連日の世界金融経済ネタです。何か「雪風クンの経済教室」みたいになってきましたが、気まぐれなので、思いつくまま書かせていただきます。
日本は偶々「円のキャリー取引の解消」が発生して、為替の上では円高となっていますが、先進国も発展途上国も今金融経済が大混乱しています。
先進国の大きな金融機関が突如として潰れたり、不良債権処理時点の日本の銀行のように政府の公的資金を注入されて、一時国営化されたりと大変な状況です。
しかし、如何に火遊びの主犯が先進国の金融機関とは言え、発展途上国は体制が脆弱な分、とばっちりを受けて、信じられない程のダメージを受けています。
前回申し上げたように、既に通貨が大暴落したり、国としてIMF(国際通貨基金)にSOSを求めたりと、国をあげて大騒ぎのところが沢山発生しています。
今回のお話しは、じゃ、なんで発展途上国の経済がそんなに打撃を受けるのよ、というものです。
勿論、第一義としては、アメリカ等の輸出で潤っていたものが、アメリカの急速な景気冷え込みで打撃を受けているいうことがあります。
しかし、工業国(韓国・タイ・インド・中国等)や資源国(ロシア・ブラジル等)や特殊な投資立国(アイスランドが典型)のような国々にはこの側面が大きいですが、実際このようなものはジワジワ来るものであり、日本にもいずれこの余波は来るでしょうが、直ぐ様に影響するものとは言えません。
また、ボクの従来の説明では、マネタリズムの浸透によるカネ余りが、お金の国際的投資を促進して、潤っていた発展途上国(小さな伸びしかしない先進国よりも分け前は大きいので、投資が増長される)から、急速にお金が逃げ出したということになりますが、
これは引き金としては最大でしょうが、あくまでもきっかけということに過ぎないと思います。各国の株式相場の低迷はこれが原因でしょうが、お金を企業に融通する金融機関が大変になるということで考えると間接的になります。
それでは、各国の金融機関や政府が大変になるというのは、何故なのでしょうか。
それは、「ドルの枯渇」という理由になります。同じ経済でも貿易ルールの問題です。
第二次大戦後、金本位制を維持して世界の基軸通貨であったドルが、ニクソン大統領の突然の発表で金兌換を停止し、変動為替相場制となりました(ニクソンショック)。
ですが、産油国等の多くの国は自分の方からドルペッグ制を敷き、自国の通貨がドルと為替連動するようにしました。
何故なら、アメリカが牛耳っていた原油取引が全て「ドル建て」だったからです。それくらい貿易の上で、通貨というものは重要なものになります。
その後も基軸通貨として命脈を保ったドルは、様々な貿易取引に使われています。
日本も、多くの大企業が未だにドル建てで貿易決済をしています。ユーロや円で取引しているケースも今では沢山あるでしょうが、おそらく日本はアメリカ以外の国々との決済もドル建てで行っている場合がほとんどでしょう。
お金は人や物よりは簡単に国境を越えますが、それでも貿易や海外送金というのは、とても面倒くさいものになっています。
些か専門的ですが、ボクも平成元年から3年まで保険会社の営業マンを札幌でやっておりました。その時に外航貨物保険の営業成績が欲しくて、水産業者を中心に輸出や輸入を拡大させようと頑張ってみたことがありました。
保険会社は、荷物に保険をかけるだけですから、至ってシンプルなのですが、問題は外国企業との決済です。
とりわけ輸出をする際は、外国の企業が当てにならないので、その国の決済銀行に信用状(通常L/Cと呼ぶ。Letter of crditの略)と言うものを確立させて、不払いリスクを排除する必要がありました。
海外の銀行が、海外企業の信用に見合って発行するものなのですが、当時は日本の銀行が高ビーで、それをスムースにやってくれないのです。
今だから言えますが、拓銀サンが、とてもお役所仕事で、日本側の企業のメインバンクなのに、居丈高で全然動いてくれないので、本当に呆れました。
まさか当時北海道内で飛ぶ鳥を落とす勢いで、札幌の合コンでも威張りまくっていた拓銀さんが、あの後潰れるとは思いもよりませんでしたが。。。。(笑)
また、これも余談に渡るかもしれませんが、海外送金だって、今だに結構大変です。
日本の銀行同士ならオンラインがありますので、すぐに信用で振り込めますが、海外の銀行とはそんなオンラインはありません。
ですから、海外に送金するのは、手続きも面倒ですし、手数料もかかります。
一説では、日本の場合は、政府が海外への資産逃避を恐れて、ややこしい規制をかけているということを言う方もおられますが。。。。
話が多少逸れましたが、銀行同士の決済としても、契約当初の手続きはとても面倒ですし、時間やリスクがつきまとうものなのです。
そこで、貿易決済では、一度決めた取引形態を変えたくないというのが通常なのです。(それを変えることを「ターム変更」と言ったりしますが、みんなやりたがりません。)
ですから、世界を飛び回っている決済の通貨のほとんどは、現在もドルなのです。
発展途上国からすると、輸入にまずはドルが必要です。にもかかわらず自国通貨が暴落すると、余程の予備でも無い限り、ドルがあっという間に枯渇します。
ドルと自国通貨のバランスが急激に崩れてしまうということは、その国やその国の企業にとっては、ドルの枯渇を意味するのです。そこで焦れば焦る程、ドルは上がってしまい、悪循環となります。
発展途上国では、国家や国営組織が直接貿易を管理して取引しているケースや保証しているケースが沢山あり、国家そのものがドルの枯渇に泣くケースも沢山見られます。
韓国などはそこで政府が外貨準備のドルを取り崩して、自国の金融機関にドルを融通し、顧客に対してドル決済での円滑な取引を促す政策を取ったりしています。韓国のような工業国でもそうなのです。
日本は偶々、その通貨の危機は逃れましたが、今度は円高の日本は輸出が壊滅的被害を受けることになります。
アメリカ等では、韓国企業が早速値下げ攻勢を強めているようです。ドル決済が可能な企業にとっては、千載一遇のチャンスとも言えるからです。
アメリカ経済がダメになっても、一部では「デカップリング効果(追随しないこと)」で、中国やインド等Brics国家を中心に世界経済の好況は維持されると言う専門家も沢山いました。
ボクは中国は、公共投資をして内需拡大にある程度成功すると考えていますが、それも「パンデミック」等のリスクがありますし、どこまで出来るかは予測の域を出ないと思います。
つまり、決済に中心にドルがある限り(ま、ユーロや円でも同じことが起こると思いますが)、発展途上国には足かせがあるということになります。
中々難しいものです。
しかし、裏を返せば、ジグザグした動きで、ドルの信用が墜ちて行くにしても、ドルをたんまり持っている産油国や資源国等もありますから、ドルが下がることは、その人達の財産が減るということにもなりますので、ドルが「腐っても鯛」という形で、世界経済に幅を利かす期間はまだ続きそうということにもなります。
今回は、ちょっと小難しかったかもしれませんが、世界経済が金融という組織を介した貿易というもので成り立っていることを、皆様にも改めて想起していただければ、またちょっとしたニュース理解のヒントになるのではないでしょうか。
雪風拝