残りの1冊。
「 箱男 」 安部公房
幻想サスペンス風? 人間ドラマ。
ダンボールを被って 町を放浪する “箱男” として 3年間生きてきた、元カメラマンの男。
ある日、謎の男から 空気銃で撃たれて負傷した箱男は、近づいてきた 女性から お金を渡されて 病院の場所を教えられる。
痛みに耐えきれず 箱男が「 箱 」を脱ぎ 病院へ行くと そこの
医者が “空気銃を撃った男” で、看護婦が “お金をくれた女性” であった。
看護婦は 治療が終わったあと 箱男の元を訪れ 5万円と共に
「 箱を破り捨てて 」との手紙を置いていくが……。
「 失踪三部作 」のうち『 砂の女 』『 他人の顔 』は読んだので 次は『 燃えつきた地図 』の予定だったけど、
映画『 箱男 』(24年)が 公開されたのを切っ掛けに 先に コッチを読んでみる事に。
でしたが、例によって 延び延びになり、放送直前のタイミングで よくやく手に取る形になりました。
内容は なんとく『 電波少年 』の企画「 箱男 」や 柞刈湯葉の
短篇小説『 令和二年の箱男 』※ から「 箱男が 町をさまよう 」話だと思っていたんですが、
( ※『 まず牛を球とします。 』に収録 )
最初の「 箱の作り方 」や 次の「 Aが箱男になった話 」の後、
上記「 あらすじ 」の流れを経て 箱男、医者、看護婦の「 三角関係 」の展開と、思っていたのと だいぶ違う 流れでしたね。
始めは 少々 戸惑ったんですが、意図がわからない 看護婦の
ミステリアスな雰囲気は なかなか良く、
中盤頃からの 箱男の「 妄想シミュレーション 」(?)による
「 箱男 対 医者 」( 妄想なのに 医者が 手ごわい… ) からの
「 箱男は誰か 」「 ニセ医者 」「 箱男を利用した完全犯罪 」
と「 偽り 」を巡る?「( 幻想?)サスペンス・ミステリー 」の面も出て来て 少しずつ面白くなってきました。
ただ、後半は「 現実と 妄想が入り組む? 」事もあってか 読むのに 難儀しました。
「 箱( 箱男 )の解釈 」は 人それぞれだと 思いますが、
“一方的に見る”「 匿名性 」や「 安心感 」から「 ネット 」を
想起する人が 多そうですね。
時に 性的でもある「 見る 」「 見られる 」や、時折 垣間見られる「 アブノーマル( 窃視 )」要素も 興味深く、
「 “見る” 事の加虐性( 攻撃性 )」が 強く感じられるところも 面白いです。
( ここらへんは『 他人の顔 』と チョットつながる? )
それなのに 当の女性たちは 特に気にしていない様子で、
そこから 著者の抱える「 女性への畏怖 」も 少し感じました。
箱を被った( 頭隠して 尻隠さずの )医者への「 浣腸 」も、
「 願望 」と「 羞恥 」の “折り合い” を付けているように見え
実に深い(?)描写に思えましたよ。
最後は「 看護婦と共に ハダカになり 病院( デカい箱 )」で
暮らしますが、
最終的に 看護婦が「 家を出て 」いて(?)ちょっと ホッとしましたね。
ですが、一方の 箱男は「 内へ 内へ… 」と、ますます 女性から( 社会から )遠ざかる?事になっていて 切なくもありました。
「 テーマ 」みたいのは 一緒に付いてきた「 2ページの冊子 」を読む限りでは「 最終的には 国に帰属する 」をさらに進めた、
「 自身への帰属 」を書きたかったっぽいです。
箱男に「 法律が適用されない 」みたいだったのは「 箱男が 国に属していない 」からだったんですね。
あと「 犯人 」云々なんて 記述もあったので「 犯人的なモノ 」を 考えてみると、
それは 唯一 “箱男ではない”( 箱男に 憧れない、嫌っている )看護婦 = 女性 でしょうか。
「 見られる事に怯える 」箱男( 名前通り “男” )と違い、
看護婦は「 モデル 」もやるなど「 見られても 平気 」みたいでしたし。
もしくは「 全ての 箱男は ニセ箱男 」だとするならば、“箱男” 自体が 犯人ってことになるかも。
そっちのほうが しっくりくるかな。
ちなみに 一番 好きな場面は「 ニセ医者の言い分( 言い訳 )」のくだりですね。
あと「 切手 」のくだりは 安部公房らしくはあったけど、よく
わからなかったです。
という事で 難解ではありましたが『 他人の顔 』よりは
「 エンタメ性 」が あったので まあまあ “愉しく” 読めました。