先日の書き込みには、沢山の反応をありがとうございました。

 ボクがアメリカ政府の政策が利下げをしにくい環境を作っているという指摘をした途端に、ボクの声が聞こえたかのようにバーナンキ議長は、市場がサプライズとして最低限認めるであろう「0.75%の緊急利下げ」を行いました。(笑)

 しかも、月末の定例会で、更なる利下げを行うかもしれないという所謂「口先介入」までする周到ぶりです。

 勿論、ボクの前回の自説は変わっていません。利下げをしたとしても、益々インフレもしくはスタグフレーション(インフレなのに不景気な悪い状態のこと)になるリスクは増大したと言えるでしょう。

 バーナンキ氏は、きっとそれらも承知の上で、ある意味開き直って、利下げを実施したというのが、ボクの実感です。

 利下げしにくい環境で、FRBが腰を引いたら、もっと市場はマイナスイメージを持つであろうという判断なのかもしれません。


 バーナンキ氏は、大学人(大学の先生)出身者です。

 詳しくは割愛しますが、日本が利下げをしまくっていた時に、インフレターゲットの第一人者である同氏は、有名な「バーナンキの背理法」という理論を主張して、日銀の金融政策を批判しました。

 皮肉にも、そのバーナンキ氏がそれに近い方向性に、アメリカをFRB議長として導いてしまう可能性が出て来てしまったのです。

 経済という怪物は、天気のようにコントロール不能な怪物ですから、ご苦労もお察ししますが、まだまだ危険性が大きいことは事実でしょう。


 おそらく市場も、取り敢えず好感をした反応を示しましたが、関係者はこれで実際に経済指標が好転するか否かを見極めて、それからの本格的な行動を決めるものと、ボクは推測しています。


 因みに、本邦の日銀は、その数日前に現在0.5%誘導目標の政策金利を据え置きました。

 日銀のこれらの政策につきましても、以前のブログで何回かご説明いたしましたので、割愛いたしますが、

 暴論とは思うものの、もしもボクが自由に決めて良い立場なら、アメリカの状況をキャッチして、0.1%でもいいから先手で利下げをしたかもしれません。

 何故なら、日銀は協調介入ばかりを繰り返している歴史があり、しかも市場関係者はアメリカ追従的に対応していることを見抜いているであろうからです。

 アメリカが順調な時は、十歩譲ってそれでもいいのかもしれませんが、アメリカが問題発生している時に、様子見をしてしまったのでは、面目も保てないのではないでしょうか。

 下げ余地の少ない日銀の立場だけに、有効な政策を講じることが、彼等にとってもベネフィットだったのではないかと、ボクは考えています。


 さて、皆様の前回の書き込みに対する反応で最も多かったものは、世界の基軸通貨たるドルの行方であったように感じます。

 戦後、英ポンドから世界の基軸通貨の座を奪った米ドルですが、ニクソンショックやプラザ合意等をくぐり抜けて、今でも「有事のドル買い」と言われる程、安定的な通貨であるとの認識を世界に与えています。


 ニクソンショックの前にもジョンソン政権による「偉大なる社会」と呼ばれる財政出動によるばらまき政策があり、財政を悪化させてしまい、そのツケを払った形となったことがあります。

 今回のブッシュ大統領の政策が、同じような結果を招くとは限りませんが、しばらくはアメリカ経済の動向が予断を許さない状況であることは、間違い無い事実です。

 であらば、ドル安になる訳でして、そうなればドルを持っている人は、黙って資産価値が目減りするということになります。

 普通なら、安定的と思われるユーロにお金が大量に逃げ出し、ドルの威信低下が世界の基軸通貨の座をユーロに明け渡すと考えるものです。


 しかし、ボクは過去の例のように急激にそうなるとは考えていません。

 「ミスター円」と呼ばれて旧大蔵省で活躍した榊原英資氏も似たような考えのご様子です。

 簡単にユーロへのシフトが進まないのは、既に世界中の国家や企業が長い間に「ドル建ての資産」を保有していることがあります。

 しかも、諸外国に対してアメリカはドルから決済通貨をユーロに移すことを、政治的な意味でも嫌うでしょう。

 イランが、原油の決済をドルからユーロに代えようとして、アメリカに睨まれていることが好例です。


 如何に強大な為替市場と言えども、ドル建て資産を大量に保有する組織が、それを一気にユーロ等に切り替えることは、かなり難しいものなのです。

 現実には、今年一年間も色々な情勢の中で、為替は乱高下するかもしれませんが、大きな流れというものは、確実でも徐々に然るべき方向に流れていくものだと思います。


 今回も小難しい書き込みで失礼しました。

 明日は大阪方面に出張です。名前は知っていても、初めて乗り換える駅、初めて降り立つ場所に行くことになります。

 誰にも未来はわかりません。近い未来も遠い未来も見えないことは同じです。

 しかも、不安に思う要素があればある程、未来がわからないという当たり前なことの前に、ボク等は愕然としがちです。


 しかし、時間はまだあるのです。大きな問題が良くなるか、悪くなるか以前に、時間を友達にして、ゆっくりとでもしっかりと歩いていかないと、待っているものは、結果以前の「自滅」に過ぎません。

 未来を考えることは当然ですが、未来を思い煩うのではなく、起きてくる出来事をしっかりと受け止めつつ、それを味わうくらいの気持ちで、前を向いて行きたいものです。

 明日の出張の端まで、悩もうと思えば悩める訳ですが、ボクもせめて明日の日帰り出張を目一杯楽しんで来たいと考えております。

 どうもありがとうございました。

                             雪風拝