開け放たれた窓から半分身を乗り出して、夜空を見上げる。
体を寄せ合ってひとつの毛布に包まった、俺と彼女。
「星、きれいだね」
彼女は小さく鼻をすすった後、俺の耳元でそっと囁く。
「寒い?」
「ううん。平気」
俺は彼女の細い肩を、少し冷たくなった手で抱き寄せる。
澄んだ空気は、冬に近づきつつある証拠。
星の瞬きが、こんなにもはっきりと見える。
白い、冷たい光が、見る者の心を捕えて放さない。
「あの星座、何だか知ってる?」
彼女が指差した方向には7つの星が、理科の教科書でよく見た柄杓の形に並んでいた。
「知ってる。北斗七星だろ」
天体には疎い俺でも、さすがにそれくらいは覚えている。
「星座ってね、少しずつ変化しているんだって」
「え? ずっとおんなじ形をしてんじゃねーの?」
驚いて俺が尋ねると、彼女は軽く、首を振った。
「長い時間をかけて、わずかに、変わっていくんだって」
そう呟く彼女の言葉が、ひどく、寂しそうに聞こえた。
「『万物は流転する』、か・・・」
「何、それ?」
「ヘラクレイトスの言葉」
「ヘラクレス?」
「それは、ギリシャ神話の登場人物。ヘラクレイトスは古代ギリシャで哲学やってた人」
「へえ。物知りね」
全てのものは、変化していく。
その真理は時に、残酷なほど人の心に深く、突き刺さる。
「ねえ」
彼女は北斗七星を見上げたまま、俺に声をかけた。
「流転しないものも、世の中にはあると思う?」
全てのものは、変化していく。
だけどなかには、変わってほしくないものもある。
「あるかもしれないな。・・・あるよ、きっと」
俺は腕の中にいる彼女を、力いっぱい抱きしめた。