残りの「 幻想怪奇 」系2冊。
「 深泥丘奇談・続々 」 綾辻行人
『 深泥丘奇談 』、 続編『 深泥丘奇談・続(ぞく)』から
続く、「 幻想・怪奇譚 」の 連作短編シリーズの 第3弾。
「 深泥丘 」は「 みどろがおか 」と読みます。
ちなみに『 ~・続 』と同様に「 続々 」は「 ゾクゾクする 」に掛けてます。
「 “もうひとつ” の 京都で 妻と 猫2匹と暮らす、何故か
“記憶が朧気” な 小説家の “私” が 怪異や変異に 遭遇する… 」
という「 基本設定 」で、一応 前2作とも 繋がりがあったりもする「 全9篇 」の構成。
最初の『 深泥丘 』は( たしか )「 世界観 」には 入り込めなかったけど 普通に楽しめた 印象。
続く『 ~・続 』も「 結末 」が 惜しいのもありましたが 楽しい作品が多かったし、
「 綾辻版・クトゥルフ 」な 「世界観 」も感じられ 雰囲気も
ちゃんと 味わえましたね。
で、本書はというと、
今回で「 一応の区切り 」という事でしたが、前2作と傾向的には 同じです。
それでも「 世界観 」に どっぷり浸れたし、「 くだらない話 」もあったりで 楽しくは読めました。
「 シリーズ3作品 」を通しても 十分 楽しめたかな。
まあ「 曖昧オチ 」も 多いので( 怪奇系は こんな感じだけど )
オススメは 若干 しづらい作品ではあります。
「 タマミフル 」
深夜、車で 帰宅途中の 私は 山道で「 けけけ 」と笑う 子どもに遭遇する。
数日後、深泥丘病院で 抗インフル剤「 タマミフル 」を薦められた 私は、その副作用について 主治医の石倉に 質問するが……。
「 楳図かずお オマージュ 」の内容…という事で 調べたら
『 赤んぼ少女 』に出てくる 少女が タマミ なんですね。
話としては「 猿 」のくだりは 意外性もあって 笑えたけど、
ほかは 直球過ぎだったかな。
「 忘却と追憶 」
前に見た事がある…らしい「 奇面祭 」を見に行った 私は、
そこで「 嫌な事 」や「 忌まわしい事 」を忘れさせてしまう
「 忘却の面 」の存在を知る。
兼ねてから自身の「 記憶の曖昧さ 」に疑問を持っていた 私は 主治医の石倉に その「 面 」が「 曖昧な記憶 」の原因ではとの 仮説を 聞かせるが……。
コレだけでも 結構 不穏な話なんですが、シリーズを通して
「 記憶が覚束ない 私 」を 知っているので より強い 不穏感を
覚えるんですよ。
深泥丘らしい、ふたつの「 面 」の素材も 気色悪くて イヤな感じだったな。
という事で「 シリーズもの 」らしい内容でしたね。
「 減らない謎 」
体調管理のため 体重を減らす事にした 私。
数か月間は 順調に 体重が落ちていたが、その後は 減らなく
なる…どころか、何故か 体重が増えていき……。
「 節制しているのに 増える 体重 」の話。
このシリーズ、「 くだらない話 」も 結構あり コレもそうなんですが、
以外にも「 不条理・サスペンス色 」が濃い目だし「 真相 」も不明で 結構 ゾワっと来ましたね。
こういう「 くだらないけど 怖い 」作品は 好きだな。
「 死後の夢 」
「 夢の中 」で “事故死した” 私。
しかし「 夢 」は まだ続き、死者のまま 彷徨い歩いた 私は
「 死後の世界 」の 深泥丘病院に たどり着く。
「 くれぐれも 屋上に近づかないように。 」との 石倉医師の
助言を無視して 私は……。
「 夢をさまよう 」奇妙な話なんですが、
後半は「 もの凄く くだらない 」展開になるんですよ。
しかし、その「 くだらなさ 」が反転する「 真相 」(?)は
その ギャップによって さらに「 禁忌感 」を 増す事となり、
私も グラっと( “私” の眩暈の時の表現 )来ましたね。
コレが 一番好きかも…。
「 カンヅメ奇談 」
原稿の進捗が 思わしくないため 地元を離れ 上京し、
「F***ホテル」の一室に「 カンヅメ 」する事になった 私。
「 こういう 古いホテルには、
秘密が たくさんあるものなんだよ 」
子供の頃、京都の「 Q***ホテル 」での 大叔父の言葉が 何故か 私の 耳によみがえり……。
雰囲気は あったけど 単品だと チョット弱め。
だけど この後の作品と 併せると 内容としては まあまあ。
最後の「 蛍の導き 」は『 フェノミナ 』オマージュ?
