伯耆国の一之宮は鳥取県湯梨浜町に鎮座されている倭文(しとり)神社です。
神社をお参りするときのBGMとして一番合っているのが、ジブリ「となりのトトロ」のなかで流れるサントラ「風のとおり道」だと個人的には思っています。
久石譲の作曲ですが、日本独特の湿潤な環境のなかで神霊が宿っている感じがとてもします。映画の冒頭で、親子3人が引っ越し先の近くの神社にお参りするシーンが出てきますね。
倭文神社は森のなかのお社で、昼間でもちょっと薄暗く、まさしくこの曲にぴったりです。
鳥取市内に前泊して、その日は超ロングドライブを予定していたものですから、早めにホテルを出発しました。しかし、鳥取市内から湯梨浜町は意外に近く、神社に到着したのは午前7時30分頃でした。社務所が開くのが9時30分とあり、「2時間もどうしようか~」と思っていたところ、宮司さん宅の電話番号が目に入ったものですから、8時過ぎてから恐る恐る電話をしてみました。
「朝早くから申し訳ありません、社務所が開くのは9時半でしょうか?」と聞きましたら、「8時半には行きますよ~」と御返事がありました。
宮司さんには大変申し訳ないことをしたなと反省しつつも、直書きの御朱印を無事授かることができました。
そもそも倭文とは何でしょうか?
倭文とは梶木や麻を材料にした古代の織物のことです。
御祭神は天羽槌雄神(あめのはづちのおのかみ)で、機織りの神様であるとともに、倭文氏の遠祖でもあると伝えられています。
しかし、大正時代までの主祭神は下照比売命(したてるひめのみこと)だったそうで、この女神にまつわる話しが神社には多く残されています。
天孫降臨に先立ち、葦原中国(地上世界)を治めようと、高天原からまずは天之菩卑能命(あめのほひのみこと)が遣わされます。しかし3年経っても音沙汰がありません。
次に、天若日子(あめのわかひこ)が派遣されるのですが、天若日子はすっかり葦原中国のことが気に入り、大国主命の娘と結婚します。この娘が下照比売命です。
8年経っても復命しないことに業を煮やした高天原側は、雉の鳴女(なきめ)を問責の使者として送るのですが、天若日子はこれを弓矢で射殺し、その矢はそのまま高天原まで届きます。
高天原側は「もし、天若日子に叛く意思があるなら、この矢に当たるだろう」と矢を投げ返したところ、矢は天若日子を討ってしまいました。
そして、妻であった下照比売命は夫を失い号泣したというくだりは古事記のなかでも有名な一節です。
倭文神社はそういった悲嘆に暮れた女神を祀っていますが、安産の神様として地元ではとても崇拝されています。