【ヘルドクター・クラレのググっても出ない毒薬の手帳 第7回、タリウム/前編】 

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タリウム、画像は「Wikipedia」より引用

 今も昔も、  毒物犯罪者が好んで使う、 毒らしい毒な、   タリウム

   歴史的には、  グレアム・ヤング 、  という、  偏執的毒殺犯が使ったとして広く知られています。


■グレアム・ヤングの毒殺日記

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毒殺日記(飛鳥新社)

 グレアム・ヤングは、  1960年代に、 イギリスで、 弱冠14歳にて、 家族の毒殺などで、  ポイズナーとしてのデビューを果たした迷惑な人です。

 収監中は、  ほかの囚人に対して、   実験的に、 毒物を投与しており、   出所後は、  70人近くの人間に、さまざまな毒物らを投与して、 その結果を観察し、 日記に収める、   という、    筋金入りの犯罪者っぷりを発揮。    再度を逮捕され、 最期は、  獄中で、 服毒死したとされています  ( これに関しては、 諸説ある  )。

 そんな、 グレアム・ヤングの日記は、  日本語化され、 本になっています。    それが、どうにも、一部の人間の心を刺激するようで、 それに倣ってか、  タリウムをわざわざ手に入れて、   実母を毒殺しようとした殺人未遂事件があったことや、    名大生が、 同級生に盛っていたなんて事件は、 記憶に、新しいでしょう。

 これほどまでに、  タリウムが使われる理由とは、 なんでしょう? 。     タリウム化合物の性質や働きなどを紐解きながら、見ていきましょう。

     酢酸タリウムは、  ほんのり酢酸臭がする以外は、  おおむね、無味無臭と言われています。      流石に、 毒性が半端ないので、  味見は、 怖くて、 しなかった覚えがあります (笑)。

   「  マイコプラズマ  」  、  という、   細菌の選択培地などにも使われるので、   以前は、  バイオ系の研究室の試薬棚にあったりしましたが、 最近は、 使われなくなったために、  滅多に置いてないようです。

 タリウム、が、  毒物としてのインパクトが強いのは、 古くは、  殺鼠剤として使われていたという経緯があります。    殺鼠剤は、  文字通り、 ネズミを殺す毒ですが、   ネズミは、 鋭い嗅覚を持っており、 有毒なものの味や臭いを見抜く力が強いのです。     故に、  無味無臭の、 酢酸タリウムや、 硫酸タリウム、 が、 好んで使われました。

 ネズミは、  我々な人間と同じ、ほ乳類なので、 ネズミに毒性があるものは、 人間にも、近い毒性を示します。

 また、 現在こそ、 入手が困難な薬物ですが、  「  黄鉄鉱  」 、  などから、  銅や鉄を精錬する際に、  副産物として生じるため、   古くから、 その毒性を利用し、 ネズミ殺しとして活用されていました。


■タリウムの症状

 タリウムの中毒は、  ゆっくり進行するのが、 特徴です。

 多くの場合には、  一過性の悪心、  嘔吐、 などとともに、   神経痛や、 知覚の異常  (  光が乱れて見えたり、 幻覚、幻聴など  )  、が生じます。

    さらに、 多くの、  タリウム 、 が、体内にある場合には、 神経症状が進み、 自律神経などの、意図せずに動いているはずの神経系が、 まともに機能しなくなることで、   血圧の異常な上昇、や、   頻脈、に、   流涎     (   唾液が止まらなくなる    )、    体温の乱高下などが起こります。

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イメージ画像:「Thinkstock」より

 加えて、  代謝によって、  排出が間に合わないほどに、   タリウム 、  が体内にあると、    神経自体が、 死にはじめ、  死ななくても、歩行困難や、 失明、に、  永久的脱毛、  などの、   重い後遺症が残ります。

 昭和の初期には、  タリウムの細胞毒性を逆手にとった、  脱毛クリーム 、  があり、   含有量が、  10 % 、   という、 恐るべき除毛クリームが売られていました。

   タリウム 、は、    皮を経ての吸収性である、   経皮吸収性も高く、   毛根の細胞を速やかに殺すでしょうから、 かなり、   痛みを、 無しに         (    細かい神経も死ぬだろうし   )   、      永久脱毛ができた、 と、   思われます。

   もちろん、  目的以外の所らでの脱毛が起こる、可能性もありますし、 何より、危険すぎるので、 現在は、  タリウム 、  による、   脱毛は、 行われていません。

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イメージ画像:「Thinkstock」より

■カリウムと似たタリウム

 タリウム 、は、  神経細胞が活動するための、    タンパク質から成る、   酵素   コウソ   系に、    特に、 ダメージを与え、 細胞を殺す毒性から、   「細胞毒」と呼ばれるカテゴリーに入ります。

 カリウム 、  とは、    1文字違いなので、   間違えやすい……という訳では無いのですが、  体内での挙動が、  カリウムに近く、「トリカブトと神経毒」の回で説明したように、    神経細胞は、   カリウム 、  と密接な関係にあります。     まぁ、 大半の細胞は、   カリウム、 と、  ナトリウム 、が、  必須なんですが(笑)。

 ゆえに、カリウム、 と、  元素的振る舞いようらが似ている、 タリウムは、 カリウムですよー……、 と、細胞内に入るものの、   カリウムではないので、  細胞の中で、  あれこれと、 悪さをします

 そうして、 細胞が、  じわじわと死んでから、 毒性が出るために、 急性中毒でも、    12   ~   24時間の、  潜伏時間があり、  

   さらに、 解毒剤も、  「   プルシアンブルー  」  、  か、「 カリウム剤  」 、位しかありません。

    医師が、 早めに、  タリウム中毒である、  と、 気がつけば、 そうした治療もできなくはないですが、     タリウム自体に、 際立った症状が少ないために、 見逃されることが、 多い訳です。

    そもそも、  毒を盛る、  という、  事件が、    そんなに頻繁にあっては、 たまりませんので、   普通は、 分からなくて、当然です。

 致死量は、  人間で、    10  ~  20 mg/kg 、 と言われており、

( ○酸の部分を除いたタリウム分量として )、      1 g  程度で、     体中の、 あちこちが壊れて、   ゆっくり死に至る、   という、  極めて、 たちの悪い毒性を発揮します。

 十年に、 一回位のペースで、   タリウム、を、 わざわざ選んで盛る犯罪者が登場するので、       こうした特徴な事らを、 少しでも覚えておいて、 損は、ないかもしれません。