気候モデルと河川流量のモデルを統合した、新しいモデリングにより、 河川氾濫による、人的および物的被害が、 現在の年間平均値の数倍から10倍に増加することが示された。 地球温暖化とともに、自然災害の被害が大きくなると予測されるなかで、 われわれは、 どう対策をとればいいのか?
☆ 冒頭に述べた、 地下に避難網らを作り拡げてゆく事が、 その最も有効な対策事になる。
川の動きようらは、 千変万化だ。 雨の季節には、 流れが深く速くなり、 雨が減ると、 流れも少なく、 ゆっくりになる。 1年をずっと、完全に干上がることもあれば、 次の年には、 荒れ狂う水による氾濫が起きることもある。 ときには、 完全に姿を消し、 かつて、その川で潤いを得ていた地域が、衰退する事もある。 気候変動により、 海面の上昇に拍車がかかっていることは、 耳にすることも多いが、 それによって、 河川がどのように変わるかについては、 それほど、取り沙汰されていない。 しかし、 実際には、 河川の氾濫による被害を受けた人々の数は、 現在にては、 年間に、 約 6千万人に上る。
『Nature Climate Change』に発表された、新しい野心的な研究 、は、 温暖化が進みつつある世界における、 河川の変化らへのモデリングに取り組んでいる。 研究者たちは、 氾濫の大きさの予測をもとに、物的なリソースと人命の両方に関して、潜在的な損失らを数値化した。
研究チームは、 これまでの気候モデルと同様に、温暖化による気温上昇がどのくらいになるか、という、複数の予測シナリオらに関して、分析を行い、 それぞれについて、 将来の推定を示している。 ただし、たとえ、温暖化の進み方が最もゆるいケースであっても、状況は芳しくない。
物的損失が1,000パーセント増という予測
意外なように思えるかもしれないが、これまでの気候モデルの予測によると、温暖化が進んだ地球では、嵐を起因とした降雨の量が増える。
なぜだろうか?。 今回の研究には、参加していない、気象科学者のジューダ・コーエン氏は、 その理由を次のように説明する。
「 空気が暖かくなるほど、多くの水分を含むことができます。プールを大きくすれば、より多くの水を入れることができるのと同じです」
一般に、こうした水が雨となって降るときは、 土砂降りになり、川が増水して氾濫が起きる。
「 その後は、非常に複雑になります 」 、と、 コーエン氏は言う。
「 温暖化により、 大気の力学が変化することで、嵐の数は少なくなる可能性があります 」。
例えば、 南カリフォルニアでは、 嵐らは、 より激しくなるが、その回数は少なくなることが、複数の気候モデルらで、予測されている。
今回の新しいモデルでは、 気候モデルを河川流量のモデルと統合することにより、 激化した嵐が、世界に与える影響が考察された。 論文への執筆者のひとりで、 エクセター大学で、 気象科学の教授を務める、 リチャード・ベッツ氏は、 「 例えば、 気候モデルの出力である降水量が、 河川流量モデルの入力になります 」 、 と述べる。 「 そこから、 世界中の、主な低地にある、河川システムを流れ下る水の量が計算されます 」 。
研究チームは、 これらの結果らを、 世界の温度の上昇が、 1・5 ℃ ( パリ協定の理想目標値 )、 2 ℃、 3 ℃ 、 である、 という予測に基づいて、さらに調整した。
「 わたしたちの手法は、 これらの結果らを入手したうえで、 最大河川流量が、 氾濫の影響という点で、何を意味するのか、を分析するものでした 」 、と、 ベッツ氏は、語る。
研究チームは、 気候変動の影響で、 世界の各地の河川水量が、 周期的に急増する、 ことに伴って、 危険にさらされる恐れのある人々の数や資産への影響を、人口と開発状況のデータを付き合わせることで予測した。
予測の結果は、あまり喜ばしいものではない。人類が、世界の気温上昇を、 1・5 ℃ 未満、 に抑えることができた場合でも
( ただし、 多くの気候科学者たちは、すでに手遅れの恐れがあると考えている )、
河川氾濫による死者は、 現在の、 年間平均である、 5千7百人から、 最大で、 83 パーセント 、を増加する可能性がある。
2 ℃ の上昇の場合は、 最大で、 百34 パーセント、
3 ℃ の 場合は、 2百65 パーセント 、だ。
河川氾濫による物的損失については、現在の世界平均が、 年間で、 1千百億ドル
( 約 12兆 2千億円 ) 近くに上っている。
モデルによる予測値は、 1・5 ℃ 、 の、 気温の上昇で、 240 パーセント 、を急増し、 2 ℃ 、 では、 5百20 パーセント、 3 ℃ 、では、 千 パーセント 、 という、 驚くべき増加になる。
最後の例での試算額は、 年間に、 1兆 2千5百 億ドル
( 約 百38兆 8千億円 ) 、 に上る。
経済成長の予測を控え目にした、もう少し、 楽観的なシナリオでは、 3分の1 程度を、 少なくなる。 だが、 それでも、 見通しは、 決して、明るくない。
予測が難しくても確実なこと
ただし、 この結果は、 どの地域でも、 同じ、 というわけではない。 インフラが強固ではない開発途上国らのほうが、危険は、大きい。
人口の増加も、要因らのひとつであり、 人口が増えることによって、 より多くの人々が、 河川らの氾濫からの危険にさらされる。
こうした危険らは、 例えば、 北米よりも、 南アジアでのほうが、大きい。
一方で、 東ヨーロッパなどの地域らでは、 最大河川流量が、逆に減少する可能性がある。
「 これ以外の地域ら、 例えば、 ブラジルでは、 国の一部で、 河川氾濫の危険が高くなると予測されています。 ただし、 ブラジルは、 非常に大きな国であり、 危険な地域の多くは、 人が、あまり、いない場所です 」 、 と、 ベッツ氏は、説明する。
モデルでは、 一部の、人口への予測や、開発への予測に関しては、 動向が変わらない場合も想定されている。
今回の研究では、 河川らの氾濫の危険性らを軽減するための対策を、 人類が講じない、ことが、前提になっている。
「 ここに、重要なポイントがあります。 こうした事柄は、将来も変わらない、と、想定したとしても、 実際には、 人々が適応していくなかで、変わる可能性があるのです 」 、 と、 ベッツ氏は語る。
つまり、 河川の近くに住む人々が、自分たちを守るために、 現行よりも優れた、インフラや、警報システムを構築するかもしれない、 というわけだ。
ただし、 その場合は、 別の不確実性が生まれる。 財政的および政治的な、不確実性だ。
「 将来に関することは、 すべてが、 不確実なものですが、 この河川らの氾濫というものは、 それよりも、さらに予測が難しいものだ、 と、 考えています 」 、 と、 コーエン氏は言う。
「 研究チームが取り上げている、 気象学的な側面には、 多くの不確実性らがある、 と、 わたしは、思いますし、 その不確実性は、 経済的な不確実性により、 更に拡大します 」。