☆   福岡伸一氏の生命浮遊

   アフリカの飢餓地域で見いだされた、
   栄養失調症状である、  クワシオコア。

    手足が、 ガリガリに痩せているにも関わらずに、 お腹が、ぽっこりと膨れてくる。

  タンパク質が欠乏しているにもかかわらず、
   炭水化物    ≒     糖質   ➕    食物繊維     、
    への摂取が続くと、 
    体内の動的平衡が乱れ、 肝臓が勘違いして、      脂肪を蓄えてしまうのだ。

   肝臓が肥大するから、お腹が膨れる。

      しかし、  この、クワシオコア、 
   単に、  カロリーの過多、 と、
   タンパク質の欠乏、  という、
  単純な図式だけでは、 説明できない、
  ことが、 わかってきた。

      研究者たちは、 
   アフリカの一卵性双生児に着目した。

    同じ遺伝子らを持ち、 同じ環境に育ち、
   同じ栄養状態にあるのに、  
   一方は、  健康性を成し、 
   他方は、  クワシオコワ  、 を発生していた。

     一体、何が違うのだろうか。

     研究者たちは、   
   その、 腸内細菌に差があることを見つけた。
 
    発症した子らの腸内細菌たちは、  
  十分に、繁茂していなかったのだ。

   外的な環境が同じでも、  内的環境、つまり、     消化管内の状況が、 異なっていたのだ。

     腸内細菌が、 ちゃんとしていれば、
   たとえ、 貧しい食材であっても、
  それを代謝し、 栄養素に変えて、
  宿主を助けてくれるのだ。

    人間が、  タンパク質を食べなければならないのは、 タンパク質の構成要素である、
   アミノ酸たちを、 自前で、 作り出すだけの、
   代謝能力・合成能力を持っていないからだ。

    20種類がある、  アミノ酸たちの中には、
    自分の体内で作れる、 アミノ酸もあるが、
    必須 アミノ酸  、  と呼ばれる、
   フェニルアラニン、  ロイシン、 バリン、
  イソロイシン、 スレオニン、 ヒスチジン、
  トリプトファン、 リジン、 メチオニン、は、      作る事が、 できない

   (   これは、  生物学や栄養学を学ぶ上で、
  必須の暗記事項なので、    私たちは、
  「   風呂場椅子、ひとりじめ  」 、  という、
  語呂合わせで覚えた    ) 。

    だから、  これらは、
   食品らから、摂取するしかない。

     腸内細菌のような微生物は、
   単純な資材
   (     たとえば、   炭水化物といった、 糖質、  と、    窒素源である、  アンモニア    )  、
   から、   すべての、 アミノ酸たちを、
   全部を、  自前で、 作り出す、
   万能の合成能力をもっている。

      炭水化物は、  
  炭素   C 、と、    水素  H  、  と、 
   酸素   O  、  から、   できているので、
    窒素   N   、  を含む、
   アミノ酸、 を作り出すには、
   必ず、  窒素源となる物質が必要となる。

      人間は、  たとえ、  これらな、 
  資材らが、  そろっていたとしても、
   化学反応を起こすための、
   タンパク質たちから成る、    酵素    コウソ  、    を持っていないので、
   必須  アミノ酸   、 を作り出せないのだ。

     どうして、  こんなに大事な能力を、
   人は、進化の途上で失ってしまったのか。

    これは、  これで、 とても興味深い、
   生物学上の謎なのだが、
   考察は、  長くなるので、  詳しくは、
  また別の機会にのべてみたい

  (    ちょっとだけ、  サワリを言えば、
  あえて、 外部に、 必須  アミノ酸  、 
  を求めなければならない、   という、
   課題を持つことで、
    積極的に動くことを強いられた生物が、
   “動物”へと進化することになった…    )。

    人間は、   栄養価の高い食物を確保することにより、    必須  アミノ酸  、  たちを、
  安定して得ることに成功したが、
   一方で、 微生物との共生関係を維持する、
  ことによっても、  生存率を高めた。
     それが、 腸内細菌だ。

   栄養の面で、  腸内細菌の寄与は、
  どの程度で、 あるのだろうか。
     これを調べるためには、  逆の状況、
   腸内細菌がいない状態を、
   実験的に作り出してみれば、よい。

     もちろん、  人間では、実験できないので、  マウスが用いられた。
    母胎内にいる、 仔マウスの消化管には、
  まだ、 腸内細菌は、棲息していない。
    
     産道を通過し、 母乳を飲み、
   外的環境にさらされる事で、
   徐々に、  腸内細菌たちのコロニーが形成されていく。

  そこで、 帝王切開で、仔マウスを取り出し、   無菌的なドーム環境で、 
   殺菌済みの餌だけを与える事により、
  腸内細菌フリーのマウスを育ててみた
 (   フリーは、「 無い 」、 という意味  )。

    すると、  マウスは、 腸内細菌がいなくても、 生きていく事は、できた。

   しかし、   色々な異常が見られたのだ。
   腸の成長に、奇形が見られた。
   盲腸が肥大し、  腸の表面積は、  30  %   、   余り、 が、 少ない。
    心臓、肺、肝臓も、萎縮していた。

     通常は、  腸内細菌の代謝活動によって、
  供給される、  ビタミン B群 、
    納豆などに豊かにある、   ビタミン K 、
  を、 必ず補ってやらねばならなかった、 
  だけでなく、
   無菌マウスは、  生きていくために、
  普通のマウスよりも、  常に、  30 %  、
  を、 多く、
  カロリーへの摂取を必要としていた。

  つまり、  この実験結果への解釈はこうなる。

      腸内細菌たちは、  宿主が摂取した食物を、
  かすめ取るが、 それ以上に、
   宿主に対して、 貢献をなしている。

      宿主が利用できない、  繊維分、  などを、
   代謝して、  栄養分らに変え、
   それらを、  宿主に戻す。

      宿主が合成できない、  ビタミン、らや、       アミノ酸ら、 を供給する。

    これらな、 腸内細菌たちの寄与ら、が、
  なくなってしまうと、   宿主は、 その分らを、    余計に、 カロリーや、 栄養素、らを、
  摂取しなければ、ならなくなる。

   恐らく、先に挙げた双子の例もそうなのだ。
   
     ちょっとした微妙な差──それは、
   お母さんの産道を通過する順番や、
  母乳で育った期間の、わずかな長短、
   食べた物らの内容の違い──によって、
    消化管内の腸内細菌コロニーの形成に、
  差が出てしまった。

    それが、その後に、遭遇した、 
  栄養らでの不足、
  ・アンバランス環境における、
  サバイバルに差をもたらしてしまったのだ。