クラウド時代到来:「Googleで変えたい」と富士ソフトの堀田副社長
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0806/11/news137.html


富士ソフトが「Google Apps Premier Edition」の本格販売に踏み切った。SaaS市場の拡大を睨むとともに、大半が技術者という同社を変革するには、クラウドコンピューティングの未来に確固たる信念を持つGoogleの力が必要だという。
[浅井英二,ITmedia]2008年06月11日 22時00分 更新

 富士ソフトは6月11日、都内のオフィスで記者発表会を行い、Google Appsの企業向けバージョン、「Google Apps Premier Edition」を本格販売することを明らかにした。


グーグルの村上社長(左)と富士ソフトの堀田副社長 Google Appsは、Googleがホスティングするコミュニケーションやコラボレーションのためのツール群。「Gmail」や「Googleドキュメント」(文書作成や表計算)などから構成され、小規模事業者や教育機関向けには無償版も用意されているが、今回富士ソフトが販売代理店契約を結んだのは、24時間体制のサポートや99.9%のメール稼働率を保証し、容量もアカウント当たり25Gバイトまで提供される有償のPremier Editionだ。

 パートナーとしては、Salesforce.comが既に名乗りを上げ、自社サービスと組み合わせて販売しているものの、Google Apps Premier Editionそのものを販売する代理店契約は、富士ソフトが国内初となる。

 記者発表会に同席したグーグルの村上憲郎社長は、「昨年2月、国内でもGoogle Apps Premier Editionの販売を開始し、クラウドコンピューティングによって実現されるSaaSに対して一定の理解が得られてきた。サポートの全国網を持つ富士ソフトの協力を得ることで、さらに弾みがつく」と話す。

 Googleはコンシューマー向けのプレーヤーとみる企業ユーザーも多いが、「クラウドコンピューティングのコンセプトは、コンシューマー向けだけではなく、企業向けのシステムでも十分機能する。企業向けのシステム開発で実績があり、信頼も得ている富士ソフトに先導してもらいたい」と村上氏は期待する。

 グーグルとのアライアンスを主導した富士ソフトの営業本部長、堀田一芙副社長は、「かつてのWindowsがそうであったように、SaaSも成熟が進んでいる。高い可用性とセキュリティを低コストで実現するGoogle Appsによって、旺盛なコンピューティング需要を抱え、なおかつ、グリーンITも意識し始めている情報システム部門のニーズに対して機敏に対応したい」と話した。

Googleガジェットによるシステム構築も視野に
 富士ソフトは5月中旬、社内外のソフトウェアに対してどこからでも安全にアクセスできるワンストップソリューション、「FSSaaBIS」(エフエスサービス)を発表している。顧客の業務システムをより効率の良い仮想化環境に変え、富士ソフトのデータセンターによるホスティングサービスや情報系のSaaSと組み合わせ、ユーザーがWebブラウザベースのシンクライアントや携帯端末からシングルサインオンでシームレスにアクセスできるようにするソリューションだ。

 Google Apps Premier Editionは、同サービスにおける情報系SaaSの中核をなすとともに、Googleガジェットを活用した全く新しい手法によるシステム構築も視野に入れているという。

 堀田氏は、「富士ソフトは8割以上が技術者。変革していくためには、強力な信念を持ったパートナー、つまりグーグルが必要だ」とし、今回の販売代理店契約は同社側から持ち掛けたことも明かした。

「FSSaaBIS」におけるGoogle Appsの位置づけ
 Google Apps Premier Editionのビジネスは、向こう5年間で65億円の売り上げを見込んでいるが、この数字には既存システムとの連携やカスタマイズ、あるいはガジェットの開発などは含まれていない。コミュニケーションやコラボレーションの基盤上により大きなビジネスが展開できると期待している。

 Google Apps Premier Editionの価格は、グーグルが公表しているのと同じ1アカウント当たり6000円。メールとグループウェアを導入した社員数が1000人の企業の場合、初期コストと運用コストの3年間の合計で約9000万円のコスト削減効果が期待できるという。