すこし前、ある転機の時期に、印象的な夢を見ました。
今でも、あれは「ただの夢」ではなかったと思うほどに、リアルで、重たく、心に残っています。
夢の中の私は、なぜか大きな木の上にいました。
下を見ると、真っ白な霧が森を覆っていて、足元の高さすらわからない。
後ろには、安定した足場がありました。
これまで築いてきたもの、慣れた仕事、関係性、肩書き・・・それらに似ていました。
ふと、誰かの声が聞こえました。
「枝の先まで、行ってごらん」
私は思いました。
「え?なんで?今のままで十分じゃないか」
けれど、声は静かに、でも確信を持って繰り返しました。
「行ってごらん。あなたに必要なものは、その先にある」
恐る恐る、一歩一歩、私は枝の上を歩いていきました。
枝はどんどん細くなり、不安定になっていきます。
途中で足を滑らせそうになったり、「戻ろう」と思ったりしながらも、なぜか進んでしまったのです。
やがて枝の一番先までたどり着いたとき、足元が崩れかけて、私は思わずその枝にしがみつきました。
今にも折れそうな枝に、全体重をかけて。
もう動けない。戻れない。
ただ、「今の自分」がギリギリで支えられているだけの状態でした。
そんなとき、またあの声がしました。
「その枝を、離してごらん」
私は混乱しました。
「いや、それは無理だ。これを離したら、落ちてしまう。壊れてしまう。失ってしまう・・・」
でも、その声は続けました。
「あなたは、ずっとこの枝が“支え”だと思っていた。でも、実は“重し”になっている。
あなたが本当に望んでいる場所は、その下にある。
怖いのはわかる。でも、“手離す”という選択をしてごらん」
私は震えました。
枝を離したら、すべてが終わる気がして。
でも、もう、その枝は、私を前には進ませてくれない。
息をのんで、指を1本、また1本、ゆっくりと離していきました。
そして、最後の瞬間。
私はその枝を、完全に手放しました。
落ちました・・・。
けれど、そこには衝撃も、破滅もありませんでした。
ただ、霧の中を静かに降りていく感覚。
そして、ふと着地したその場所で、私は思いもよらぬものと出会ったのです。
それは、
「理想の未来」でも「新しい景色」でもなく・・・
紛れもない——「あるがままの自分」でした。
私はそこで、自分がずっと目を背けてきた「都合の悪い私」と向き合うことになりました。
失敗する自分、怠ける自分、誰かのせいにしたくなる自分。
ずっと“なかったこと”にしてきたその存在が、霧の中にくっきりと立っていたのです。
けれどその姿を、私はなぜか拒めませんでした。
むしろ、
「そこにこそ、本当の始まりがある」
と感じたのです。
勇気を持って、自分の不完全さをまるごと受け入れたとき、
はじめて私は「自分の意志で生きていける」という感覚を得ました。
それは、ただの落下ではなく、「魂の地平に着地すること」だったのかもしれません。
そして気づいたのです。
わたしがしがみついていたのは、「安心」ではなく
実は「不安」だったのです。
そして、
「手離す」ことが、
実は「掴む」ことだったのでした。
今日は、この辺で・・・。
