ミステリー2冊「 遠巷説百物語 」、「 ベーシックインカム 」 | berobe 映画雑感

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「 映画 」と「 本 」の感想

今月は

 

時代劇&エンタメ・連作ミステリー

「 遠巷説百物語 」  京極夏彦

 

 

SF・ミステリーの 短篇集

「 ベーシックインカム 」  井上真偽

 

 

連作本格ミステリー

「 友達以上探偵未満 」  麻耶雄嵩

 

 

本格ミステリー

「 神薙虚無最後の事件 」  紺野天龍

 

 

の 4冊。

 

 

まずは 最初の2冊から。

 

 

「 遠巷説百物語 」  京極夏彦

 

『 巷説百物語 』シリーズ、時代劇&エンタメ・ミステリー。

 

連作短篇で 全6編。

 

 

 

「 昔、あったずもな 」

 

江戸末期の遠野。

 

「 盛岡藩 筆頭家老 」でもある 遠野南部家当主 から、

「 市井の動向を探り 報告する 」密命を受けた

宇夫方祥五郎( うぶかた・しょうごろう )。

 

“商い”は まったく駄目だが、“世事に通じる” 乙蔵(おつぞう)

から「 奇怪な 話・噂 」を聞いた 宇夫方は その「 怪事変事 」の真相を探る。

 

その裏には……。

 

 

 

みたいのが 基本設定。

 

それと「 各編 」全て、視点( 語り手 )を それぞれ変えた、

 

「 譚 」「 咄 」「 噺 」「 話 」( すべて “はなし” と読む )の 4章 構成になってるんですが、

 

最初の「 譚 」だけは 本筋と 直接関係ない お婆さん?による

「 化け物 話 」になってます。

 

 

まずは「 シリーズ既読 」の人向けの感想から。

 

「 いつもの『 巷説 』」でしたね。

 

あと、年数が経っており 結構 忘れていましたが、問題なかったです。

 

 

次、「 シリーズ未読 」の人向け。

 

内容( ジャンル )としては

一応、「 時代劇&エンタメ・ミステリー 」で いいのかな。

 

タイトルからは 予想が付きにくいですが、

 

「 深刻な出来事を( 時に 強引に )“丸く 収める” 」

( 少々 歪だが… )みたいな話ですね。

 

 

私は “慣れ” ましたが、よくよく考えれば( 考えなくても? )

 

相変わらず「 無茶めな話 」でもあるので

個人的には “ノレない人が多そう” な印象を持ってます。

 

あと 実は「 シンプルな話 」だし、

 

基本「 語り手の心情 」と「 対話 」で 話が進むので

場面描写も 少なく、「 エンタメ 」としても 少々弱めだと思いますね。

 

「 シリーズ 」でみれば 私としても「 無茶が少なめ 」(?)な

一作目の『 巷説百物語 』が 一番 好きですし。

 

そういう意味では「 各編 」、最初の「 譚 」=「 化け物 話 」が 一番 楽しかったかな。

 

 

 

「 歯黒べったり 」

 

乙蔵から 菓子を売る「 山田屋 」主人息子の「 体調不良 」や、「 奥座敷に 籠りきりの 」、「 菓子の味が落ちた 」などの話を聞いた 宇夫方

 

さらに 林の中に現れる “お歯黒の女” の話を聞いた 宇夫方

目撃者の一人、大久保平十郎に 話を聴きに行くが……。

 

 

以外と「 サイコパス度 高め 」な内容で 結構 楽しく読めたの

かな。

 

あと、無茶ながらも 上手くまとまった感のある「 話 」でしたね。

 

 

 

「 磯撫( いそなで )」

 

乙蔵は 山の中で 大魚を目撃したという。

 

一方、村では「 ある男が 一手に 遠野の米を取り扱う 」事になったため、不満が高まっていた……。

 

 

「 米の “中抜き” 」と 話自体は 面白いんだけど、

かなり「 無茶度 高め 」な内容。

 

それでも「 磯撫の登場 」は 盛り上がりましたけどね。

 

あと、「 譚 」の “人食い大魚”( 磯撫 )の「 あっさりオチ 」

もイイ。

 

 

 

「 波山( ばさん )」

 

