隣の店員は鴨ネギ客を逃すまいと、離れる気配が無い。
一般的に考えると、初心者の高校生が購入する楽器は先ほどの激安コーナーあたりのものだろう。友人とバンドを組む場合、『おまえ、そのギターいくらしたの?』『えっ?。。さんきゅっぱ。。。』『アンプ込みで!?』『信じられね~笑』となることを回避したいのはやまやまであるが、脆弱経済基盤が支えることができる出費はこれがせいいっぱいである。つまり、いい楽器を手にして上手くなりたいという意欲は高いが購買力が低い。楽器店の店員にとって心惹かれる話題は冬のボーナス金額であり、それは客の意欲ではなく、購買力とリンクしている。ということで、高校生よりは高い購買力が期待できるおやじに店員は張り付き、激安コーナーを食い入るように見つめ、欲しいオーラ全開の高校生は先ほどから放置されている。ここには無理からぬ、だが、致命的な勘違いがある。基本的な客みたて違いである。
おやじが、ベースギターをみている。店員推測・『1、若い頃からベースギターを弾いている。2、若い頃ベースギターを弾いていたが、途中やめており、また始めようとおもっている。3、自分ではなく、子供がベースギターを欲しがっており、下見にきた。』これらの推測は今回の場合すべて外れているのであるが、推測ナンバー3を選択肢とした場合は適切な質問を繰り返すことで、私の低い志と、低予算計画を確認できたはずである。しかし、店員は推測ナンバー3は選択肢として頭の片隅にも浮かばなかったらしい。その証拠に、いくつかの楽器の特徴を説明してくれた。『このメーカーは(私は楽器メーカーはヤマハと河合楽器・ピアノ?・しか知らない)○○が特徴で(ドレミの音に違いがあるのか?)アーティスト(奏者のことか?)の○○が愛用している(誰が使おうと関係ないし、第一そんな外人しらない・・・後日、日本人であることが判明)という説明がつづく。しかも一生懸命盛りだくさんである。コップに注いだ水はその容積を超えた瞬間から、溢れ出し無駄になる。この場合私の理解容積はお猪口の裏側より小さく、先ほどからの説明はもはやイスラム教のコーランなみに難解である。このように熱心に、
しかし無駄に説明してくれるのだが、当方の最も大きな疑問。『なぜ、弦が4本しかないのか』に答えてくれそうな雰囲気はない。あげく、『試しにどれか弾いてみますか?』と聞いてくる。なんだ、この展開は!絶体絶命のピンチ。このままではど素人の冷やかしおやじの汚名をきせられてしまう。っとそのとき。『すみません。。』激安コーナーの高校生がか細い声で店員に呼びかける。店員は辺りを見回し他の店員に対応させようとするが、あいにく別件対応中のよう。再度『すみません。。。』と高校生。『あ、私はいいから、行ってあげて。』と大人の対応を装うわたし。『すみません、すぐに戻ってきますから』と、いまいましげに、高校性をにらみ、店員が離れた瞬間。『また、きますね。』と、売場離脱。店員には気の毒な気もするが、ない袖はふれず、ない腕は披露のしようがない。
かくして、ベースギター進出計画はスタートから頓挫し、高校生に救われ、人生負けの日となる。

先日楽器屋へ行く。

なにをしに?もちろん楽器を買うため。

学生時代、ブラスバンドに入っていたのでよく楽器屋へ行ったが、それははるか昔。数十年のときを経ていまやそこは未知の領域。勇気を奮い起こし中へ入る。ズラッと並ぶギター。色形が選び放題。すごい!と思う。

ところが、あまりのギターの多さに目指すベースギターがどこにあるかわからない。うろうろ探していると、まずい状況に突入する恐れがある。そう、店員さんが近寄ってきてしまうこと。あせっていると、あった!ベースギター。これこれと近寄る。入門セット。39800円やっすい!!アンプついてこの値段!?一抹の不安がよぎるが、最初はこの位がでごろでしょと、内なる声。近寄ってみようとしたその時、『ベースギターをお探しですか?』(ついに来た、店員・・・敬称略)『ええ。。。』『こちらの方に多く揃えています』と、激安コーナーから引き剥がされ、見るからに上等そうな楽器群コーナーへ誘導される。店員は明らかに客みたてを誤っている。そこは、最低価格10万円(しかも、単品)からのみ。(こんな高いの買えんヤロー)と言おうとしたら、『やっぱりこれくらいのものでないとなかなか満足できる音はでません』と店員。『そうね。。やっぱりね。』(うわ、見えはってもうた。っていうか、弾き方しらないし、だいたい音でないし、でたらそれだけで満足)と低い志に高い目標を与えられ当惑する。

