本日は『たこつぼ型心筋症:Stress Cardiomyopathy, Takotubo Cardiomyopathy』についてです。救急やプライマリケアの場面ではACSを疑った場合は循環器専門医にコンサルトするのでこの病気を知らなくても困ることはないかもしれませんが、いろいろな場面で見聞きする言葉なので知っておくとよいでしょう。


その名前の通りに心臓が『たこつぼ』様(下図参照)に変化するために命名された病気です。精神的、身体的ストレスを契機に発生し心尖部の心機能が低下し、代償性に心基部の心筋に過収縮が起こるためにこのような形態になります。1-4週で心機能は元に戻るため予後良好な疾患ですが、診断にあたってはAMIやSpasm、脳血管障害、心筋炎、褐色細胞腫の除外が必要です



救急医の挑戦 in 宮崎


脳血管障害(特にSAH)や褐色細胞腫ではカテコールアミンが大量に分泌されて同じような病態を引き起こすことが知られています。


SAHでカテコールアミンが大量に分泌されて『神経原生肺水腫(neurogenic pulmonary edema)』や心電図で大きな陰性T(cerebral T)が見えたりすることはありますね。


意識障害の患者さんでポータブルレントゲンを撮影してみたら『肺水腫があるから、急性心不全だ!とか、『意識障害の結果として起こった誤嚥性肺炎かな?』なんて騙されてしまうこともありますね。(しかしながらレベル3桁のSAHの予後としては厳しいものがあるので、もし診断がついても。。。ですね。)

 

このあたりは『救急/プライマリケア合同カンファ』での『SAHのclinical pitfall』でお話しましたね。


それでは本題にうつって『たこつぼ型心筋症』についてのstudyです。http://old.cjmed.net/html/2009343_344.html?PHPSESSID=ae2a5b8599fa38528fb0e575a333db2a (Salvatore Azzarelli,et al.:Takotubo cardiomyopathy mimics an acute coronary syndrome in postmenopausal woman.Journal of Chinese Clinical medicine;2009,3;Vol4,No.3)


ACSを疑われて入院となった1880人を前向きに評価して罹患率や臨床的特徴、予後などを調べたものです。この内たこつぼ型心筋症(Takotubo cardiomyopathy:TC)の患者さんは19人(約1%)で、17人(89%)は閉経後の女性でした。平均年齢は65±13で中央値は66歳で33歳から84歳まで見られました。精神的なストレスは9人(47%)、身体的ストレスは5人(26%)で認めていました。18人(95%)の患者さんで胸痛を認めました。9人(47%)の患者で2つ以上の連続する誘導で著名なST上昇を残りの10人(53%)は陰性T波を認めていましたトロポニンIの平均値は4.3±5ng/dlで、入院時のEFの平均値は40±8%でしたが、1か月後のフォローアップした際には著名に改善していました。入院の期間中に6人(31%)で合併症(心原性ショック1人、心不全4人、心尖部の血栓形成1人)を起こしましたが、23か月にわたるフォロー中には心原性のイベントは観察されませんでした。



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JAMA.2011;306(3):277-286にも掲載された多施設大規模臨床試験も参考にしてください。

http://jama.ama-assn.org/content/306/3/277.short


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本日は以上です。