ミステリー2冊「 老虎残夢 」、「 パラレル・フィクショナル 」 | berobe 映画雑感

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「 映画 」と「 本 」の感想

今月 読んだのは

 

武侠&歴史・本格ミステリー

「 老虎残夢 」  桃野雑派

 

 

特殊設定・ミステリー

「 パラレル・フィクショナル 」  西澤保彦

 

 

“奇妙な味”系・アンソロジーの 第2弾

「 不思議の扉 時間がいっぱい 」

 

著: 筒井康隆、 大槻ケンヂ、 フィツジェラルド 他

編: 大森望

 

の3冊。

 

まずは「 ミステリー 」2冊 から。

 

 

 

「 老虎残夢 」  桃野雑派

 

歴史&武侠( 特殊設定 )・本格ミステリー。

 

「 江戸川乱歩賞 」受賞作品。

 

 

 

冬の宋国(南宋)。

 

武人の師父・泰隆(たいりゅう)から

「 三人の武侠に 奥義 を授ける 」事を聞かされた、

弟子の 紫苑(しおん)。

 

だが、その中に 紫苑は入っていなかった。

 

その 三人の武侠、“海幇”( 海賊を狩る 海賊 )文和(ぶんわ)、

“飯店を営む” 祥纏(しょうてん)、“仏僧” 為問(いもん)が

 

泰隆たちの元を訪れるが、その夜は 食事だけで「 話 」は

明日に持ち越される事に。

 

だが 翌朝、泰隆が寝泊まりする、屋敷から離れた 湖に建つ

楼閣「 八仙楼 」で 泰隆の「 毒殺死体 」が発見される。

 

近くに「 毒が入った杯 」が転がっており、泰隆も 気力を操る

「 内攻(ないこう)」を使い「 解毒 」が出来るため 自殺と

思われたが、

 

その腹部に「 匕首(ひしゅ)」が 刺さっていたため 殺人の疑いが浮上。

 

しかし、雪が残る「 湖の桟橋 」までには、朝食を持って行った

泰隆の養女、恋華(れんか)の 足跡しか残っておらず、

 

「 楼閣 」へと渡る船も「 楼閣 」側に付けられており、

“水の上を歩く”「 軽攻(けいこう)」が使える者も 紫苑 以外には いなかった。

 

師父を殺された 紫苑は 犯人を討つため、唯一の船を燃やすが……。 

 

 

という、まさかの「 武侠・本格 」

 

しかも「 孤島密室 」で、おまけに「 百合 」要素もあったりします。

 

この「 泰隆の変死 」「 仇を討ちたい 弟子の紫苑 」

「 招かれた 三人の武侠 」「 奥義とは?」「 紫苑と恋華 」が 絡んでくる 展開になります。

 

 

てっきり “身体的能力が高い” という「 特殊設定 」かと思って

いたんですが、

 

“気を操る”「 内攻 」が それでしたね。

 

あと、「 武侠 」って事で 霞隆一っぽい「 アクション系 」かとも思ったのですが、そこらへんは 思ったより 少な目。

 

 

時代的には「 1200年 」頃の設定※で、舞台である 宋国

ほか、蒙古(モンゴル)とか、金国も 出てきます。

 

 

( ※ たまたま『 ヤンマガWeb 』で 無料だった『 ゾミア 』を読んでみたら、ちょうど その時代の話だった )

 

 

「 内容 」としても 当時の「 宋国の国情 」の話が 多く出てくるので「 歴史 」要素が 強めな印象。

 

 

で、メインの「(本格)ミステリー 」ですが、

 

いろいろと出来る「 内攻・軽攻 」の説明が 若干 弱い。

 

あと、“いろいろと出来る”( 出来そうな )のに そっち方面

( 推察・考察 )には 向かわず、

 

「 なんか 気になる 」設定・描写も あったのに 何もなかったりで、かなり 拍子抜けでしたね。

 

「 真相 」も「 そっちか… 」でしたし、納得感も 低め。

 

せっかくの「 武侠 」設定なんだから、最後は 戦ってほしかったし、

 

「 ファンタジック 」な設定なんだから、もっと 突飛な推理を

披露してもらいたかったですね。

 