 そもそも、なぜベースギターなのか。高校生の頃はフォークギター全盛。かぐや姫や吉田拓郎のコピーを友達としていたが、今ひとつ(世間的には全く)いけていなかったらしい。好きと得意は違うという人生の真理をひとつ知り、大人へ一歩近づき、夢をひとつ捨てた感じ。


大学に入り、好きな虫が騒ぎだし、再度音楽にチャレンジ。だが、正攻法では攻略が難しいことは学習済み。そこで、選んだパートが打楽器。音階とリズムのうち、とりあえず音階を捨て、限りある資源をリズム攻略に集中した。結果、そこそこ。いけてる感じ(注 筆者調べ)


そして、いま。やり残した感。そう、音階をです。人生折り返し地点を過ぎたあたり、今を逃すと、悔いが残る。やるからには、そこそこうまいと言われたい。しかし、ユーチューブなんぞを覗いてい見ると、みんな上手い!!あの指の動き、とてもでないが、速さにはついていけそうもない。ところが、ベースギターを見てみると、これが、それ程早くない。これならいけるかも、と思う。しかも、性質はリズム楽器に近い。これこれ、とおもいベースギター進出を決定する。

という次第。

だかしかし、知識ゼロ、経験ゼロはドラクエのレベル1。防御の武器はおなべのふた状態。

横に立った店員は離れる気配ない。ピンチはつづく。。。



久しぶりにゴルフに行く。郊外のゴルフ場はレンタカー代や交通費がかかる上に、結構な料金を取るので、お手軽に。ということで近くの河川敷ゴルフ場にいく。駅前で友人二人と待ち合わせ。このふたりとても体躯がよく、しかもよく日焼けしている。小柄で色白の私が一緒に話をしている様子は、どう見ても、その筋のひとにカツあげされているおやじだ。
リーダーの○内氏にゴルフというのに、昼食用にコンビニでなにか買うよう指示される。しかも、迎えの車は白色のハコバン。これでゴルフバッグがなければ、手配師とその仲間たちである。河川敷ゴルフ場に到着。いつも行くゴルフ場とはずいぶん趣が違う。コースに出ると風がつよい。そのうえ左右が狭く(河川敷にあるので、全体が細長い)OBがでやすそうだ。スタート前、○内氏から、今日のゲームルールの説明がある。この方、国際派バイヤーで東南アジアとアメリカで活躍中。商談にかけてはプロ中のプロであり、落とし所はいつも自分の想定内というツワモノ。複雑なルールを提示され、理解できないままいきなり成立。社会人になって最初に入った生命保険のおばさんを思い出す。
強風の中でプレーは始まったが。○内氏いきなりバーディー。次のホールに歩きながら、『3人なので、あなたはいま、ダボ(ダブルボギー・・・規定打より2打多い)君とまわっています。ダボ君は財布をもっていないので、ポイントは倍になります。だから、さっきのホールは-60ポイント、これがラスベガスと言われるゆえんです。』と彼が時たま話すタイ語より難解で、ますますわけがわからなくなる。混乱のうちに18ホール回ってようやく休憩。吹きっさらし河川敷のベンチでコンビニで買ったおにぎりを食す。10分の休憩時間はすぐ終わり、次の9ホールがスタートとのこと。爽やかさを奪った体育会のようである。後半また、事件が起こる。もう一人のメンバー○光氏。8mのイーグルパットを決める。人生初の快挙と大喜び。友人として共によろごぶ。が、また、ここで○内氏より、説明。『あなたは今、ダボ君と......で、さっきのホールは-200ポイントです。』
小さく稼いで、大きく損する。人生の縮図を見るようで、気絶しそうになる。その後、抜け殻のようなゴルフが続き、終了。
近くの寿司屋で精算。プレー料金の3倍近いオプション料金を払わせていただく。
○内氏『ここはおごりますから』と、見覚えのある紙幣で支払い。おもわず、お礼などを言ってしまい、人生負けの日となる。ダボ君は○内氏の息がかかっていると思う。
(今日のおしえ)
『分からないことは、分かるまで聞きなさい。としつこく言った予備校の講師は、ゴルフを通して、その境地に達したに違いない