Am Fam Physician.
2004 Mar 15;69(6):1417-24.
Nail abnormalities: clues to systemic disease. その9
Fawcett RS
, Linford S
, Stulberg DL
.
Thomas M. Hart Family Practice Residency Program, York Hospital, York, Pennsylvania 17405, USA.
出典:http://www.aafp.org/afp/2004/0315/p1417.html
今回は爪床と血管の変化です。いよいよ最終章です。
1. Splinter出血は爪の縦方向の薄い線状で、色調は赤か褐色で、爪板の下で起こります。
この微小出血が真皮の乳頭層内で起これば目で見て判別できるようになります。Splinter出血は良性の変化と言われますが(局所的外傷、乾癬、局所性真菌感染症)、心内膜炎でも起こり得ます。Splinter出血が爪の遠位ではなく近位に生じた場合心内膜炎に特異性の高い徴候とされます。また、急性よりもむしろ亜急性感染症に関連するとされます。しかしながら、Splinter出血は心内膜炎の15%の症例にしか起こらない一方、心内膜炎を持たない症例が20%程度存在します。
よって、Splinteer出血を心内膜炎の特異的徴候としてとらえることには疑問がありますが、発熱やRoth斑、Osler結節、Janeway病変や心雑音などと併発する場合は診断的重要度が増します。
2. 爪郭部の毛細血管の拡張や不整な蛇行(ダーモスコープで見れば判別可、肉眼では赤く見える程度)は、慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、強皮症などで観察し得ます。
3. 爪半月の色調の変化も疾患により認め得ます。Wilson病(肝レンズ変性)では爪半月の部分が青く変色しこれはAzure半月(Azure lunula)と呼びます。心不全ではこの部が赤くなり、テトラサイクリン治療によりこの部は黄色くなることがあります。銀中毒では爪自体の色が青灰色になり得ます。フッ化物の過剰摂取により爪の色は茶色から黒色になり得ます。
4. Terry’s nailでは大部分の爪板が擦りガラス用になり爪半月も認めなくなります。この変化は爪1本からでも起こるが全ての爪がおこされる方がより一般的であります。この変化は重症肝障害の患者の80%で起こり、また種々の疾患を持った全入院患者の25%で認め得ます。この変化は爪床部の毛細血管数の減少と結合織の増加により起こると考えられます。
5. 重症腎障害ではhalf-and-half nailsを認めます。これは爪半月の消褪、爪床の遠位部の褐色調化、近位部の白色調化の外観を呈します。
この何回かで見てきたように爪の変化は見逃されがちなのですが、実は全身疾患を反映している場合もあり、注意深い観察を要するといえそうです。