残りの「 本格ミステリー 」2冊。
「 月灯館殺人事件 」 北山猛邦
本格ミステリー。
「 星海社 FICTION 」レーベル内 レーベル(?)
「 令和の新本格カーニバル 」作品。
雪深い場所にある「 館 」で暮らす「 本格ミステリの神 」と
謳われている 天神人( てんじん ひとし )は 育成のために 若手ミステリ作家に部屋を貸し出しているという。
一冊 出版したきり 2年以上 次作を書けずにいる、本格ミステリ作家の 孤木雨論( こぎ うろん )は、編集者の勧めで その館、
「 月灯館 」での執筆生活に参加する事に。
だが、館が雪で覆われ始めた 12月22日「 冬至の食事会 」の席で突如、「 本格ミステリ作家における 七つの大罪 」と称したテープが流れだし、
現在 館で暮らす 天神、孤木含めた 7人の作家全員を “堕天使” として名指しする。
その翌日、「 首を切断された 」天神人の死体が発見されるが、現場となった食堂は「 密室 」状態でもあった。
孤木は 天神の息子、ノアの “ワトソン役” として 事件の捜査に
あたるが 第二の「 密室殺人 」が起きてしまい……。
「 雪に 閉ざされた館で 起こる殺人 」という オーソドックスな内容を思わせる「 本格ミステリー 」。
「 本格を書けなくなった ミステリ作家 」
「 若手ミステリ作家が集う 深い雪で閉ざされる 館 」
「 “本格ミステリの神” と呼ばれた男と その息子 」
…と、 “本格ミステリー” マシマシの舞台設定なんですが、
殺人も「 首切断 & 密室 」「 如何にもな現場 」と ケレン味が強めで 全体的に ミステリーの雰囲気が イイんですよね。
「 トリック 」も よく出来ていたと思うし( 最後のヤツは 少し気になったが… )、さらに わかりやすく「 図解 」もしているので 納得感もありました。
ちなみに、トリックのひとつは 著者の『「瑠璃城」殺人事件 』から そのまま持ってきたヤツっぽいです。
( なので 気になるなら『 瑠璃城 』を先に読んでおこう )
煽っていた最後の “アレ” に関しては 若干、アンフェア気味だったような。
まあ、違和感を覚えながらも すっかり忘れていた 自分が 悪いのかもしれませんけど…。
( 軽く 確認してみると フェアにも 書いていたけど
納得しづらいところもあった )
それでも 全体を通して ある種の「 アンチ・ミステリー感 」もあった(?)ので 仮に そうであっても 個人的には問題ナシ。
その他、「 創作 」や「 トリック既出 」の苦悩や アレコレや、
「 本格読者 」を巻き込む形で「 本格ミステリーの未来 」を語っている(?)ところも 個人的には 評価したいですね。
ただ、個人的には 面白く読めたけど「 話 」自体が「 本格ミステリー云々… 」という内容なため、「 本格 」そのものの背景に興味がないと すこし退屈かも。
「 毒入り火刑法廷 」 榊林銘
特殊設定・本格&法廷ミステリー。
「 魔女 」が関わった事件の際に行われる裁判「 火刑法廷 」で
争われるのは 真相ではなく「 魔女か否か 」。
そして「 魔女 」との審判が下れば 即「 火炙り 」に…。
┇
「 ヴェナブルズ邸 」で起こった ヴェナブルズ氏の 転落死。
その時、邸の「 空き部屋 」で目撃された 魔女の少女・カラーは その状況から魔女と疑われ「 火刑法廷 」の被告人に。
カラーを弁護する、男装の弁護人・“毒羊”( どくひつじ )と
審問官・オペラの 議論を見守る 少女・エリス は、
カラーを助けて 匿い、さらには あの時に「 何があったか 」を知る人物であった……。
ちょい展開バレしてます。
本作は「 特殊設定 」&「 多重推理 」の 法廷モノ。
作中に「毒」そのものは 出てこないので タイトルの「毒入り」は 多重推理の古典『 毒入りチョコレート事件 』に掛けているのかな。
(『 毒チョコ 』は むか~し読んでるけど、覚えてない )
特殊設定である「 魔女ができること 」としては、
「 箒に乗って飛行する事が出来る 」
「 猫に変身する事ができる 」
「 他者の感情を操ることができる 」
の3つがあり、特に「飛行」と「猫化」が多く使われてました。
内容の方は、てっきり「 ヴェナブルズ転落死 」で 最後まで 引っ張って行くんだと 思っていたら ほどなくして結審。
最終的には「 3つの火刑法廷 」が描かれてましたね。
ちなみに、
2つ目が「 殺人現場から 猫に変身して逃亡 」※のドタバタ劇、
( ※『 獄門島 』オマージュあり? )
3つ目が「 病院と 隣家をまたいだ 暴行&殺人事件 」※です。
( ※ 時計の狂いの有無、銃の投棄タイミング が ポイントに )
本題の「 法廷 」の方はというと、「 魔女か否か 」が争点な
ため、議論や 陪審員の状況によって「仮定」も コロコロ反転、
さらに「 屁理屈 上等 」※ で 事件自体も いろいろと要素が多いため 結構 ややこしいです。
( ※ ここらへんは 井上真偽 の
『 その可能性はすでに考えた 』っぽかった )
しかも これが3つあるので 暑さで ユデ上がった頭には 結構
堪えましたね。
というか、正直に言えば 消化しきれてません…。
あと「 多重推理 」を作り出すための “都合のいい状況” 設定も
強めだったけど、
個人的には「 多重推理 」という事で そこは あまり気になりませんでした。
「 話 」の方は「 シスターフッド 」強め。
カラーや エリス、毒羊 など「 魔女側 」は すべて女性なので、
対する「 審問官側 」には 男性を配しそうなものですが、
こちらも 審問官と 警部、共に 女性となっています。
主要キャラが 全員 女性なため、なんだか「 美少女アニメ 」っぽい雰囲気がありましたね。
そんな感じでは あるんですが、各々に 焦点を当てる形で描かれる「 ドラマ部分 」も 多層的で 思いのほか 良かったですよ。
あと、ちょっと エグめの展開があったり「 真相 」がアレだったりと 予想外に “苦い味わい” でもありました。
もしかしたら この苦味が「 毒 」だったのかも?
そのほか「 話・事件 」の繋ぎ方も 少々 作為的な感じは あったものの上手かったですね。
という事で、個人的には 全体的に良く出来た「 本格 」だとは
思うんだけど( 実際 面白く読めた )、上記したとおり 情報量が多くて 結構 疲れました。