女性が 数日 行方不明になり、その後 家の近くで

「 上半身を焼かれた姿 」で 発見される…という事件が

ひと月の間に 三件 起こる。

 

乙蔵は 最初の被害者が 伊予( 四国 )から来た

鳳凰屋(おおとりや)」の下女 だった事から、

 

伊予の “火を吹く大鳥”・波山を「 鳳凰屋 」が連れてきたと

怪しむ……。

 

 

「 猟奇殺人 」っぽい雰囲気で 面白かったし、

「 動機 」も良かったけど( 好きなヤツ )、少し 強引気味

だったのが ちょっと 残念。

 

 

 

「 鬼熊( おにくま )」

 

小正月。

 

乙蔵から「 隠し女郎屋 」の噂と「 里に現れた 大熊 」の話を

聞いた 宇夫方

 

一方、一昨年に「 が行方不明 」になっている

医者の洪庵( こうあん )は 雪の中に うずくまっている 犬八

保護。

その 犬八雪女を 見たというが……。

 

 

これは「 鮭 」のくだりが 活きていた、「 洪庵のエピソード 」が 良かったですね。

 

あと、納得感も 意外とあったかも。

 

 

 

「 恙虫( つつがむし )」

 

ついに 勘当されてしまった 乙蔵は 新たな商売の元手を得る

ため「 隠し金 探し 」を始めるという。

 

その 乙蔵から 勘定方の組屋敷が「 戸締め 」( 閉鎖、隔離 )

されているとの話を聞いた 宇夫方

 

乙蔵は「 流行病( はやりやまい )」ではないかと言うが……。

 

 

「 組屋敷の隔離 」、「 真夜中に上る煙 」と 不穏な空気が漂う話。

 

「 乙蔵の勘当 」も 地味に ショック…。

 

「 人死に 」も出るし、切迫感が高まる展開も見せるしで

結構 盛り上がったけど、

 

意外と あっさり 決着がついて 少々拍子抜けの感も。

 

 

 

「 出世螺( しゅっせほら )」

 

何千年も生きた 法螺貝が 山の地中で「 龍になり 昇天する 」事を「 宝螺(ほら)抜け 」という。

 

その「 宝螺 抜け 」の噂が 黒い衣の易者により 流されている

というが……。

 

 

『 恙虫 』の続きっぽい “きな臭い” 話で、

 

まさかの「 乙蔵の話 」もあったりと 最終話らしい 内容でしたね。

 

宇夫方乙蔵の「 友情譚 」として 心に来る話だったな。

 

 

 

という事で

 

先に書いたように 読み物としては 各話 最初の「 譚 」=

「 化け物 話 」が 面白かったです。

 

全て「 3ページ 」なので これだけ サクッと読んでもいいかも…?

 

「 ミステリー 」としての面白さは どれも 同じくらい…かな。

 

「 サスペンス 」としては『 波山 』『 恙虫 』あたりが

面白かったですね。

 

 

 

 

「 ベーシックインカム 」  井上真偽

 

SF・ミステリー短篇集、全5編。

 

 

著者は「 本格ミステリー 」も 書いていますが、

本作においては「 本格の要素があれば いいな 」くらいの気持ちで 読みました。

 

内容としては「 テクノロジー 」、「 技術革新 」を テーマに

した、「 SF・ドラマ & ミステリー 」な感じでしょうか。

 

 

気になる「 本格 」要素ですが、

 

話によって( 読む人によって )“濃い薄い” はあると 思いますが

個人的には 意外と ありましたね。

 

詳しくは 個別に。

 

 

 

「 言の葉の子ら 」

 

日本語を学ぶため 幼稚園で 働いている エレナは、

他の保育士から「 言語マニア 」と 言われるほど「 言語知識 」が豊富であった。

 

園児たちに 大人気でもある エレナは、ある園児

「 乱暴な態度 」の理由・原因を探るよう 頼まれるが……。

 

 

傾向がわからない( と言っても 表紙に 少し書いてますが )

「 最初の話 」って事もあり、一番 驚きましたね。

 

しかも、

 

「 ちょっとした “違和感”は 感じたけど 推理には 活かせず…」

の パターンで 少し悔しさも ありました。

 

そんなわけで「 意外と 本格度 “高め” だな 」なんて 思ったのですが、

 

