心療眼科医 若倉雅登

 夏に子どもを悩ます目の病気といえば、「流行性角結膜炎(はやり目)」でしょうか。その原因はアデノウイルスの感染です。強い充血が起こり、涙や目やにが出て、目が痛くなったり、熱を帯びたり、腫れぼったくなったりして、数日間悩まされます。

接触感染の予防が基本…家庭内でもこまめな対応を

 対応の基本は、接触感染の予防です。涙や目やにを触った手で、やたらにドアノブなどを触らないことが大事です。患者が使用したタオル、ティッシュなどからも伝染するので、タオルの使いまわしは厳禁です。

 家庭内では、こまめな手洗いや、感染した人の入浴を最後にするなどの対応が求められます。

 一口にアデノウイルスといっても型が50以上あります。はやり目とは別の型のアデノウイルスによる感染症では、結膜炎以外に嘔吐(おうと)や下痢などを起こす「咽頭結膜熱(プール熱)」も、よく知られています。ノロウイルスやロタウイルス感染症によく似た症状のこともあり、特に子どもでは、1週間近くも熱が続くような厄介な事態になる場合もあるのです。

 流行性角結膜炎などのウイルス性結膜炎は、ほかの人への感染の可能性がなくなるまで出席停止とすることが、学校保健法で定められています。1週間以上登校、登園できないケースは少なくありません。

自力回復を待つだけだったが…ポビドンヨード点眼薬に治療効果

 流行性角結膜炎の治療は、これまでは炎症を軽減するために、副腎ステロイドの点眼薬などを用いながら、自力での回復を待つしかありませんでした。

 すると、つい先ごろ、「ポビドンヨード点眼薬が治療に有効である」とする研究成果が、米国眼科学会誌に発表されました。

 ポビドンヨードは、殺菌やウイルスを不活化させる効果があります。この研究では、大人の流行性角結膜炎患者を対象に、「0.6%のポビドンヨード点眼薬を使うグループ」、「0.1%のデキサメサゾン(副腎ステロイド)との合剤点眼薬を使うグループ」、「薬の成分が入っていない偽薬を点眼したグループ」について、症状の経過などを比べました。

 その結果、偽薬を使ったグループと比べて、ポビドンヨード点眼薬を単独で使った場合と、合剤を使った場合の2つのグループは、点眼3日目、6日目のいずれも、症状の改善の程度が明らかに高かったことが分かりました。重い副作用はなかったということです。


子どもからお年寄りまで…多くの患者の救済へ期待

 ポビドンヨードは以前から、10%液が外科用消毒剤、7%液がうがい薬として使用されてきました。

 目の治療では、角膜の専門医の間で、難治性の角膜ウイルス感染症に対し、ポビドンヨード剤を希釈した点眼液を使うことはありました。ただ、目の粘膜への刺激作用もあり、簡単に使えるものではありません。

 いずれにせよ、さらに研究が進み、治療薬として使われるようになれば、子どもからお年寄りまで多くの患者が救われることでしょう。さらなる成果が待ち望まれるニュースでした。

若倉雅登(わかくら まさと)

 井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
 1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。専門は、神経眼科、心療眼科。。