「 海鳴り 」
「 崖に佇む 赤いコートの女性… 」の録画映像…。
┇
妻が入院し、家には 私と 猫たちだけに。
しつこく鳴く 猫たちの後を付いて行った 私は ほとんど使われてない「 和室 」に行きつく。
その和室には 何もないと思われたが 三日目の夜に……。
「 赤いコートの女性 」の録画映像が 何やら淫靡で 不気味。
その正体も 予想出来るとはいえ、2人の( 3人の?)関係性に モヤモヤが募り、読んでいて 楽しかったですね。
あの後 アレをどうしたかは 気になったけど。
( 結局「 忘れる 」んだと思うが )
「 夜泳ぐ 」
運動不足解消のため 老舗高級ホテル「 Q***ホテル 」の
「2階 」にある、会員制プールに 泳ぎに行くようになった 私。
ある日、常連2人の会話から「 4階のクラブ( プール )」の事を知った 私は 4階を探索してみる事に……。
もうひとつの「 会員制プール 」を巡る、
あと 先の『 カンヅメ奇談 』(『 海鳴り 』も? )とも繋がる
ような 怪奇譚。
「 4階のプール 」も 十分 奇妙だけど「 迷路のようなホテル 」も結構 不気味で 怪奇ムードを強く感じましたね。
「 猫密室 」
殺人現場は たくさんの猫だらけ、「 猫密室 」だった…という
「 夢 」を見た 私。
馴染の編集者から「 短篇 本格推理 」を依頼された 私は この
「 夢 」、「 猫密室 」を提案する……。
編集者と話しをしながらの「 ミステリー小説の プロット作成 」が 興味深かったし、「 逆・本格ミステリー 」的な装いもあって 面白く 読めましたね。
オチは ナンセンスで ちょっと合わなかったけど、次の ネタ元と 思えば アリかな。
「 ねこしずめ 」
妻が見た「 猫が コマの様に 回転しながら川を流れる 」夢。
「 茶柱ならぬ、猫柱か 」と 何気なしに言った 私を 妻は
「 “そんな言葉” むやみに 口にしないほうが 」と たしなめる。
石倉医師に 訊いてみたところ、今年は「 ねこしずめ 」というのがあるらしく……。
最後らしいと言えばらしい、壮大な幻想譚。
「 クトゥルフ系 + 猫 」は 独自性がありましたね。
なにも解明は されていないけど あの “猫たち” のビジュアルが壮観で ひとまず 安心は出来そうな内容。
「 人魚の石 」 田辺青蛙
連作短篇の 怪奇譚。
故郷の「 廃寺 」に帰ってきた私。
子供の頃の遊んだ記憶や 祖父、祖母との事を思い出しつつ、
寺の掃除を始めた 私は 池を掃除するため 水を抜く事に。
だが、水位が下がった池から 横たわった “真っ白な男” が現れ、さらに 立ち上がり 私を見て 祖父の名を呼ぶのだった。
その、“真っ白な男” は 自分を「 人魚 」だと言い、祖父が
この山で特殊な「 石 」を集めていた事を 私に伝える……。
「 連作短篇 」だけど 長篇みたいな感じでしたね。
「 話 」は 山寺に帰って生きた “私” と、
真っ白い人間に見える 人魚の うお太郎、祖父が集めていた
「 いろいろな特殊作用 」がある「 石 」にまつわる 内容です。
見た目が ほぼ人間で 皮肉めいた口調、さらには 普段は 全裸
( 性器 丸出し )の人魚、うお太郎( 顔は イイらしい )が キャラとして魅力的です。
何となく『 鬼太郎 』( の ねずみ男 )っぽい雰囲気を感じたので、
私が うお太郎と「 石 」に 振り回されながらも「 貧乏寺 」を
立て直す… みたいな「 怪奇な喜悲劇 」が 繰り広げられるのかと思いきや、前半から
「 かつて 山に ○○〇がいた 」とか「 私が知らない祖父 」の話が出て来て 薄っすら暗雲が漂うんですよ。
「 羽 」はあるけど 見た目は人間な 天狗も シレっと出て来るんですが、
こちらも 化け物らしい「 押しの強さ 」が チョット恐ろしく、
私を 見下している 兄が出て来る「 話 」でも「 残酷描写 」があったりで 早々に 軌道修正。
「 石 」に関しても 祖父の事があるので「 記憶の石 」が えらく不気味だったりするんですよね。
展開自体も あっちこっち行ったりで 掴みどころがなく、
「 石の声を聴く 能力 」も 思ったよりも アッサリめで、
中盤なんか「 窃盗 」の展開になったりと 中身は あるのに 輪郭は ボンヤリ気味。
終盤、ボヤけていた 現(うつつ)が さらに ボヤけるような
「 体験 」を経て たどり着いた真実( の様なモノ )もまた、
水面に 映った映像のようで、私同様 こちらも 心もとなかったですね。