鳩山由紀夫首相の資金管理団体を巡る偽装献金事件で、東京第4検察審査会は、不起訴処分を妥当とする一方、関与を否定する首相の説明に対する強い疑念を表明し、首相の聴取を見送って上申書の提出で済ませた東京地検特捜部の捜査にも疑問を投げかけた。「政治とカネ」を巡る厳しい民意の表れと言える。

 佐久間達哉特捜部長は昨年12月に元公設第1秘書、勝場啓二被告(59)を起訴した際の会見で「必要と考える捜査はすべて行った」と説明したが、当初から検察内部では、首相の聴取に消極的な意見が大半だった。総額12億円余に上る資金を提供した実母の聴取も「高齢」であることを理由に見送られた。

 こうした特捜部の姿勢に対しては、以前から「首相側への配慮」との批判があった。検察審査会の審査の焦点も、首相が実母から毎月1500万円もの資金援助を受けながら、本当に知らなかったかどうかだった。

 結果として、審査会は「不起訴を覆す証拠がない」として処分を妥当と結論付けたが、「素朴な国民感情として、知らなかったとは考えがたい」という意見が少なからずあったという。首相と特捜部は、こうした付言を重く受け止めるべきだろう。

 一方で、審査会は、資金管理団体の代表者である政治家は、会計責任者の「選任及び監督」の双方で過失がなければ立件できないとされている政治資金規正法の在り方にも言及し、法改正の必要にまで踏み込む付言をつけた。こうした意見は、政治資金規正法の改正論議にも影響を与える可能性がある。【大場弘行】

 ◇「政治家立件にハードル高く」検察幹部

 検察審査会の議決について、ある法務・検察幹部は「首相の共謀を示す証拠はない。冷静に判断していただいたと思う」と胸をなで下ろすように語った。一方で「政治資金規正法の共謀の有無はきわめて専門的な話。審査員の方にとっても判断が難しかったのではないか。今後もこうした一喜一憂が続くのだろうか」と不安を口にした。

 別の検察幹部は規正法の選任・監督規定に対する審査会の批判について「この規定で政治家を立件するにはハードルが高く、今では成立した過程もよく分からない。審査会は法改正を求めているが、我々に何かできるわけではないので国会で議論してもらうしかない」と話した。

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