5.鉄欠乏性貧血の治療指針
聖路加国際病院 ; 岡田 定 医師 ;
要 旨 ;
鉄欠乏性貧血への治療では、 まず、 診断を確認する.
診断特異的な所見は, 小球性貧血, 血清鉄低値ではなく、
フェリチン低値 ( < 12 ng-ml ),
総鉄結合能高値 ( ≧ 360 μg-dl )
である.
治療は、 経口鉄剤を、
第一選択とする.
鉄剤の副作用の消化器症状は,
インクレミンⓇ 、が、 最も少ない.
貧血が消失しても,
フェリチンの正常化
( 貯蔵鉄の正常化 ) 、まで、
さらに 、 3 ~ 4 カ月間を、
鉄剤を継続する.
鉄剤の中止後も、
貧血の再発がないかをチェックする.
〔日内会誌 99:1220~1225,2010〕
Key words: 鉄欠乏性貧血,
治療,鉄剤 ;
はじめに ;
鉄欠乏性貧血は,
貧血の中で、最も頻度が高い疾患である.
特に、 女性に多い.
日本人女性、の、 3,000例のへ調査
( 1891~1991 年 ) 、 では,
鉄欠乏性貧血、
が、 8・5 % ,
貧血のない、 鉄欠乏状態が、
41・4 % 、 と報告されている1).
したがって, 日本人女性の半数が、
鉄欠乏状態で,
約 5百万人が、 鉄欠乏性貧血 、
ということになる.
血液検査で、 明らかな、
鉄欠乏性貧血を示していても,
患者自身が、
貧血の症状を自覚していないことは、
少なくない.
鉄剤の使用により、
貧血が改善してはじめて,
易疲労感, 労作時息切れ、が、あった、
ことに、 気づく患者も、 多い.
このような、 本来は、
もっと元気になれるはずの、
鉄欠乏性貧血患者が、 実に、
数百万人もいるのである.
本稿では,
鉄欠乏性貧血の治療指針 ( 図 ) 、 を,
① 鉄欠乏性貧血の診断を確認する,
② 鉄欠乏を来たした、
原因の精査・治療をする,
③ 経口鉄剤 、 を開始する,
④ 治療効果と副作用を確認する,
⑤ 貧血の消失を確認する,
⑥ 貯蔵鉄の正常化を確認する,
⑦ 鉄剤の中止後に再検する,
の、 7 つのステップで、まとめたい.
1.鉄欠乏性貧血の診断を確認する ;
ステップ 1 ( 図 ) 、 は,
貧血が、 鉄欠乏性貧血である、
ことを確認することである.
注意すべきは,
小球性貧血、と、 血清鉄の低値だけで、
鉄欠乏性貧血、 と診断しないことである.
平均赤血球容積 ( MCV ) 、の、
低値で、
血清鉄低値の場合は, 表 1 に示すように,
鉄欠乏性貧血だけでなく,
二次性貧血、 あるいは、
両貧血の合併のことも多い.
鉄欠乏性貧血への診断でのポイントは,
① 小球性貧血 ( MCV < 80 ),
② 血清鉄低値・総鉄結合能高値
( TIBC ≧ 360 μg-dl ),
③ フェリチン低値
( < 12 ng-ml )、
である