本日はERにおける『急性副腎不全』のマネージメントについてです。(日内誌の寺澤先生の記事そのままです。これ以上にまとめることはできませんので。)


急性副腎不全(副腎クリーゼ)の患者さんがERを受診する場合は


慢性副腎不全の診断が既についている⇒ストレスが加わり急性副腎不全

②副腎の問題が分かっていない場合⇒時に診断が困難である。


症状嘔気、嘔吐、発熱、低血圧~ショック、全身倦怠感、体重減少、色素沈着など


原因不明のショックに直面した場合にこの『副腎不全』を鑑別に入れることを忘れない事


検査所見低Na、高K、低血糖、高窒素血症がセットで認められるのが特徴である。


ERにおける副腎不全の治療ステップ


①診断確定前に治療開始

・疑った場合はcortisolとACTHの測定のために採血をして治療を開始する。ACTH測定のための採血検体は冷却して検査室まで運ぶことが重要


②低血糖の治療および水、Naの補充

・低血糖がある場合は即座に治療

・次に生理食塩水で水とNaの補充を行う

・ステロイドホルモン投与後は低Kを注意


糖質ステロイド投与

hydrocortisone 100mg静注し、以後6時間毎に繰り返

・もし、後でACTHtestをするならばhydrocortisone ではなく、dexamethasone6-8mgの静注を選択する(ACTHtestへの影響が少ないため)


通常の副腎不全ならば薬6~12時間でショックは軽快する。急性副腎不全から軽快したならば輸液は中止して、経口摂取の開始とともに、経口の糖質ステロイド補充(15-25mg/日)に移行する。もし合併疾患やストレスがコントロールされない場合は一日に3.4倍の投与を考慮しなくてはならない。

④副腎不全を惹起した原因の検索と治療

慢性副腎不全の患者が副腎クリ―ゼで受診する場合、最も多いのは長期内服中であったステロイドホルモンの中断である。しかし、ステロイドホルモンを内服できなくなった理由を常に考慮すべきである。隠れた感染症を見逃さない


⑤副腎不全の原因疾患の検索と治療

1次性で急性の原因:副腎出血(外傷、ワーファリン、敗血症、血栓症

2次性で急性の原因:下垂体卒中や分娩後下垂体壊死(sheehan症候群)


1次性で慢性の原因:副腎結核、自己免疫性副腎炎、転移性副腎腫瘍

2次性で慢性の原因:ステロイド長期投与、サルコイドーシス、下垂体腫瘍など



【ストレスにさらされる慢性副腎不全の患者への補充療法』

慢性副腎不全が強く疑われる(何らかの疾患で大量にステロイドホルモン療法が行われている)患者が検査や手術などのストレスにさらされる場合は特別なステロイドホルモンの補充が考慮すべきである。しかしながらprednisone 5mg/日程度の量を内服している患者ではストレスの程度に関わらず、下垂体副腎系の活動に問題なく、特別な補充は不要としている。


軽症:軽度の発熱、胃腸炎など:当日だけ25mg hydrocortisoneIV又は5mg methylpredonisone IV


中等症:肺炎、重症な胃腸炎など:当日に50-75mg hydrocortisoneIV又は10-15mg methylpredonisone IV 1.2日でいつもの量に漸減


重症:急性膵炎、心血管系手術:当日に100-150mg

hydrocortisoneIV又は20-30mg methylpredonisone IV 1.2日でいつもの量に漸減


最重症:敗血症ショック:50-100mg hydrocortisoneIV6-8時間毎 数日から1週間投与し、以後漸減



以上です。