☆      本原稿は、   1994年   11月4日に、
    産経新聞に連載された、
   三石巌氏が書き下ろした文章です。

      ☆  ガンの問題にまで、
    ビタミン  、 が、  からんでくると、
   メガ・ビタミン主義者は、
   わが意を得たり、 と、気をよくする。

    前回は、  細胞の突然変異を、
      油へ溶け出す、   脂溶性 、の、
    『   ビタミン  A    』    、が、 
   もとにもどすって話がでた。

   いつか、   タンパク質から成る、
    『    インターフェロン   』   、や、
     キチン質を構成する、
     『    キトサン    』   、   は、
      NK    (    ナチュラル・キラー    )
    細胞を活性化するって話があったろう。

       ビタミン 、は、    
    体を害   ソコナ  う物らをやっつける、
  NK   細胞       ≒       天然 殺員     細胞    、
     にも、 かかわっているんだ。

     こんどは、    
    NK 細胞を増やす方法じゃなくて、
   こしらえる方法だ。

      といっても、 
   人の手で、できるものじゃない。
   骨髄に作らせる訳なんだがね。

   体ってものが、  いつも、
    合目的的に動くものだって事は、
   さんざん書いてきたつもりだ。
     
      NK 細胞にしたって、
   用も無いのに、 やみくもに、
    作られるはずは、ないだろう。

       ガン細胞や、
    ウイルス感染細胞があったら、
    それをやっつける事を、
    目的で、作られるに、違いあるまい。

  酸素   サンソ 、の薄い高地に移り住んだら、
     赤血球が増えるって事を考えたら、
    わかるだろう。

    こんな風に、
   必要に応じて、 事がおきるのを、
   『  フィードバック   』    、と、
    呼ぶ事になっている。

     冷蔵庫が、 いいサンプルだ。
    温度が上がれば、   スイッチが、
   ちゃんと、入る。 

      フィードバック  って言葉は、
  もともと、 電気工学用語なんだよ。
  
    『    冷蔵庫は、
   フィード・バック・システムによって、
   合目的になっている    』って、
   いわれたら、ピンとくるかな。

  我々の体も、
  フィードバック・システムのおかげで、
  合目的な物になっているって事だよ。

    これには、  ちょっと、
   感心してみても、いいんじゃないかな。
 
      人体が、 どんな絡繰    カラクリ   、で、
   フィードバックができようになっているか。

      この問題をといたのは、
   モノーとジャコブのフランスの頭脳だった。
   
      1961年の事だから、
     古い話じゃないんだな。

   我々の体の運営が、
     DNA       ≒       遺伝情報らを帯びてある、
      遺伝子、の、  本体な、
    デオキシリボ 核酸         、 によって、
    完全に、 にぎられているって事が、
   2人によって、示された。
 
     生命のナゾだと、  昔は、
   よく、 いったもんだ。
    生命は、  物理や化学の法則をこえた、
   別の法則によって、 うごく、
   と、 考える学者が、
    いないでは、なかった。
     二十世紀の科学者は、
   そのナゾをといて、
  これまでの科学の法則が、
   ぴったり、当てはまる事を、
   教えてくれたってことさ。
 これで、 今までの生物学は、
   ほうむられちゃった。
    分子生物学の誕生ってことだ。
    栄養学も、 分子生物学ぬきじゃ、
  学問にゃならんよ。
 
     
   ☆   ガン細胞の卵は、 毎日に生まれている。
   とすれば、
   NK 細胞の出番は、
   無くなる事は、 無いはずだ。

   つまり、   骨髄は、  ひっきりなしに、
  それを作っているってことだな。

    どうやって、 それを作るのか、
    それは、   DNA  、  の指令による。

      DNA   、は、     体の設計図だ、
    といった事があるだろう。
   それを忘れちゃいかん。
   話のすすめようがないじゃないか。

   NK 細胞の設計図は、   ちゃんと、
    DNA   、にある。

     それが、 なかったら、
     NK  細胞なんか、    
  作れないに決まっているだろう。

    DNA   、は、   設計図だといっても、
    家の設計図みたいなものとは、
    全く、  違う。

    暗号なんだ。
   字をつかっている訳じゃないが、
   暗号文みたいなもんだ。
 
      字に当たるものを、  むりやりに、
    字にすれば、    それは、
   『   AUCG   』   、 などの、  四つになる。

   
       暗号文は、   たとえば、
  『  AAAAUGCCC  』 ってなもんだ。

      これを、  『  AAA   』 、  
   『  AUG  』、   『  CCC   』   、  と、
    三つにくぎると、
    一つひとつに、  意味がつく。


     ☆  意味とは、 どういうことか。
   『   AAA   』   、  は、   
    リジン   、   の意味だ。

    『  AUG   』    、  は、    
    硫黄を含む、   含硫   アミノ酸 、 な、
    メチニオン  、

    『  CCC  』   、  は、
    プロリン    、  の意味だ。

     どれも、  アミノ酸の名前さ。

      DNA  、 の暗号文をといてみると、
     アミノ酸の名前が、  ずらりと、
   ならんでいるだけだ。

      DNA  っていうのは、
    遺伝子のことだろう。

     子が、 親の体から受けついだ手紙だ。
    そこに書いてあるものは、
    アミノ酸の名前だけだ。

    ゆかいになるのは、 ボクだけかい?
 
