昨日は当院で『第2回救急/プライマリケア合同カンファレンス』が開催されました。多くの先生の御参加を賜りありがとうございました。



SAHのpitfall』と題して頭痛の鑑別疾患から、問診の取り方、CT、MRI、髄液検査の話等々、SAHのpitfallを中心に約2時間かけてお話させて頂きました。



普段やり慣れない事をしたので昨日はとても疲れましたが、多くの先生から『楽しかった』『勉強になりました』と言って頂けた(なかなか本人を目の前にして『つまらなかった』とは言えないと思いますが。)ので良かったです。



脳外科専門の先生にも来て下さったので場がとても引き締まり、私や救急の他の先生にとっても有意義な時間になったのではないかと思います。



また別の機会にお話した内容をまとめてブログにのせますね。



カンファから少し抜粋してご紹介。



①SAHで痛みがでる理由

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ana.410250212/abstract


三叉神経血管枝が頭部の血管まできていて、tachykininやサプスタンスP、neurokinin Aといった神経伝達物質が関与している。SAHによりこれらの物質が変化することによって三叉神経血管枝が刺激されて痛みを感じる。



②SAHで失神する理由

一過性意識障害になると考えると、脳幹網様体の虚血によると説明できる。脳底動脈の解離(SAH)や攣縮(脳底動脈片頭痛)はもちろんであるが、IC-PC動脈瘤などでも解剖学的に上に位置しているが、起こしても良いと思われる。



⇒SAHで失神することは知られている。その場合は失神した後に頭痛がなかったかどうか詳細に問診することが重要。もちろん、SAHに限らず、ACS、dissection、AAA、PEなどの血管性(VINDICATEのV)の他、子宮外妊娠破裂、肝癌破裂などは鑑別に入れたいところです。syncopeの鑑別listに必ず入れてください。(以前にブログでsyncopeは説明しましたね。cardiovascular syncopeのリストに入れてしまうといいかもしれません)


③SAHのopeを前提にした場合はトラネキサム酸は使用しない

再出血の予防はわずかに期待できるといデータがある一方で、脳虚血を心配するstudyもでている。opeを前提にした場合はトラネキサム酸を使用すると血液が固まり血腫になってしまうので、動脈瘤の手術をする際に血腫を洗い出すのに苦労する。ドレナージするにも固まってしまうと排出しにくい。血腫が溶血する過程で放出されるオキシヘモグロビンなどの攣縮誘発物質が脳血管攣縮を引き起こすと言われてるため。



まだまだご紹介したいことはたくさんあります。教科書を読んだり、論文を読んだりしただけじゃ味わえない事を脳外科expertや他の救急医のopinionをたくさん聞けて私自身もとても勉強になりました



これがカンファレンスの醍醐味じゃないかと思います。



Thunderclap headacheのないSAHは勿論、全く頭痛の認めないSAHも極めて稀ですが知られています。脳外科expertの先生も1例経験があるとの事でした。



SAH診療の限界と難しさ、今の医療でできることを含めて研修医の先生にお話させてもらいました



彼らにとっても多くを学ぶ機会になってもらえたのではないかと思います。



次回からは笑いの数もカウントしながら、楽しい会になるように(これが一番難しい)していきたいです。