本日は血液検査でよく出す『lactate dehydrogenase(LDH)』についてのお話です。
LDH は lactate dehydrogenaze の略で、日本語に訳すと乳酸脱水素酵素となります。LDHはブドウ糖からエネルギーを引き出す解糖というシステムの最終段階に関わる酵素で、ピルビン酸が乳酸になるのを助けます。
この検査が臨床検査に利用されるのは、このような難しい話によるのではなく、LDH という酵素を持った細胞が病気で壊れると、酵素が血液中に逸脱してくるので、これを測れば病気がわかるという単純な理屈によります。LDH はすべての細胞の中に存在しますが、特に心臓の筋肉や、骨格筋・肝臓・腎臓・赤血球・癌細胞に多く含まれます。
LDH の上昇により、これらの細胞の障害や増殖を知ることができます。正常値(基準値)は120~245IU/l です。
【LDHアイソザイム】
LDHには5種類(LDH1~LDH5)のアイソザイムがあり、電気泳動法で調べられます。
臓器によって含まれるLDHの割合が違いますので、アイソザイムを調べることである程度まで損傷部位の予測ができます。
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・心筋、赤血球にはLDH1、LDH2が、肝細胞、骨格筋にはLDH4、LDH5が特に多く、各アイソザイム濃度が上昇している場合は、それぞれの臓器障害の可能性があります
・心筋梗塞、巨赤芽球性貧血ではLDH1/LDH2が1以上になる。(通常はLDH1<LDH2。そのためflipped LDHと言われる)。心筋梗塞では発症後24-48時間まで上昇し7-14日続く。心膜炎では通常は上昇しない。
・LDH3は肺梗塞や肺炎でも上昇する
・(LDH5>LDH4)は肝障害を示唆する
・説明がつかないLDHの上昇は悪性腫瘍(癌、リンパ腫)を考える
・きわめて高いLDHの上昇をみたら腎梗塞を考える
http://ima.org.il/imaj/ar02oct-6.pdf
突然の持続する重篤な側腹部痛が血栓塞栓症のリスクの高い患者に発症した際には腎梗塞を鑑別に挙げる必要があります。臨床症状は尿管結石に似ています。その際に注意すべき検査所見は『血尿、白血球増加、LDHの上昇』です。(WBCの平均値は12988±3841/μl、LDHの平均値は1570±730/IU)
ASTの増加や蛋白尿も時に認めます。
高齢者の腹膜刺激症状のない持続的な腹痛は血管性病変を疑うというclinical pearlは有名ですね。
Aortic dissection、AAA ruptureやAcute mesenteric ischemia(急性腸間膜虚血:SMA血栓(塞栓)症、NOMIなど。初期には腹部所見が軽く腸管の壊死の進行とともに腹膜刺激症状が顕著になる)が含まれます。
他にも絞扼性イレウス、卵巣嚢腫茎捻転、子宮外妊娠なども腹膜刺激症状がでないことがあります。
腹痛って難しいですね。
同様に痛みが間欠的だから安心って訳にもいきません。イレウスや卵巣嚢腫茎捻転、虫垂炎の初期のこともあります。
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よく出す検査なので整理して理解をしておくといいでしょう。