【脳を知る】脚が壊死、重症下肢虚血 脊椎に微弱な電流を流す刺激術が有効

  • 2018/07/15
  • 産経ニュース

「重症下肢(かし)虚血」。脳・神経をテーマにしたこのコラムで、下肢(脚部)の虚血(動脈血の流入が減少あるいは途絶すること)が、脳とどんな関係があるのだろうと思われるでしょうが、実は大ありです。

現在、高齢化や、糖尿病さらには、それに伴う人工透析患者の増加とともに、重症下肢虚血の頻度が高まっています。重症下肢虚血とは、動脈硬化が進行し、脚の血管(末梢(まっしょう)動脈)の血流が低下した結果、脚に安静時の疼痛(うずき)や組織の欠損、潰瘍(かいよう)(ただれて崩れ落ちること)、壊死(えし)などが起こってくる状態で、壊死が進行すると足の切断も余儀なくされます。

しかし、下肢を切断すると生活の質が低下するのみならず、切断範囲が広いと死亡率が高まることが知られており、できるだけ切断しないような治療が必要です。そのためには、下肢の血流を増やす必要があり、詰まりかけた血管をバルーンカテーテル(先端が風船状になった管)やステント(金属製の網状の筒)で広げたり、血流の悪い部分の血流を増やすためにバイパス術を実施したりする治療が血管外科で行われます。ただ、カテーテルが入らないような細い血管を広げるには限界がありますし、また虚血の結果、神経障害性の痛みが出ている場合は血管の治療だけでは改善しません。

そこで、最近注目されているのが脊髄(せきずい)刺激術という方法で、十分な薬物治療や手術で効果がない難治性の疼痛が改善し、虚血のために壊死や潰瘍になりかけた組織に血流が再開して、足の切断が回避されることが期待できます。

この方法は背中から針を刺して脊髄の表面に細い電極を滑り込ませ、臀部(でんぶ)(尻の辺り)の皮下に埋め込んだ小さな刺激装置から微弱な電流を流します。電極線や刺激装置は全て体内に埋め込まれ、外からはわかりません。

電気信号は脊髄を刺激して痛みを抑え、また自律神経に作用して脚の血管を広げて血流を良くします。つまり、脚の痛みや血流をコントロールしている脊髄の神経に働きかけて治療するわけです。この治療法は以前から欧米では盛んに行われていましたが、最近国内でも広まり、複数の学会のガイドラインでも推奨されています。

済生会和歌山病院では、このような下肢虚血の患者さんが血管外科の専門医のもとに県下からたくさん集まってきて治療を受けています。最近、その中でも特に重症な下肢虚血の患者さんに脊髄刺激を行ったところ、下肢の血流が良くなり、難治性潰瘍の治癒(ちゆ)が促進されました。今後、血管外科と脳神経外科が共同で重症下肢虚血の治療にも取り組んでいきます。

(済生会和歌山病院 脳神経外科 部長 小倉光博 氏)