自然が創ったこの小さく精妙な生物分子機械が働くしくみを知りたいと思い、1個のモーター、つまり1個の分子の動きの観察から始めた。膜に埋まってはたらくFoモーターの取り扱いは非常に難しいので、単離したF1モーター(図2)を中心に観察した。 | | 図2:F1モーターのかたち | | | αサブユニットが3つ、βサブユニットが3つ交互に並んでシリンダーのような形をとり、その中に回転子のγサブユニットが入り込んでいる。 |  | 激しいブラウン運動(註5)を抑えるために、F1をガラス基盤に固定し、その小さな回転運動を見やすくするための長い目印(蛍光性の繊維タンパク質やプラスティックビーズ)を回転子γサブユニットに接続させる(図3)。その後、F1の基質であるATPを水溶液に添加すると、くるくると目印が回る様子を普通の光学顕微鏡で観察できる( QuickTime方式:244K)。 | | 図3:F1モーターに目印をつける |  | | F1モーターをガラスに固定し、回転子γサブユニットと目印の蛍光性繊維タンパク質はストレプトアビジンをのりとしてつけた。 |  | こうして、回転速度、水の粘度、目印の長さから求められる回転に必要な力(回転トルク)は、負荷やATP濃度によらず40pNnmと一定であり、荷の重さに関係なく一定の力ではたらくことがわかった。また、ATPの濃度を薄くしていくことによって、ATPが結合する度に120°づつ回転することが観察できた(図4)。そして、回転子γサブユニットに接続した目印を検出できる限界まで小さくして回転の最大速度を測定したところ、室温で130Hzであった。いずれも1つの分子を観察したからこそわかったことである。 | | 図4:120°づつ回転するF1モーター |  | ATPの濃度がとても薄いときにはATPはたまにしかやってこない。ATPを結合して加水分解するときに反時計回りに120°回転した後は次のATPがくるまで止まっている。
右下の図は顕微鏡下のF1モーターを観察するときに、蛍光性繊維タンパク質の一番輝いているところが、どこにあったのかを時間を追って示したもの。120°ごとに止まりやすいことがわかる。
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