不況やギャンブル離れなどのあおりを受けて全国の地方競馬が廃止されるなか、
兵庫県尼崎市の園田競馬場も苦戦を続けている。
昨年9月から関西初のナイターを導入。
ご当地アイドルユニットを結成し、盛り上げてきたが、
売り上げを劇的に伸ばすには至っていない。
今年はそのナイターも不調で、園田競馬では引退したスタージョッキーを
広報に起用するなど、さまざまな巻き返し策を検討するが、
ファン離れの状況は深刻で、黒字転換に向けた馬場は「やや重」だ。
運営する兵庫県競馬組合によると、園田競馬場の売り上げは
平成3年度の約935億6300万円をピークに下降し、
近年は不況やレジャーの多様化などで低迷。
職員や賞金の大幅削減などの経営改善策で18年から黒字を確保していたが、
22年度に約5億5千万円の赤字に転落。
この年から県による競馬事業存続の見極め期間(5年間程度)が始まり、
早急の経営立て直し策の打ち出しが迫られた。
そのなかで同組合が売り上げアップの切り札として着目したのがナイター開催だった。
地方競馬全国協会によると、ナイターは昭和61年、大井(東京都品川区)で
初めて開催され、門別(北海道日高町)、ばんえい(北海道帯広市)、
川崎(川崎市)、高知(高知市)で行われている。
平成21年7月に国内で初めて通年ナイターを始めた高知では、
導入前の20年度に約39億円だった売り上げが22年度に約1・5倍の約60億円と、
インターネット投票を中心に増えた。
若者やファミリー層など新しい客を呼び込むなどしたことが大きかった。
こうした他地域の実績を参考に、同組合は照明など新たな設備投資に
約8億8千万円をかけて整備。
昨年9月7日から11日9日までの金曜日に「そのだ金曜ナイター」の開催に踏み切った。
ナイターの人気は上々で、一昨年の同時期の平日と比べると、
1日平均入場者数は36%増の4421人、売り上げは10%増の6303万円。
場外や在宅で購入できる馬券も含めた総売り上げは18%増の1億6216万円となった。
今年度は4月5日から11月8日までの初めての通年開催。
広報キャラクターに尼崎の非公式キャラクターの「ちっちゃいおっさん」を採用し、
ご当地アイドルユニット「SKNフラッシュ8」を結成。
ナイター開催日に来場してファンとの予想会などを開くなどし、盛り上げた。
ところが、今年度の9~11月の1日平均入場者数は3141人と昨年同期に比べ
29%も減少。
売り上げも16%減の5285万円。
総売り上げは辛うじて14%増の1億8553万円だった。
同組合は「通常開催日に行っている重賞競走をナイター開催日に実施するなどして
注目度を上げていきたい」とするが、
ナイターの神通力にもかげりが見えていことは疑いない。
そんな中で期待されているのが、11月7日に35年にわたる騎手生活を引退し、
園田競馬の広報に転身した三野(みの)孝徳さん(52)だ。
現役時は長年、県騎手会長を務め、勝負服の太もも部分に企業名の広告を
取り入れるなど、積極的に園田競馬のPRに取り組んできた。
ステッキを置き、今度は背広姿になって
「これまでの騎手の立場では限界があった園田競馬のPRに努めたい」
と話す。
三野さんは騎手のメディア露出の少なさを課題に掲げ、
「園田競馬にも若いイケメンの騎手がいる。
ファンが『あの子を見に行こう』と競馬場に足を運んでくれるようにしたい」
と、後輩たちの売り込み役も買って出る。
普段ファンが立ち入ることができない場所で見せる騎手の素顔をフェイスブックなどで発信。
「かつては、騎手が相撲のタニマチのような『だんなさん』気質の馬主に
騎乗の機会を与えてもらい、育ててもらう伝統もあったが、
今は勝てる確率の高い実力のある騎手を優先するようになってきた。
騎手たちの顔を露出させることでスポンサーとの橋渡し役もしたい」
と話す。
さらに
「ファンとのパイプ役も果たしたい」とも。
競馬の開催がない日にファンに競馬場を見学してもらい、
騎手と交流する「バックヤードツアー」や、競馬場内の飲食売店などの協力を得て
チケットで各店を食べ歩きできる「バルイベント」の実施、
さらにはプロ野球の球場のように競馬場内への企業広告の掲出などを検討。
自ら外回りをして広告を誘致するなど、騎手時代から温めていた
アイデアを実現していきたいという。
同組合は
「その人脈で岩田康誠、小牧太騎手といった園田出身の
JRA(日本中央競馬会)騎手らに協力してもらえるイベントの実施や、
外回り営業での広報活動に期待している」
と話す。
中央競馬に比べ、依然として厳しい運営が続く地方競馬。
生き残りをかけ、今まで以上にファンサービスが求められる時代となり、
アイデア勝負にかける園田競馬の挑戦は業界でも注目されそうだ。
【産経新聞】