     でも、 アミノ酸ってものが、
   わからなかったら、   何も、 
    びっくりする事は、ないかもしれん。

   アミノ酸は、 タンパク質の成分なんだ。
     タンパク質とは、
    アミノ酸のつながった、 くさりだ。

     だから、   DNA  、の暗号は、
    タンパク質のつくりを示したもの 、
  って、 ことになる。

    ボクは、  このことを思うたびに、
    感動するよ。
    なぜかといえば、
   親から、ゆずりうけたものは、
    タンパク質のつくりであって、
   それ以外の何物でも、  ない、
     という、  事実は、
   余りにも、 あっさりしているからだ。
 
      この事から、 すぐに、わかる事がある。

    それは、 アミノ酸がたりなかったら、
    親の教えが守れないってことだ。

   タンパク質をつくる、  アミノ酸は、
    二十種類が、あるが、
   どれかの、 ひとつが、 なくても、
   設計図の通りのものが、できんのだよ。
 

     ☆      NK    (     ナチュラル・キラー    )
      細胞をつくる話にもどるとしよう。

      NK  細胞の数が、  足りない事は、
    センサーがなくちゃ、  わかるまい。

     それが、  どこにあるかは、 知らんが、
   とにかく、  これを作らにゃ、  あかん。
      そこで、   フィードバックシステムが、
    働き出すんだ。
 
        NK  細胞  、  は、
   タンパク質だけで、 
   できているわけじゃない。

      細胞膜  、は、   リン脂質  、 といって、
    リン酸・脂肪酸・グリセロール 、の、
    三つから、できているんだ。

    どれも、 食い物から、とれるんで、
   わざわざ、 作る事は、 ない。

     だが、  それらを、 くっつけて、
  『   リン脂質   』  、 にしなけりゃならん。

     この仕事は、 だれがやると思う。
    これは、  酵素    コウソ   、 のやる事だ。

    そして、   酵素は、  タンパク質だ。
    
     これが、 キー物質ってことになる。


    酵素のタンパクは、
   設計図によって、つくられるが、
    それには、
   リン酸・脂肪酸・グリセロール 、を、
   いっしょにのみこむ、
    口があいている。

     三つのものらは、  それぞれが、
   ブラウン運動  、をしているが、
    そろって、 その口にのみこまれると、
    酵素   コウソ   、  は、    それらを、
    まとめて、 くっつけちゃう。


     むろん、   それには、
    エネルギーがいるけれど、
    それは、   細胞らの中に、多くある、
    ミトコンドリア  、  から供給される。
 

      この酵素の働きぶりは、
   お見事っていう、 他ない。
   こいつが、ないと、
  どんな生物も、ありえないんだな。

     酵素は、 手品師だよ。   手品だよ。
   手品のレパートリーは、
   五千もあるだろう。
    
     それを、 専門の手品師が、
  さっさと、こなすわけさ。
 
     キミは、  卵に、 タンパクがあるのを、
   知っているだろう。

    それは、 ぜんぶが、  酵素だ。

     黄身は、 手品の道具置き場で、
    白身は、手品師のたまり場だ。

   これまでに、 タンパク不足だの、
   高タンパク食だのって、
   言葉が出てきたのを、
   キミは、 気にしているだろうか。

    ボクの栄養学だと、  これは、
   重大なポイントなんだよ。
 
    高タンパク食  、 とは、
   タンパク不足のない食事の意味で、
   良質タンパクを 、  毎日に、
    体重の、  『   千分の一   』  、  だけ、
   とることを、 さすことになっている。
 

      良質タンパクの代表は、   鶏卵だ。

     ボクは、 いま、菅平高原にいる。
    そこのペンションでは、
    三食に、 卵を二つずつ、
    つけてもらっている。

     良質タンパクの量は、
    四十    グラム  、 ほどだ。

   ボクは、  体重は、 63  キロ  、 だから、
   あと、  23  グラムで、 いいわけだ。

      肉や魚なら、   2百   グラム   位でも、
    まにあうが、    
    不足は、  自分で作った、
    『   配合  タンパク   』   、  で、
    つじつまを合わせる事にしている。

     鶏卵   オンリー   、  ならば、
    9個で、  いいわけだが、

    これでは、  カロリーが、  すごく、
   オーバーになる。
    これは、 問題なんだな。
 
     この高タンパク食ならば、
   親の設計図どおりに生きられるはずだ。

      NK  細胞の不足もない。