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19:妊娠中の「糖質制限」は大丈夫?妊娠初期に酷い「つわり」が生じる妊婦さんは厳しい糖質制限はNGの画像1

妊娠中に糖質制限しても大丈夫?(depositphotos.com)

   妊娠すると、    どうして、 妊娠悪阻     (  つわり  ) 、  が起こるのかについての仮説を以前の記事で書きました

(参考:『妊娠中に糖質制限して大丈夫?「つわり」のメカニズムと糖質制限の安全性』)。

 妊娠に伴って、   妊婦さんの体は、  糖質エンジンではなくて、 

  ケトン体 (  脂肪酸  ) 、   エンジンを、  主に回すようになるのではないか、 それに切り替わる時に、 つわりになるのではないか、  というのが、 私の仮説でした。

    この記事に対して、   色々な方から、 ご意見いただきました。  産婦人科の先生からは、   「   妊娠糖尿病を指摘されたので、  糖質制限したら、 血糖値が改善して、 無事に出産できた。     その後も、 糖質制限生活を続けて、  次の妊娠では、  妊娠糖尿病にならなかったし、 お産も軽かった。            でも、  つわりだけは、良くならなかった、  という人は、いますよ   」 、   という情報もいただきました。

 その後、   妊娠悪阻と、エネルギー代謝に関する論文を調べていて、 ある可能性について触れておく、必要がある、 と、考えました。

   「    妊娠中の厳しい糖質制限が、向いていない人、   するべきでない体質を持っている人がいて、 つわりの深刻さとも関連するかもしれない  」 、   という可能性です。

 あくまでも、仮説なのですが、    日本人の場合、    494人に、 1人の割合で        (     広く考えると、  92人に、 1人か、   それ以上の割合で   )  、   そういう方が、いらっしゃるかもしれません。

「脂肪酸代謝異常症」の胎児の母親に起こる妊娠中のトラブル

 前回の記事(参考:『糖質制限すると死ぬかもしれない「脂肪酸代謝異常症」の患者は3万4000人に1人の割合』)で、「生まれつき糖質制限ができない体質の人」の存在について触れました。

 日本人だと、   3万4千人に、 1人の割合で存在する、  脂肪酸代謝異常症の方々です。

    我々の細胞は、   糖質と脂肪酸の両方を、 エネルギー源にできるのですが、        脂肪酸代謝異常のある人は、   主に、 糖質しか、 エネルギーにできないので、    糖質制限をすると、    命にかかわる、  低血糖 、 になってしまいます。

     このようなメカニズムは、   脂肪酸代謝に関わる、 様々な遺伝子の変異らが、 原因となります。この中で、

  「   long-chain    3-hydroxyacyl-CoA     dehydrogenase   (    LCHAD   」、  

   という、   分子の遺伝子に、  変異が起こって、      赤ちゃんが、   この遺伝子を、  両方とも、失っている  (  ホモ変異の  ) 、  場合、や、     半分だけを失っている、  ヘテロ変異で、   体質に問題のないはずのお母さん  (  保因者   )  、  に、   妊娠中に、 重大な問題が起こる、   可能性、が、 報告されています。

   タンパク質から成る、   この酵素   コウソ   、   がないと、   長鎖脂肪酸、を、 うまく利用できません。

   そして、  LCHAD 、の、  酵素活性を失った赤ちゃんの胎盤には、 処理しきれない、 脂肪酸が多量に溜まってしまいます。

     これが、  妊娠後期のお母さんの肝臓に流れ込むと、 

   「    妊娠脂肪肝  (   Acute  fatty  liver  of  pregnancy :     AFLP    」    、   と呼ばれる、     かなり危険な、  肝機能での障害を起こします。

    この場合、    糖質制限をしていると、   症状が増悪する可能性があります   (  理論上です   )。

    

妊娠中の糖質制限が危険な人の割合は?

 この酵素、な、   LCHAD 、 の、    遺伝子の、 ある、 点突然変異    

 (    編注:    DNA、や、RNAの、 G、A、T、C、 のうちの一つの、   塩基が、  別の塩基に置き換わる、突然変異   )、    が、   ヨーロッパ系の人たちの間では、  良く、 知られています。

 たとえば、   ポーランドの北部のバルト海の沿岸に住んでいる、 カシューブ人の方々の場合、  そのヘテロ変異は、 57人に、1人、    ホモ変異の赤ちゃんができる確率は、  1万3千回の妊娠に、1回の割合となります。

   ドイツなどの近隣諸国でも、    百人に、1人は、 ヘテロ変異を持つ、 と推定されています。

     日本人では、  欧米型の、 LCHAD遺伝子の点突然変異は、見つかっていませんが、 新生児タンデムマススクリーニングでは、   195万人中の、 2人において、   この遺伝子を含む、 三頭酵素   コウソ 、 という、 遺伝子領域に変異のある、 赤ちゃん、 が、 見つかっています。

   発症する疾患は、似たものになりますが、 こちらのほうが、少し、重症です。

 その割合から逆算すると、 日本人でも、      494人に、 1人の割合で、 その遺伝子変異保因者 (  ヘテロ変異  )、 のお母さんがいる計算になります。

    ヘテロのお父さんとペアになった場合に、     ホモの子供を持つ、  可能性は、     4分の1、  なので、    97万5千回の妊娠に、 1回が、  起こりえます。

   その割合で、  「   妊娠中の糖質制限が、危険な人がいる  」 、    ということです      (  理論上です  )。

ヘテロ変異であっても、 栄養代謝機能に異常が出る

 LCHAD、の、  ヘテロ変異の人は、  妊娠していない時には、 何の症状も指摘されていません。   

   妊娠しても、  赤ちゃんが、     ホモ変異にならなければ、  妊娠脂肪肝にもならない、と、 予測されます。

 ですが、ヘテロ変異の方の代謝機能には、本当に何の異常もないのでしょうか?

 人間で見つかった遺伝子変異と同じような変異を、 マウスに導入   (    あるいは、  遺伝子を欠損   )  、   させて、 何が起こるかを研究する、「ノックアウトマウス 」、  と呼ばれる方法があります。

   LCHAD 遺伝子を含む、 三頭酵素の遺伝子についても、 ノックアウトマウスが作成され、何が起こるかを研究されています。       

    すると、 ヘテロ変異マウスでも、 肝臓に、脂肪が溜まり、   インスリン抵抗性が、上がることが、確認されました。

   つまり、   ヘテロ変異であっても、  栄養代謝機能に異常が出る、 ことが、 明らかになったのです。

 人間のヘテロ変異の方で、   肝機能や、 インスリン抵抗性に、 問題があるかどうかの報告は、まだ、ありません。

     その問題についての研究は、   これから始まるところだ、と思います。