どうもご無沙汰しています。本年もどうぞ宜しくお願いします。


さて早速ですが、本日は『末梢性顔面神経麻痺』についてのお話です。


すこし顔面神経の走行の復習をしましょう。(google画像からの拾いものです)



救急医の挑戦 in 宮崎


顔面神経は表情筋や頭皮の筋肉、外耳に分布しているだけでなく、鼓索神経やあぶみ骨筋神経、大錐体神経になってそれぞれの支配する筋肉などに関係していきます。


症状としての顔面神経麻痺は『口から水がこぼれるようになった』とか『眼が閉じにくい』などの理由で外来を受診されます。


中枢性と末梢性の鑑別はご存じですね。額のしわ寄せができる場合は中枢性を疑います


迅速に診断をつけて治療をすることで顔面神経の機能予後を改善する可能性があるので、この疾患を理解しておくことは内科医にとってとても重要であると思います。


末梢性顔面神経麻痺を呈する疾患は大きく①感染症(Bell麻痺、Hunt症候群、Lyme病など) ②外傷性 ③腫瘍性に分けて考えるとよいでしょう。


この内、我々が最も診療する機会が多いと思われるのは①感染症のうちのBell麻痺です。


Bell麻痺とはどんな疾患でしょうか? 特発性顔面神経麻痺とも呼ばれますね。特発性(=原因不明)ですが、ウイルス感染が契機(単純ヘルペス1型の再活性化)になっているのではないかと考えらています。


突然発症の末梢性顔面神経麻痺であり、1-7日間かけて完全麻痺へと進行していく可能性がある疾患です。このあたりの経過が腫瘍性との鑑別になります。腫瘍性は緩徐進行性です。


70-80%の患者で完全に機能回復が期待できますが、発症時の運動麻痺の程度(いくつか採点方法があります)により予後が左右されます


いくつかの文献では発症早期のステロイド治療(1mg/kg 7-10days)を支持する論文があります。ステロイドを使用し神経浮腫を改善することで神経障害を改善させようとするものです。顔面神経麻痺患者496人のうちプラセボ投与での3か月後の完全回復が64%だったのに対してステロイド投与群は83%まで上昇したとの報告があります。


ステロイド投与はできるだけ早期(24時間以内が理想)に投与しますが、禁忌がない患者で発症1週間以内ならよいであろうとしています。


ステロイドに追加しての抗ウイルス薬に関してはcontrovertialな様ですが、重篤な機能障害を呈している場合はこうした併用療法が勧められています。


Hunt症候群は水痘帯状疱疹ウイルスによって生じる末梢性の顔面神経麻痺ですが、水疱形成が特徴的ですね。耳介や顔面など目にみえるところとは限りません。軟口蓋や口腔内、外耳道、鼓膜にできることもありますので、しっかりと探してください。発疹が後から出現することもありますし、出現しないこともあるようです。(こうなるとBell麻痺との鑑別は初期には難しいですね。)

痛みはBell麻痺よりも重篤で予後もBell麻痺よりも悪く感音性難聴を残す可能性があります。


治療はステロイドと抗ウイルス薬を使用します。



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本日は以上です。 群馬に帰郷して英気を養ってきました。


やっぱり宮崎は暖かいです。。


では。