このブログを始めて3か月が過ぎました。記事の殆どは医師をターゲットにした狭い話題にもかかわらず多い日で1日に200件を超すアクセスがあります。


誰かに伝えたいという目的よりは、自分の考えを整理すること、また記事を書くことで新たな問題点も確認できブログを始めて良かったと思うことが多々あります。


今後もできるだけ更新していきたいと思います。



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さて、先週も『ベンゾジアゼピン過量服薬による意識障害』の患者さんが来院されました。朝来院されたので、そんまま経過観察ベットで寝てもらい夕方に帰宅してもらいました。


(overdoseの患者さんの問診→『matters』は依然お話しましたね)


しかしながら大量に内服した場合や薬物相互作用(アルコールや他の鎮静薬など)でなかなか起きないこともしばしばです。明らかに薬物で間違いないだろうと言えなければ、他の原因検索をしながらICU管理になることもあります


飲んでいる薬物がベンゾジアゼピンだと分からない場合もあります。


そんなときに拮抗訳である『フルマゼニル(アネキセートを使用するかどうか、実は悩ましいのです。



そういう訳で本日は『ベンゾジアゼピン過量に対するフルマゼニル(アネキセート)』についてお話したいと思います。


『フルマゼニル』は『ベンゾジアゼピン』の拮抗薬で知られています。どうでしょうか、皆さんはこの薬を使用することがあるでしょうか。内視鏡検査で『ベンゾジアゼピン』を使用する場合は呼吸抑制がでた場合などにこの『フルマゼニル』を使用しているのは良くみかけますね。


薬物中毒の患者さんで『ベンゾジアゼピン過量』が疑われた場合はどうでしょうか?『フルマゼニル』を診断目的に使用することもありますか?


フルマゼニル』は一般的に『ベンゾジアゼピン』による呼吸抑制や意識障害を元に戻す目的で使用されます。0.2-0.3㎎を30秒以上かけて静注します。投与後4分以内に覚醒が得られなければ、0.1㎎ずつ1分間隔で合計1.0㎎まで投与可能です。

半減期は約50分です。



大事な『フルマゼニル』の禁忌を覚えておきましょう。


①ベンゾジアゼピン依存の→強い離脱症状が起きるため


②三環系抗うつ薬を内服している→痙攣が誘発される


③てんかんの既往のある→痙攣が誘発される



どの程度から『ベンゾジアゼピン』に対しての依存とするか、はっきりした定義はありません。


これらの禁忌から『フルマゼニル』は使いずらい薬剤なのです。



あるshort studyではベンゾジアゼピン過量の患者さん22人のうち21人は毎日内服していた(ベンゾジアゼピンに依存あり)、また1人は禁忌の薬剤を同時に服用していた、1人はてんかんの既往を認めていた、1人は抗てんかん薬を定期服用していた。14人はうつ病の既往があり、6人は抗うつ薬を内服していたとの事です。


これらの事から言えるのはベンゾジアゼピン過量』で来院された患者さんはかなりの頻度で禁忌に該当する可能性があるということです。


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2564056/



ですから『フルマゼニル』の使用に関しては慎重を期す必要があります。この問題に関して決まった方向性を提示できないでいますが、riskをbenefitが上回る時のみ使用可能だと思います。



さて、しかしながら本当に禁忌は禁忌なのでしょうか?今まで禁忌と言われていたけど、実はそうでなかったなんて話は良く耳にしますよね。



http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21785147


このstudyはUKでのベンゾジアゼピン過量に対する『フルマゼニル』の使用頻度、効果と安全性についてretrospective cohort studyされています。


4504人の対象患者のうち、わずか80人に『フルマゼニル』が投与されています。日本での使用機会がどれだけなのか把握しておりませんが、UKではあまり使用していないようです。呼吸障害や意識障害、高齢である場合などに考慮しているようです。三環系抗うつ薬の内服はフルマゼニルの使用に影響はなかった(つまり内服にかかわらず使用するときはしていた)ようです。そんなhigh riskの患者さんも含めてフルマゼニル投与により70%の患者さんで呼吸と意識の改善を認めたとする一方でわずかに痙攣が使用しない群と比較して起きたとしています。



本日はここまで。