本日は『大動脈狭窄症の自然歴』についてです。
http://circ.ahajournals.org/content/105/15/1746.full
大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis:AS)は大動脈弁の肥厚や石灰化により弁の可動性、解放が制限されてしまう病気です。
心臓というポンプから大動脈という管を通して全身に血液を運ぶのですが、その管の入り口が狭くなってしまうのです。そうするとポンプ(心臓)に大きな負担がかかってしまいますね。
検診などで『心雑音』を指摘されて発見されることが多いと思います。
典型例では第2肋間胸骨右縁を最強点にして右頸部に放散する漸増漸減型の収縮期駆出性雑音になります。重症になればなるほど、駆出時間がかかるため収縮期後半にピークを迎えます。
上図のように『Mid-systric murmur』になるのが、ASやPSです。『Holosystric murmur』になるのがMRやTR、VSDです。
大動脈弁の弁口面積(AVA)や圧較差を心エコーで測定してASの重症度を判断します。大動脈弁口面積は正常では2.6~3.6㎠(平均3㎠)ですが、平均するとAVAが1.0㎠以下になると症状がでてくると言われています。しかしながら1.0㎠以上でも症状が出現する人がいれば0.5㎠以下でも症状が出現しない人もいます。
弁口面積が0.7㎠5以下では50mmHg以上の圧較差を生じ、弁口面積が0.5㎠以下の重症大動脈弁狭窄では、圧較差が150mmHg以上に達することもあると言われています。
ASがあっても左心室の頑張りにより無症状の期間が長く続き、一生を終える人もたくさんいます。
狭窄が徐々に進行していき、重症ASになっても症状が出現するまでは生存率はほぼASがない場合と変化ありません。しかしながら一旦症状が出現してしまったASで手術をしない場合の生存率はとても低いことが言われています。
狭心症症状が出現すると平均生存期間は5年、失神が出現すると3年、心不全症状や兆候が出現すると2年になると言われています。
また、症状が出現していない重症ASの突然死は約2%以下と統計的に言われていますが、症状が出現してしまうようなケースではさらにこの数値は増加すると予想されます。
そこでエキスパートの意見として、症状が出現したASはできるだけ早く(理想は1か月以内)手術することが勧められています。
ASによる急性心不全は軽度のものを覗いて薬物治療によるコントロールは非常に難しく、手術のタイミングを逃さないことが非常に大事なのです。
手術の適応になるASは以下のように言われています(①~➂がclass1)
①自覚症状のある重症AS
②左室機能低下(収縮率50%未満)を合併している場合
➂冠動脈バイパス術、大動脈手術、他の弁膜症手術を受ける場合など
④運動負荷で症状出現や不整脈、血圧低下がみられる場合
⑤今後急速に進行することが予想される場合
⑥重度のASで手術リスクが少ない場合
弁膜症の内科的なコントロールは難しく、各弁膜症において手術の適応となる病態は異なってきますが、重症の弁膜症や、症状を伴っている中等度以上の弁膜症は手術適応に関して考慮する必要があります。
ただし来院時のエコーを評価して『重症』と判断されても、増悪因子が解除されれば評価が変化してくるのはしばしばです。
例えば、急性期の心不全で水分貯留やafterloadの上昇により『MR』が過大評価されることもあります。
エコーで経時的に評価することも大事なのです。

