先日『アルコールemergency』についてお話したので、本日はアルコール関連のお話を。
『アルコール依存症』の定義についてですが、ICD-10 http://www.ask.or.jp/shindankijun.html
を見ると診断基準が記載してありますが、とても覚えきれないですね。
『アルコール依存症』の定義は
『飲酒により社会生活に支障をきたしていること』をアルコール依存症と考え、飲酒量では定義されません
さらに一般に『大酒家』とは
大酒家とは日本酒5合/日×10年以上』で一般にこの『大酒家』の10~30%に肝硬変が発生してくると言われている。
一方、『常習飲酒家』とは一日に平均して3合以上の日本酒を飲む人を言います。
ちなみにアルコール性慢性膵炎はどうでしょうか?
いわゆる大酒家が10年で10~30%に肝硬変を生じてくるのに対して、繊維化といった慢性膵炎の変化を引き起こすことはそれほど多くなく、アルコール性肝硬変ほど量依存性ではないのです。
もともと何らかの遺伝的要因が背景にあるのではと考えられています。
酒を楽しみながら飲んでアルコール性脂肪肝・肝炎・肝硬変にならないためには一日量を日本酒に換算して2~3合以下にとどめ、週1~2日の「休肝日」を設けるのが賢明といえます。
『飲酒歴』があるかないかだけでなく、このように依存はないか、肝硬変への進展はないかと考える必要があるのですね。宮崎では『日本酒』を飲む人はほとんどいません。『焼酎』が多いようですが、この場合は等価計算をしなければなりません。目安として、
日本酒1合=ワイン1/4ボトル=酎ハイ(1:4)2.5合=ビール大瓶1本=ウイスキーダブル1杯=エタノール約25g
焼酎は薄めて飲むのでこの聞き方だと分かりずらいですね。
『一升瓶が何日でなくなるのか』という風に聞くといいです。
一升=1800ml 一合=180mlとして計算してみると、、、、、
だいたい大酒家は4日で、常用飲酒家は7日で一升瓶が空になる計算です。
アルコールと肝臓についての著名な研究者LelbachやPequignot等によればアルコール80g/日(日本酒換算で3.5合、ビール3.5本、ウイスキー3.5杯いずれか)以下の飲酒は肝臓障害を起こさない安全域であり、80~160g/日では5倍、160g/日以上では25倍も肝硬変を起こす頻度が高くなると報告されています。
『肝硬変患者のバイタルサイン』
肝硬変患者さんでは門脈圧が上昇して血管から腹腔内に血漿がしみ出て腹水が上昇し、その結果として血管内容量が減少して血圧が下がることがある。
肝硬変が進行すると、体内シャント(普通の人は5%程度)が30-50%と増加するためSpO2が低下することがある。シャントとはA-Vシャントの事でこれが身体所見に現れたものが、くも状血管腫です。シャントがあるとhyperdynamicになるために脈圧が高くなる。
『肝硬変患者の身体所見』
口臭のタイプでは、小便臭い匂いは肝硬変。りんごの匂いは糖尿病。いわゆる口臭が臭いというのは嫌気性菌感染
ばち指は爪床の結合組織の過形成であるが、体内シャントがある疾患に見られることが多く、先天性心疾患や肝硬変でも見られる。その他の疾患としては肺癌、間質性肺炎、肺線維症、肺気腫、気管支拡張症など
爪の間のダイヤモンド型の間隙(Schamroth Sign)が重要です。
肺気腫の人でばち指をみたら肺癌を疑うことが大切と言われています。
肝硬変の患者では大抵、手掌紅斑(palmar erythema)がみられる。これは手の母指球にでる紅斑のことで、肝硬変や妊娠、甲状腺機能亢進症でも見られる。
アルブミンが2.2g/dlをきるような低アルブミン血症ではfast edema(以前に私のブログで下腿浮腫の鑑別で紹介しました)になるが、門脈圧亢進症による下腿浮腫はslow edemaになる。
『肝硬変患者のABG』
機序は不明であるが、肝硬変の患者は代謝性アルカローシスにも呼吸性アルカローシスにもなることが多い
本日は以上です。