選考委員の 一人、貫井徳郎 の「 伏線不足 」、

「 最後に がっかり 」には( 加筆してると思うけど )納得。

 

 

とは言うものの、時代背景は 興味深かったし、

歴史を絡めた 人物それぞれのドラマも 案外 面白く、

 

作品としては 楽しく読めたかな。

 

( 歴史に 疎いんで こういう作品は為になる )

 

 

あと、最後に載っている「 選評 」が 面白かったですね。

 

一作だけ けちょんけちょんに 言われていて 公開処刑みたいでしたけど…。

 

 

という事で「 特殊設定・ミステリー 」のみだと 少々弱め

ですが、

 

「 ミステリー& 歴史( 南宋時代 )好き 」の人は 楽しめるかも

しれません。

 

 

 

「 パラレル・フィクショナル 」  西澤保彦

 

特殊設定・ミステリー。

 

 

居酒屋を営む 久志本刻子(くしもと・ときこ)と、

 

ある複雑な事情を抱え、「 女装 」もしている、彼女の甥の

有末素央(ありすえ・もとお)。

 

ふたりには「 夢で 未来に起こる出来事を 体験する 」という

「 予知夢 」を “同時に見る”能力があった。

親戚同士が 別荘に 集まり行われた「 婚約者 お披露目会 」で、

何者かによる「 惨殺事件 」が起こる。

 

唯一、生き延びたのは 刻子だけだった。

……という、「 予知夢 」を見た ふたりは、

素央が 集まりに 参加しない 」という選択をすることで

その「 惨劇 」を回避。

 

後日、店で 刻子素央は「 “起きなかった” 惨殺事件 」に

ついて検証を始めるが……。

 

 

前に 読んだ『 夢魔の牢獄 』「 他者の視点で見る、過去 」の設定でしたが、今作も「 視点 」系でしたね。

 

『 夢魔の牢獄 』の方は「 下世話な話 」自体は 面白かったんだけど「 エロ描写 」が とても つまらなく、そこの場面で かなり ゲンナリ したんですが、

 

本作は「 少々複雑な 人間関係 」( いとこ、義父 など )では あったし、「 少々 下世話 」な展開も あったものの、

 

ヘタな「 エロ展開 」はなかったため、特に 引っかかる事なく 読めました。

 

でも、一応 ドラマに絡んでくるとはいえ、

 

「 女装 」とか「 古い価値観 」とか「 今っぽさの 強調 」は

気になったかな。

 

 

あと、基本「 ミステリー 」では ありますが、

個人的には「 サスペンス 」の方を 強く感じましたね。

 

それと、男女の「 機微 」、「 想い 」や「 愛憎 」という

「 恋愛 」の話でもあるのかな。

 

 

ちなみに「 本格 」としては「 伏線 」自体は 結構あるものの、

 

個人的には「 仕掛け 」というよりは

「 ドラマ的な演出 」の面が 強く 出ていると 感じましたね。

 

 

構成としては「 全3章 」に分かれており、「 第1章 」に

あたる「 PARACT1 」では「 人物紹介 & 予知夢の説明 」と、

 

「 お披露目会の 前半 」(「 予知夢 」の インターバル )までの場面。

 

親戚である、久志本忽那有末の関係性が 少々 メンド臭く

( 一応「 相関図 」あり )、

 

いわゆる「 説明パート 」でもあるので 読む上での ちょっと

した ハードルになる( 退屈 )かもしれません。

 

ですが「 PARACT2 」での「 “起きなかった” 惨殺事件 」の

本格的な検証( 犯人、その他 )の展開から

 

「 ミステリー色 」が強く出てくるので 少しづつ 面白くなってきますよ。

 

ふたりの視点によって「 惨殺事件 」も語られますし。

 

実は あっさり…なんですが、それが却って

その後の展開( 第3章 )に 興味を覚える形になっているし、

 

「 意外な展開 」も見せたりもするので、気分的には アガるんですよね。

 

とはいえ、「 真相(顛末)」としては 著者らしかったけど、
思ったほど ガツンとは こなかったかな。

 

 


という事で、個人的には こちらも「 本格 」としては ちょっと薄味気味の作品でした。

 

でも、内容としては 普通に面白かったです。