ビジネス利用に特化し急成長・ビジネスSNSのLinkedIn(2)
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMIT2E000023062008&cp=2


[2008年6月24日]

■オンラインの履歴書としてのプロフィル機能

 LinkedInが提供するサービスは個人のプロフィル、個人同士をつなぐネットワーキングとメッセージ、求人と求職のマッチング、そして会員同士が質問に答えあう「Answers」に整理できる。そして、これらの基本となるのがオンラインの履歴書としてのプロフィル機能である。

 このプロフィルを元に知人とのネットワーキングが作られるほか、プロフィルが検索対象になることで新規採用ポストの募集、ヘッドハンティングといった新しいビジネス上の出会いが生み出される。

 LinkedInには無料で登録することができる。SNSといっても知人からの紹介はなくても構わないし、紹介メールを元に登録することもできる。登録時には氏名とメールアドレス、居住国、職業、勤務先、肩書き、そして業種の入力が必須になっており、日本のSNSで必ずといっていいほど見かける「ニックネーム」という欄はない。

 ここで入力した名前をずっと使っていくため、でたらめな名前でも登録できないことはないが、知人同士が互いに探し、ネットワーキングすることを考えるなら、仕事上で使っている名前を登録するのが自然だろう。

 登録後は、自分のプロフィルを入力していく。現在の仕事、過去の仕事、学歴、さらに全体のサマリーというシンプルな構造だ。所属期間を入力すると在籍年数を計算して表示してくれ、それぞれの経歴に説明を加えていくこともできる。いわばLinkedInが提供するフォーマットの履歴書を作る感覚だ。

 特徴的なのは、過去の仕事のリストが前面に出ていること、そして現在の仕事を複数併記できることだろう。メーンで勤務する企業名のほか、別の組織でのポジションを加えることができる。企業に勤務しながら大学の客員研究員をしたり、複数の企業にポジションを持っていたりする人を見つけることは少なくない。

 このプロフィル画面がマッチングのための基本データとなる。たとえば検索窓で「People」を選び、「Web designer」と入力すれば、プロフィルに「Web designer」と記載している人のリストがずらっと並ぶ。新規採用をしたい、プロジェクトに参加してほしい、アドバイスがほしいなどいろいろな理由でコンタクトを取りたいときには、このように探すことができる。同様に「Jobs」を選んで検索すると、その職種を募集している企業のリストが提示される。


■ビジネス利用に特化

 自分が発信する情報は、基本的にはこのプロフィルの設定だけだ。日記もないし、顔写真以外の写真も共有できない。自分のプロフィルに関しては、毎日更新すべき情報はなく、所属が変わったり新しい仕事をしたりしたタイミングで追加するのみである。自分のブログや別のサイトがあれば、プロフィルからリンクを張ることはできるので、ほかのツールと使い分ける人が多いようだ。

 昨年1月には「Answers」という、ビジネスに関する質問を投稿し、回答を募るサービスが追加されたものの、FacebookやMySpaceと比べると、日記や音楽、動画、写真といったコンテンツを更新したり、互いに掲示板に書き込みをしたりするアクティビティーがなく、おとなしいと感じられるかもしれない。しかし、これがビジネスネットワーキングサービスとしての割り切りであろう。ビジネスとプライベートを明確に切り分け、毎日更新する必要のないサービスを提供することによって、ビジネスパーソン向けという性質を際立たせているのだ。次回は具体的なネットワーキングの仕組みについて見ていこう。


[2008年6月24日]


-筆者紹介-

折田 明子(おりた あきこ)

中央大学大学院戦略経営研究科 助教

略歴
 1994年慶應義塾大学総合政策学部卒業、2000年同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。外資系IT企業勤務を経て、同大学特別研究助手としてe-Japan戦略のスタッフをつとめた。その後、インターネット上で見知らぬ者同士が助け合い、情報交換する現象に関心を持ち、2007年博士(政策・メディア)を取得。2008年4月より現職。現在は、インターネット上の匿名性、ネットコミュニティーに関する研究に従事。