大棗の効果の基礎知識 (47):トリテルペン抽出物の薬理学的試験 | besselwegのブログ

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カバノキの外樹皮は五環性トリテルペンを含んでおり、その34%betulin (BE)で、それ以外にもbetulinic acid (BA)oleanolic acid (OA)Lupeol (LU)erythrodiol (ER)が含まれています。今回はトリテルペン抽出物を生体に投与した場合の血中濃度の推移や中毒性に関し解析した論文を読んでゆきます。

出典は「A preliminary pharmacokinetic study of botulin, the main pentacyclic triterpene from extract of outer bark of birch (betulae alba cortex). Molecules 13: 3224-3235, 2008」です。施設はドイツのNiefern-Osclbronn市のCarl Gustav Carus Institutです。街はフランクフルトとフライブルグの中間ぐらいに位置する閑静な大学街のようですね。

  

 
 

この種類のトリテルペンは600 mg/kg i.p.でも生体に問題なしとされています。

・ OALD50は、1,500 mg/kg (i.p. mouse)です。

・ 500 mg/kg i.p.投与後24時間でBAは種々の臓器でその存在が確認され、最も高濃度に存在するのが腎周囲脂肪組織です。さらに、最高血中濃度(4.0 ug/ml)は0.23時間後に確認されます。

・ しかしトリテルペンの水に対する溶解度は低く、0.02 ug/ml程度です。

・ 一方オイルに対するBEの溶解度は3 mg/mlで外用剤としての可能性を示唆します。

・ この論文では、動物実験を用いてBEの中毒試験を行いました。

 

・ 乾燥トリテルペン抽出物: n-hexaneを用いて抽出されました。ヘキサンとは「有機溶媒の一種で、分子式C6H14、示性式CH3(CH2)4CH3 で表される直鎖状アルカンである。常温では無色透明で、灯油の様な臭いがする液体。水溶性は非常に低い(20℃で13 mg/L)」と記されています。

 

・ 乾燥トリテルペン抽出物の水様性の検討: BE0.08 ug/mlの溶解度を認めました。

 

・ 次にBE60 mg/kg180 mg/kg540 mg/kg)の3濃度をラット(Sprague-Dawleyラット)にi.pし血清BE濃度を測定しました。その結果投与されたすべての濃度で血清BE濃度の上昇を認めました。この3濃度間での血清濃度(投与0.5時間後、2時間後、4時間後)にはほぼ差を認めませんでした。

 

・ 次に犬に300 mg/kgTE28日間皮下注射し血清TE濃度を定量しています。その結果投与初日は投与後0.5-4時間で定量下限でしたが、投与28日後ではその日の投与時点で300 ng/nl以上の血清濃度を示し、4時間後に向けて僅かな上昇を示しました。さらに連日投与28日時点で血清TE濃度は30-300 mg/kg投与群間で濃度依存的に上昇を認めました。

 

・ TEの長期投与(28日間)後の中毒性に関し検討されました。その結果、ラットのTE腹腔内投与群では投与部(腹腔内)に白血球と血小板の軽度蓄積を認めました。これを顕微鏡的に観察すると溶解剤や未溶解のTEと関連したものであることがわかりました。犬の皮下投与群ではほぼ変化は認めませんでした。