テーブルを拭こうと避けた醤油の蓋が空いて絨毯にかかってしまった。

出掛ける直前に。


テーブルだけ拭いて出ようとしたのに、
新たな仕事を作ってしまった。

しかも、醤油なんてこぼしたら落ちない。

なんなら前の絨毯も醤油を
ボトル半分こぼして処分した。


あー………


なぜ安全な場所に醤油を避難しなかったのか?

そんな後悔と出掛ける直前にシミを
処理しなければいけないイライラ。


絨毯をトントンしながらフッと笑えた。

別にシミ処理作業が楽しいわけではない。


ついさっき、
「もし、この世界に自分以外の人がいなかったら?
すべてのもので満たされているが誰もいない。

そう、誰もいなければ何の問題も起きない」


そんな記事を読んだからだ。


問題が起きるとは幸せなことなのだ。

地球上に自分一人だけしか存在していないのなら、問題はなくなってしまうのだから。


醤油のシミだって、
無限に絨毯が湧くなら拭かない。

新しいものを敷くだけだ。


というか、
自分だけしか存在しなら絨毯すらいらないだろう。


問題が起きることが幸せなら、
絨毯をトントンするこの作業もまた幸せ。


また別件で朝から頭を抱えていたが、
それすらも楽しいことに思えた。


問題とは幸福なことだ。


自分以外の誰かがそこに存在しているのだから。

ちょうど醤油まみれのティッシュを捨てた時、迎えが窓から見えた。


玄関のドアを開けたらそんなことは忘れていた。