本作が「 日本推理作家協会賞 短編部門 候補作 」だと 読後に

わかり納得。

 

( というか、「 カバー裏 」に 書いてあった )

 

 

 

「 存在しないゼロ 」

 

ペンションに泊まる、生活安全部の刑事、高杉と その妻と娘

 

高杉は ひょんなことから「 虫で解決した事件 」を オーナー妻子に 語ることになり…

豪雪地帯の限界集落に 取り残された 3人家族

家族は春に救出されるが、父親だけが遺体で 発見される。

その遺体や 現場には 奇妙な点があり……。

 

 

「 二転三転する事件の様相 」は 読んでいて楽しかったです。

 

この作品に限らず、構成が 上手いんですよね。

 

ただ、最後のオチは 他の作品より、少し弱いかな。

 

 

 

「 もう一度、君と 」

 

夫婦で「 人工現実体験装置 」( VR )の 鑑賞型ソフト、

怪談・『 雪乃下飴乞幽霊 』を鑑賞した後、が失踪する。

 

は「 妻の失踪理由 」が「 飴乞幽霊 」の映像にあると思い

その「 VR世界 」に入り込むが……。

 

 

VR・鑑賞型ソフト「 飴乞幽霊 」の話が 切ない。

 

そこから浮かぶ「 人の心 」と その「 揺らぎ 」の

「 人間ドラマ 」も なかなか切実で しんみりしちゃいましたね。

 

「 本格 」要素は 話的には まあまあ上手く ハマってはいた

( 面白かった )けど 少々キビしめな印象。

 

 

 

「 目に見えない愛情 」

 

“生まれつき目が見えない” を持つ 父親

日本では 認可されていない「 人工視覚 」の情報を知る。

 

父親は 伝手を頼りに の海外での「 人工視覚 」の手術まで

漕ぎつけるが、その手術によって「 紫外線 」までもが見える

ようになる事に 不安を覚える。

 

そこに……。

 

 

シンプルな「 医療系・SF の 父娘ドラマ 」…と 思いきや、

以外にも「 本格 」でしたよ…。

 

コレには まったく気づかずで かなり 悔しい。

 

「 本格の傾向 」?を 超ざっくり言えば

二度読み 」系( ← 傾向バレ?なんで 一応、白字 )かな。

 

 

 

「 ベーシックインカム 」

 

「 技術革新をテーマにした小説 」を書く女性の元を 教授

訪れる。

 

教授は 教え子でもあったらしい その女性

「 論文でも題材にした “ベーシックインカム”を なぜ無視する 」と問う。

 

その後の「 ベーシックインカム議論 」で出てきた

「 窃盗罪がなくなる 」との話の後、唐突に 教授

「 研究室の金庫から 預金通帳が盗まれた 」話をし始める……。

 

 

「 書下ろし 」作品。

 

 

先の4編は「 技術革新 」が テーマでしたが、

 

こちらは「 技術革新による 社会の変化・変革 」と、

ちょっと毛色が異なる内容。

 

( ちゃんと 技術も “絡んで” きますが )

 

「 社会派 」の要素が 強めなんですが、

 

警戒する女性教授の思惑を巡る「 心理 サスペンス 」の展開は 意外と スリリング なんですよね。

 

そんな「 社会派 議論 」のなか、

いきなり「 通帳の盗難事件( の話 )」が出てくるんですが、

 

「 厳重なセキュリティー 」だったり、

研究室周りの「 見取り図 」が載っていたりと、

 

「 本格ムード 」も 結構 あったため、地味な事件ながらも

気分的には 高まりました。

 

その「 本格 」部分としては「 無人 」のヤツが これもまた、

地味ながらも 良かったですね。

 

あと「 書下ろし 」らしい ちょっとした……も。

 

それでも 全体的に インパクトとしては “弱め” かな。

 

まあ、やるせない「 真相 」が メインって事で 気にはなりませんでしたけど。

 

 

 

という事で「 SF・人間ドラマ( ミステリー)」としては

どれも 面白く読めました。

 

「 本格 」としては

『 言の葉の子ら 』『 目に見えない愛情 』が 良かったです。

 

ページ数も “少な目” なので オススメ度も高いかな。