炎に対する免疫状態(急性/慢性/既感染/ワクチン接種後/未感染)を判断したい時にする検査ですが、本題に入る前に下記の事項も確認しておいてください。

※AST/ALTの上昇を示していても真の肝機能障害でないこともしばしばです。『肝機能数値の解釈について』(http://ameblo.jp/bfgkh628/entry-11455105102.html

※肝機能障害のアプローチに関してはこちらhttp://pmj.bmj.com/content/79/932/307.full

※B型肝炎の疫学、自然経過、診断などはこちらhttp://www.kanen.ncgm.go.jp/forcomedi_hbv.html

※急性肝障害患者の臨床的検討はこちら                       (http://www.adm.fukuoka-u.ac.jp/fu844/home2/Ronso/Igakubu/v38-1/v38-1-08.pdf

こちらの統計(n=112)によると最も多かったのは急性B型肝炎で約3割原因不明が次いで約3割。原因不明とされたものの中には自己免疫性肝炎(AIH)やPBCなどの他にも確定診断が難しいCMVやEBVをはじめとしたウイルス感染や薬剤性も数%程度は含まれていると推測しています。大体こんな感じなんだと捉えておくことが大切かと思います。また、非A非B非C非E急性肝炎の多くは一過性の肝障害で慢性化することは少なく、ALTは一峰性のピークを過ぎれば軽快する。

では、HBc抗体の測定についてですが、HBc抗体は、B型肝炎ウイルス由来の蛋白HBc抗原に対して身体が免疫反応を示して作られた物質です。

IgM-HBc抗体HBV感染後1週間程度で陽性となり、3~6ヵ月後に消失し、B型急性肝炎の診断に有用です。HBVキャリアの急性増悪でも低力価で陽性化することがありますが、多くは抗体価で鑑別できます。

キャリアの急性増悪と初感染を鑑別するだけでなく、HBs抗原が検出されない時期(Window period)をみている可能性も考慮しIgM-HBc抗体を測定します。

(ちなみにC型急性肝炎の診断にはHCV抗体が陽性化する以前にHCVのゲノムであるHCV RNAを検出し得ることから、HCV RNAの測定が早期診断に有用です。)

一方、HBc抗体はHBc抗原に対する抗体の総称で、感染の比較的早期から血中に出現し、ほぼ生涯にわたって持続します。HBV感染者を既往感染も含めて最も広く検出する検査です。

一般的には低力価の場合は既往感染(多くの場合HBs抗体陽性)あるいは一過性感染、高力価の場合は持続感染(多くの場合HBs抗原陽性)と解釈されています。従来のRIA法では200倍希釈で陽性のとき高力価といわれていましたが、CLIA法では10.0以上を高力価とされています。https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo/47/6/47_6_279/_pdf


救急医の挑戦 in 宮崎


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(ワクチン接種後の方は総HBc抗体陰性でHBs抗体が陽性になります)


上の表にもあるとおり、HBs抗原陰性、HBs抗体陰性、HBc抗体陽性の場合は以下の4通りが考えられます。


①急性B型肝炎からの回復期

②ワクチン接種後(ただしHBs抗体価が低下している)

③HBc抗体疑陽性

④潜在性HBV感染


特に④が重要で、同様にHBs抗体が陽性でも体内に潜伏感染している可能性が指摘されています。


まとめると、HBs抗原陰性でもHBc抗体陽性またはHBs抗体陽性であればHBV既往感染であることを示し、体内にHBVが潜伏感染している可能性があります(ただし、HBVワクチン接種によるHBs 抗体単独陽性例は除く)。


健常者では臨床上全く問題は生じませんが、何らかの要因により免疫能が低下するとHBVが再増殖し、B型肝炎が再燃することがある(HBV再活性化)ので注意が喚起されています。したがって、免疫抑制剤抗癌剤などの使用に際してはHBs抗原、HBs抗体とともにHBc抗体を測定することが推奨されています。
(免疫抑制、化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン)

http://www.ryumachi-jp.com/info/news110926_gl.pdf


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以上です。

 



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